第81話「甥っ子と、ちょっと先の未来」
翔平との久しぶりの会話。
兄・涼也の変化を感じながら、それぞれの家族のカタチが、ゆっくりと重なっていく——そんな静かで温かい夜。
涼也と結衣の家に、翔平がふらりと立ち寄ったある晩。
テーブルには お茶とお菓子が並び、くつろいだ空気の中、自然と会話が始まった。
結衣がふと思い出したように問いかける。
「翔平くん、結婚してるって言ってたよね?」
翔平は頷きながら笑った。
「うん。もう5年目になるかな。子どももいてさ、毎日が戦場だよ。笑」
驚いたように目を丸くする結衣。
「えっ、子どもいるの? 何歳?」
「4歳。男の子でさ。とにかく元気すぎて、こっちの体力が追いつかない。
でも嫁さんがしっかりしてるから、なんとか回ってるって感じ」
その言葉に、涼也が何気なく加わる。
「……だから、俺、今度の週末 預かろうかって言ったんだよ」
翔平が思わず「え?」と顔を上げる。
結衣も驚いたように問い返す。
「預かるって……甥っ子くんのこと?」
涼也は頷き、少し照れくさそうに言った。
「うん。たまには奥さんにも休んでもらった方がいいだろ。
お前ら夫婦、休みの日もほとんど子育てに追われてるじゃん。
俺らは、まだ新婚で時間に余裕あるし、結衣ちゃんも一緒なら安心だしさ」
翔平は、しばらく ぽかんと涼也を見つめていたが、やがて苦笑まじりに言った。
「……マジで? いや、それ助かるけど、結構大変だぞ?」
すると、結衣が柔らかく微笑みながら言った。
「ううん、むしろ楽しみ♪ 甥っ子くんに会ってみたいし!」
涼也も目を細めながらうなずく。
「俺、最近動画見てるだけで癒されてるからさ。
本人来たら癒し通り越して、多分ずっと笑ってると思うわ」
翔平は、そんな兄の変化にしみじみと呟いた。
「涼兄、なんか大人になったな〜って思う。
甥っ子預かるって聞いたとき、マジで感動したわ。
昔なら『俺にできるわけない』って即断られてたと思う。笑」
涼也は少し照れながらも、まっすぐな声で応えた。
「……それは否定できん。笑
でもさ、なんか最近思うんだよな。
結衣ちゃんとの子どもができたら、こんな感じかなって。
甥っ子見てると、つい想像しちゃうんだよ」
翔平は目を細めて、ゆっくりと頷いた。
「……うわ、マジで変わったな涼兄。
でも、それ……めっちゃいいじゃん。いいパパになるよ、絶対」
そのやりとりを聞いていた結衣が、ぽつりとこぼす。
「……子どもできたら、涼ちゃんに似たらいいのにな」
すると涼也がすぐに言い返す。
「結衣ちゃんに似た方が絶対かわいいよな。
男の子でもきっと、かっこよくて優しい子になると思う」
翔平は少し大げさにため息をつきながら、笑い交じりに言った。
「……はいはい、新婚さん ごちそうさまでした〜」
そんな何気ない会話が続く中、二人の間に流れる穏やかな空気が、少しずつ“家族”という言葉を形にしていくようだった。
お忙しい中、今日も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!