表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第14章 チューリップ ── 真実の愛、改めて好きになる気持ち
79/108

第79話「守りたい、細やかな日常」

ピンコロ地蔵を訪ねる小さな旅から戻った二人。

あの日感じたこと、心に残ったこと──

それは、便利さよりも、人の優しさだったかもしれない。

そして結衣は、昔の記憶をふと思い出す。

日常の尊さに気づく、小さな会話をお届けします。

帰り道の車内で、結衣がぽつりとつぶやいた。


「今日は、いい時間だったね。……涼ちゃんと一緒だったから、そう思えたのかも」


「うん。スマホが使えなくて焦ったけど、なんか……よかったよな」

涼也はハンドルを握ったまま、少しだけ結衣の方を見て笑う。

「俺も、結衣ちゃんがいたから……安心できたのかも」


信号待ちで車を止めながら、窓の外に広がる夕暮れのオレンジ色の町並みを見つめる。


「ねえ……昔、福岡に遊びに行ったときのことなんだけど」


「うん?」


「ちょうど豪雨にぶつかってね。博多駅の地下がちょっと浸水してたの」


「えっ、それ大丈夫だったの?」


「うん、私たちは無事だったよ。でも、そのとき思ったんだよね。あれって全国ニュースでは、ほとんどやってなかったんじゃないかなって。ローカルでは、たくさん報道されてたけど……」


涼也は少し驚いたようにハンドルに手を添えたまま言った。


「そうなんだ……そういう大事なことこそ、もっと伝わっていいのにな」


「うん。実際にそこにいた人たちには大ごとだったはずなのにね。

テレビでは芸能人の不倫とか、誰かの謝罪会見とかばっかりで……」


「ほんとだよな。なんか、おかしいよな。

“この世界をどう守るか”ってことより、“誰が誰といた”の方が目立っちゃうって……」


「そういうときこそ、本当に大事なのって、ああいう情報じゃない?」


「うん。“今 何が起きてるか”とか、“どうすれば自分や誰かを守れるか”とか……」


結衣は静かに頷き、そっと涼也の手に自分の手を重ねた。


「だからね。今日みたいな日を過ごして、改めて思ったよ。

こうして無事に帰ってこれる日常って、すごく有難いことなんだなって」


「うん、俺も思った。

なにかあっても、こうして一緒に話せるなら、それだけで強くなれる気がする」


車が家の近くの角を曲がり、いつもの道へと入っていく。


大きな出来事なんてなくても、

二人が「大事」と思えるものは、いつだって日常の中にあった。

お忙しい中、今日も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ