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再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第13章 セントポーリア ── 小さな愛、信頼、穏やかな日常
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第76話「おしどり夫婦になれたら」

日常の中にそっとある、小さな幸せや願いごと。

特別な言葉でなくても、ふとした瞬間に交わされる想いが、二人の絆を深めていく。


今回は、そんな二人の“おしどり夫婦”になりたいという願いと、日々の細やかなやりとりを描きました。


どうか読んでくださる皆さんの心にも、あたたかい灯りがともりますように。

旅行で鳥取を訪れた涼也と結衣。

駅前の広場を歩いていると、大きなアーチが目に入った。


「……わ、見て。“おしどりアーチ”だって」

結衣が嬉しそうに指を差す。


「ほんとだ。これ、二羽の鳥がくっついてアーチになってるんだね」

涼也も足を止め、見上げる。


「“おしどり夫婦”の“おしどり”かな。……なんかいいね」

結衣は静かに微笑んだ。


二人はアーチの下に立ち、スマホで記念写真を撮った。

ちょうどそのとき、上の鐘が優しく鳴り始める。


「……ちょうど鳴ったね。願い事、叶いそう」

結衣がふと空を見上げながらつぶやく。


「どんな願いを?」

涼也が横顔を見つめて尋ねる。


「内緒」

結衣は少し照れたように笑った。


「俺はね、結衣ちゃんと“仲良く、ずっと一緒にいられますように”」


「同じ…隠した意味なかったね」

結衣は照れくさそうに笑った。

すると涼也が、愛おしそうにそっと結衣の頭を撫でた。



あの日から数日後。宇都宮を旅していた涼也と結衣は、ふと見つけた案内板を頼りに「おしどり塚」へと足を運んだ。


「この前“おしどりアーチ”行って、今度は“おしどり塚”…なんか凄くない?」

涼也が看板を指さして笑った。


「うん。『おしどり塚』って名前も、なんだか“仲良く一緒にいるイメージ”でいいよね」

結衣は穏やかに笑った。


二人は立て札のことは気にせず、ただ“ずっと一緒”を思いながら手をつなぎ、穏やかな気持ちで塚の周りを歩いた。


「ねえ、“おしどり夫婦”って、いいよね。……私たちも、そうなれたらいいな」

結衣がぽつりとつぶやく。


「そうだね」

涼也も静かにその言葉を受け止めた。


結衣は少し照れて笑い、涼也もその笑顔に胸があたたかくなった。



後日。カフェでの午後。

結衣と里奈が向かい合って座り、おしゃべりに花を咲かせていた。


「この前、“おしどりアーチ”と“おしどり塚”に行ってね。なんか私、“おしどり夫婦になれたらいいな”って言っちゃって……」

結衣がストローをいじりながら話す。


「ちょ、何それ、かわいすぎるでしょ」

里奈が笑いながら身を乗り出す。


「いや、なんか自然と出ちゃって……ちょっと恥ずかしかったんだけど」

結衣は苦笑いを浮かべた。


「いやいや、なに言ってんの。結衣ちゃんたち、もう“おしどり夫婦”でしょ。今さら何目指すのよ」

里奈は笑いながら言った。


「えっ、そう見える?」


「そりゃ見えるよ。雰囲気からしてもう完成してるもん。……いいなあ、そういうの」


結衣は照れながらカップをゆっくり手に取り、口元に近づけた。



同じ頃。涼也と大悟は仕事帰りに近所の居酒屋で軽く一杯飲んでいた。


「……この前、結衣ちゃんに“おしどり夫婦になれたらいいな”って言われたんすよ」

涼也がグラスを置きながら話す。


「は? なにそれ、今さら?」

大悟が吹き出す。


「いや、なんか……急に言われて、ちょっと意外でした。そんなん意識してたんだ、って」


「意識もなにも、お前ら もう十分“おしどり”だろーが。見りゃ誰だってそう思うって」


「……マジっすか?」


「マジマジ。お前らって、最初から変わんねぇじゃん。安心感あるっていうか、なんかもう“落ち着いてる感”がさ。あれ最強だよ」


「……そう言ってもらえるの、嬉しいっすね。なんか」


「素直でよろしい。自覚しろよ、旦那」


「……そうっすね。これからも見ててください、兄貴」



「なれたらいいな」って願った日。

そのときには、もう「なっていた」二人。

そんなことに気づいたのは——

何気ない会話の中に、そっと灯っていた。



それからしばらく経って、ファミレスのテーブルに、結衣・涼也・里奈・大悟の四人が並んで座った。


「この前、涼ちゃんとクイズ番組見てたら、“おしどり夫婦”の意味知ったの(笑)」

結衣が笑いながら話す。


「へぇ、どんな意味?」

里奈が興味津々に聞く。


「本当のオシドリはね、毎年相手を変えることもあるんだって。でも、“ずっと仲良く一緒にいる”イメージで“おしどり夫婦”って言うようになったんだよ」

結衣がにっこり説明する。


「私、結衣ちゃんに“おしどり夫婦”って言っちゃった……」

里奈が申し訳なさそうに言う。


「俺も悪気なく涼也に言ってたわ……すまん」

大悟も笑いながら告白する。


結衣と涼也は、顔を見合わせ微笑みあった。

「いやいや、二人とも良い意味で言ってくれたんでしょ! 俺も結衣ちゃんも喜んでるから!」


「そうそう! 元々の意味は違っても、きっと願いが込められてるんだなと思ったら、そっちの方を信じればいいかなって(笑)」

結衣が満面の笑みで言う。


「そうだね、相手は変えないけどね(笑)」

涼也がそう言うと、四人の笑い声がファミレスのテーブルを包むように、ふんわりと広がった。

お忙しい中、今日も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!

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