第63話「ポケカラから始まった恋」
二人が選んだ“特別な日”は、偶然じゃなくて、ちゃんと意味があった──
伏線回収しながら、結婚に向けたあたたかい話になっています。
翔平が笑いながら紙袋をテーブルに置いた。中には、いくつかのボールペンと、色とりどりの付箋が詰め込まれている。
「とりあえず婚姻届、下書きだけでもしておく?」
そんな言葉と一緒に、提出用とコピー用の用紙が広げられる。
「涼兄たち、籍入れる日どうするの?」
ふと、翔平が問いかけた。
「最初は11月22日とか、“いい夫婦の日”もいいなと思ったんだけど……」
結衣はボールペンをくるくると回しながら、小さく笑う。
「でも、語呂合わせだけって、なんかちょっと違うなって思って」
「うん。“二人らしい日”にしたいよね」
涼也も頷いて、結衣の方をやさしく見つめる。
「じゃあ、初めて会った日とかは?」
翔平が提案するように首をかしげた。
「……実はね」
結衣がふっと笑って、どこか懐かしそうな口調になる。
「涼ちゃんと出会う“きっかけ”になった日があるの。
あのとき、Xで偶然あーちん感謝さんのプロフィールを見たら、ポケカラのリンクが貼られてて、何気なく開いたら“あーーさん”の歌が流れてきたの。
まさかその歌が、涼ちゃんに繋がっていくなんて、思ってもなかったよ。
返事が来たのは多分、別の日だったと思うけど……
でも、私があの歌を聴いて、心が動いたのは“あの日”だったから。
だから、その日が“きっかけの日”だと思ってる」
翔平が目を丸くする。
「え、すご…そんな偶然ある?」
「ほんとだよな。その日がなかったら、俺たち出会ってなかったかもしれない」
涼也は結衣の手をそっと取って、やわらかく笑った。
翔平が思わずぽんっと膝を叩く。
「それ、運命ってやつだわ。それにしなよ、入籍日。
“ポケカラから始まった恋”って最高じゃん」
「ねえ、涼ちゃん。覚えてる? あの曲、再生回数7回しかなかったんだよ?」
結衣は頬を赤らめながら笑う。
「その中の一人が私だったなんて、今でも信じられない」
「ラッキーセブン…いい数字だな。そのとき、ポケカラ登録してなかったんじゃなかったっけ?」
涼也がふと思い出したように首をかしげる。
「うん、そうそう。だから私の分、カウントされてなかったんだと思う」
結衣が笑うと、翔平も思わず吹き出した。
「じゃあ実質8回以上ってこと!? すご、運命すぎでしょ」
「実質って便利な言葉だな……」
涼也が少し肩をすくめて笑い、3人の間にやさしい空気が流れる。
夕日が窓の外から差し込み、柔らかなオレンジ色が部屋を満たしていた。
再生回数「7回」の歌が、二人の運命を変えた──そんな奇跡のような一日を、籍を入れる日に選ぶのも悪くない。
お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!




