表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第13章 セントポーリア ── 小さな愛、信頼、穏やかな日常
75/108

第75話「その言葉が欲しかった」

大悟のちょっと不器用な気持ちと、結衣と里奈の絶妙な距離感。

言葉にするって、案外難しい。でも、言ってもらえたら嬉しい——

そんな照れくさくも温かい日常が、三人のやりとりの中に詰まっています。

カフェでの楽しい時間を終えて、帰り道を歩く結衣と里奈。

駅までの少しの距離、沈む夕日が歩道をオレンジ色に染めていた。


ふと、里奈がぽつりと呟く。


「ねえ……私も、大ちゃんにさ、『その分、里奈と一緒にいたいし』って言われたいな」


結衣は、くすっと笑って答える。


「言ってもらえばいいじゃん?」


「うーん、でも自然に出てくる言葉じゃないと照れくさいし、なんか、言わせたみたいになっちゃうのが嫌でさ」


そう言った後、里奈は ちょっとだけ頬をふくらませて笑う。


(大ちゃんって不器用だからなぁ……)


「……姉と妹がいるんだけど、真ん中って何かと空気読みがちでさ。だから余計に自然さって大事にしたくなるんだよね」


「えっ、里奈ちゃん三姉妹なの?」


「うん。私は自由人担当の“次女”です(笑)」


結衣もつられて笑った。

「里奈ちゃんは、私にめちゃくちゃ優しいよ!」


里奈が笑顔で答えた。

「ありがとう! 結衣ちゃんに優しくできてるならよかった〜」



夜、同棲中の部屋。

テレビの音が小さく流れる中、大悟はソファでスマホをいじっていた。

その画面に、結衣からのメッセージが届く。


【結衣】

「誰にも言わないでね……里奈ちゃんが『大ちゃんに“その分、里奈と一緒にいたいし”って言ってほしいな』って言ってたよ」


大悟は思わず吹き出しそうになる。


(言えるかよ、そんなの……恥ずかしすぎるし。てか、里奈かわいすぎだろ……

涼也なら普通に言いそうだけど、俺が言うと違和感ありすぎ)


スマホを見つめながら少し躊躇していると、さらに通知が鳴る。


【結衣】

「は? 私は里奈ちゃんの味方だから!」


(うわ、考えてるのバレてる……)


大悟は「え? お兄ちゃん悲しい(泣)」と冗談めかして返すが、既読がついたまま返信は来なかった。


(……既読スルーかよ)



しばらくして、リビングで映画が一区切りついた頃――

里奈がふと口を開いた。


「そういえば、大ちゃん来週会社の飲み会って言ってたよね?」


大悟はテレビのリモコンを置きながら答える。


「あー。あれ行かない」


「いつも行くのに珍しいじゃん」


少し間を置いて、そっけなく――けれど、どこか照れくさそうに。


「その分、里奈と一緒にいたいし」


その言葉に、里奈は思わず顔を上げた。

ほんの少し目を見開いて驚いたようだったけど、すぐに嬉しそうな柔らかな笑顔がじんわりと広がった。


「……嬉しい! その言葉、自然に言われたかったの!」


大悟は照れ隠しのように咳払いをして、ごまかすようにテレビに視線を戻す。


(……なんか、結衣に負けた気がする)


でも、その表情は どこか満足げだった。

お忙しい中、今日も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ