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再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第13章 セントポーリア ── 小さな愛、信頼、穏やかな日常
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第73話「海風に乗って歩く」

結婚式の幸せな余韻を胸に、二人はニューカレドニアの自然と文化に包まれた旅へと歩み出す。青い海、鮮やかな緑、心を揺らす風――そんな景色の中で、二人の絆は また一つ深まっていく。

朝日が差し込むコテージの窓。

結衣がそっとカーテンを開けると、空と海がひと続きになったような、やわらかなミルキーブルーのラグーンが広がっていた。


「涼ちゃん、今日は どこに行こうか?」


ベッドに座ったまま、涼也が広げた地図を覗きこむ。


「まずはヌメアの市場に行ってみよう。地元の新鮮な食材とか、手作りの工芸品がいろいろあるんだって」


手をつないで外に出ると、街の空気には ほんのり潮の香り。

市場の通りには、色とりどりの屋台が並び、活気があふれていた。

カヌーを模したペンダントや、貝殻のアクセサリーが風に揺れてきらめいている。


「これ、里奈ちゃんに似合いそうだね」

結衣は小さなペンダントを手に取り、ふふっと笑った。


一方で、涼也は「ポワソン・クリュ」を手に取る。

マグロの切り身をココナッツミルクとライムでマリネした、冷たい郷土料理。

包みを開けた瞬間、爽やかな香りがふわりと立ちのぼった。


「いただきます」


二人で一口ずつ頬張ると、結衣の目がぱっと見開く。


「新鮮で、すごくさっぱりしてる……!」


午後は、「ピッシンヌ・ナチュレル」と呼ばれる天然プールへ。

イル・デ・パンにあるその場所は、驚くほど澄んだ海水の入り江で、まるで水の中の楽園。


涼也がゆっくりと水面から顔を上げ、シュノーケルを外して笑った。


「こんなに美しい海は初めてだよ」


結衣も笑顔でうなずきながら、水の中で手を伸ばす。


「ずっとこの景色を二人で見ていられたらいいね」


夕方には、地元の畜産農家が開くバーベキューイベントへ。

炭火の香りが漂うなか、鶏肉や地元で獲れたシカのグリルがじっくり焼かれている。


「この赤ワイン煮込み風のシカ肉、レストランでも出るかもね」

そう言った涼也の言葉に、結衣が「楽しみ!」と目を輝かせた。


夜は、カナック文化とポリネシア文化が交差するショーへ。

カナックの火の舞や太鼓の演奏、そして タヒチアンダンスが繰り広げられる。

身体の奥に響くリズムに、言葉を忘れるほど引き込まれていく。


「文化って、心をつなぐんだね」

結衣がぽつりとつぶやいたその声も、どこか遠くの太鼓の音と混ざっていくようだった。


最後は、海辺のレストランでカカオのデザートを味わう。

甘さとほろ苦さが、旅の終わりに優しく染み込んでいく。


「このカカオ、ニューカレドニア産なんだって。地元の人たちにとって、大切な味なんだ」

そう言って微笑む涼也の顔が、キャンドルの灯りにやさしく照らされていた。


食事の後、二人は砂浜をゆっくり歩く。

南十字星が瞬く星空の下、波の音だけが静かに響いている。


涼也がそっと結衣の手を握りしめた。


「おじいちゃんおばあちゃんになっても、結衣ちゃんとこうやって一緒に過ごせる時間を大切に生きていきたい」


結衣は、そっと微笑んで、涼也の手をきゅっと握り返す。


未来のことも、明日のことも――

今この瞬間が、全てをやさしく照らしていた。

お忙しい中、今日も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!

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