表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第13章 セントポーリア ── 小さな愛、信頼、穏やかな日常
78/108

第78話「百聞は一見にしかず」

結衣の「百聞は一見にしかず」の一言から始まった、ピンコロ地蔵を訪ねる小さな旅。

ところが予想外の通信障害が発生して、スマホの地図も使えず大混乱……!?

それでも道ゆく人のあたたかさにふれ、心がほどけていく二人。

今回は、便利さから少しだけ離れて見つけた“特別な時間”を描きます。

結衣がにっこり笑いながら言った。


「ねえ、ピンコロ地蔵って実際に行ってみたいな。やっぱり百聞は一見にしかずって言うし!」


涼也も笑顔で頷く。


「そうだな。調べるだけじゃなくて、自分の目で確かめるのが一番だよな」


そう決めた二人は、ある週末にピンコロ地蔵がある町へ出かけた。

ところが、車を降りてスマホを取り出すと……画面が真っ白に。


「え? 電波が全然入らない?」


どうやら その日は、偶然にも大規模な通信障害が起きていたらしい。


「GPSは動いてるけど、肝心の地図データが読み込めない……」

涼也は眉をひそめ、画面を見つめた。


「スマホが使えないなんて、まるで昔にタイムスリップしたみたいだな」

苦笑いを浮かべるその顔には、少しだけ楽しさも混じっていた。


仕方なく、二人は手持ちの小さな地図と、現地の看板、そして 人に道を尋ねながら歩き始めた。

「あの建物の角を曲がったらいいって」と、近所のおばあさんが優しく教えてくれる。

「こっちの細い道を抜けると、睡蓮が浮かぶ静かな池が見られるよ」と通りかかった子どもも笑顔で話しかけた。


迷いながらも、道中の風景や人の温かさに触れ、二人は自然と会話が増えた。


「通信障害のおかげで、いつもと違う時間が過ごせてる気がするね」と結衣が言う。


涼也も「スマホに頼りすぎてたんだなって気づかされたよ」としみじみ。


やがて、二人は小さな祠の前にたどり着いた。

そこには「ピンコロ地蔵」が静かに佇んでいた。


結衣は、そっと手を合わせてから満足そうに言った。


「やっぱり、百聞は一見にしかずだね」


そして、スマホをカメラモードに切り替えてパシャリ。


「ふふ……機内モードでも写真は撮れるからよかった。笑」


ふと、結衣が空を見上げて呟く。


「でも、こういうときに地震とかあったら、きっとすごく大変なんだろうな……連絡も取れないし、帰宅もできないし……」


涼也は少し表情を引き締めた。


「確かに。電波がないって、思った以上に心細いもんな」


「地震とか天災がない日って、本当は それだけで幸せなことなのにね。

わかってるつもりでも、つい忘れちゃって……でも、忘れた頃にくるんだよね、そういうのって」


二人の間に、静かな風が吹き抜ける。


言葉は多くなかったけれど、その時間が心にじんわり染みていくのを、二人とも感じていた。


涼也が優しい目で結衣を見つめ、微笑む。


電波がなくても、繋がっていたのは心と心だった。

お忙しい中、今日も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ