第80話「支え合いのカタチ」
静かな夜、二人きりの時間の中で、涼也がふと口にした言葉。それは兄としての覚悟と、パートナーへの感謝から生まれた決意でした。
細やかな会話の中に込められた「支えたい」「支えられている」の気持ちが、ゆっくりと交差していきます。
夕飯を食べ終え、洗い物も片付いた後の静かな夜。
ソファに並んで座る二人の間に、心地よい余白のような沈黙が流れていた。
その空気を破ったのは、涼也のふとした一言だった。
「……俺さ、翔平に言ってみようと思ってる」
「え?」
隣でスマホをいじっていた結衣が、顔を上げる。
「何を?」
「ちゃんと向き合えって。家族とさ」
涼也は天井を見上げながら、少し考えるように言った。
「この前ちょっと話したとき、翔平が家庭のことで悩んでるって言っててさ。
こっちは、まだ新婚みたいなもんだし、偉そうなこと言える立場じゃないなって思ってたけど……」
そこまで言って、少し黙る。
そして、ぽつりと続けた。
「……でも、今日思ったんだよ。
俺、自分が誰かに“支えられてた”ってことに、ようやく気づいたんだ。
それって結衣ちゃんのことなんだよな。
日々の中で何気なく受け取ってた優しさとか、言葉とか、気がついたら すっかり甘えてたなって……」
結衣は静かに目を細め、黙って聞いていた。
「だから、今度は俺も返していきたい。
ちゃんと“ありがとう”って言葉にするだけじゃなくて、
行動でも、気持ちでも、結衣ちゃんに“支え返してる”って思ってもらえるように……
そういうの、やっていきたいなって思った」
そう言い終えた涼也は、どこか照れくさそうに笑った。
結衣は、しばらく黙っていたが、やがてゆっくりと口を開く。
「……私の方“が”、涼ちゃんに支えてもらってるけどね」
「え?」
「ほんとだよ。
涼ちゃんがいてくれるだけで、安心できるし。
何でもない日が、ちゃんと大事な時間になる」
涼也は、少しだけ目を細めた。
「そっか……じゃあ、お互い様だね」
「ううん。私の方がちょっと多い」
そう言って、結衣は くすっと笑った後、少し照れたように続けた。
「でも……今の言葉だけで、私には十分すぎるくらい伝わってきたよ。
そうやってちゃんと気づいて、言葉にしてくれるのって……ほんとに嬉しい。
……やっぱり、私の方が支えてもらってばっかりだなって思った」
「……じゃあ、これからもたくさん言うわ」
「うん、私も聞き飽きたって思われても しつこく言うね」
「結衣ちゃんが相手だと聞き飽きないよ」
照れくさいような、でも確かな笑顔が二人の間に広がる。
静かな夜の部屋に、言葉にならない想いがそっと流れていた。
お忙しい中、今日も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!




