第62話「次は、打ち上げ花火」
初夏の風に誘われて、涼也と結衣は並んで歩いていた。
父の日の出来事から少しだけ時間が経ち、二人の間には、前よりも確かで穏やかな空気が流れていた。
夕方、二人はスーパーからの帰り道を歩いていた。
日が長くなり、空は まだほんのりと明るさを残している。涼也は買い物袋を持ち替えたりしながら歩き、結衣は隣で歩きながら空を見上げた。
「最近、日が長くなってきたね」
結衣の言葉に、涼也が少し微笑みながら答える。
「うん。朝の撮影、もう暑くて大変だったよ」
「今日は何作ったの?」
結衣が楽しそうに尋ねると、涼也は少し誇らしげに答える。
「冷やしおでん。夏仕様にしてみた」
「え、食べたい…!」
結衣が目を輝かせる。涼也の料理は、いつも間違いなく美味しい。想像しただけで、わくわくしてしまう。
「今度、作ってよ」
結衣が嬉しそうに言うと、涼也は軽く笑いながら頷いた。
「もちろん。結衣ちゃんのためなら、どんなメニューでも」
結衣は思わず笑みがこぼれて、涼也を見ながら言った。
「涼ちゃんが作ってくれるなら、どんなメニューでも美味しいだろうな」
涼也は軽く肩をすくめ、笑顔を見せる。
「それなら、どんどん食べてね! 野菜もいっぱい入れちゃおっかな」
二人は少し歩きながら、穏やかな時間を過ごした。その後、結衣がふと思い出したように口を開いた。
「…そういえば、誕生日の花火、楽しかったな」
結衣が楽しそうに目を細める。
「あのヘビ花火、想像以上だったよね」
涼也が一瞬驚いたように目を向け、笑って答える。
「いや、ほんと、あんな暴れるとは思わなかった。俺、ちょっと後ずさってたし」
結衣がくすっと笑いながら、涼也を見た。
「でも、あれもすごく楽しかった。今度は、もっと大きな花火を見たいな」
涼也は少し考え込むように空を見上げ、そして言った。
「…あれも良かったけどさ、今年は一緒に打ち上げ花火、見に行こうよ」
結衣がその言葉に驚き、そして嬉しそうに顔を輝かせた。
「行きたい! 打ち上げ花火、絶対見たい!」
涼也は微笑んで、少し照れたように言った。
「〇〇川沿いで8月に花火大会があるんだって、知り合いのカメラマンが言ってた。すごく綺麗らしいよ」
結衣は すぐに考え込んで、ふと浴衣のことを思い出す。
「浴衣、着ようかな…」
涼也がその言葉に反応し、顔を優しく照らすように微笑んだ。
「うん。絶対似合うよ」
結衣が少し照れくさくなり、ふと手を伸ばして小指を差し出す。
「じゃあ、約束ね」
涼也は その小さな手を見て、しばらく迷った後、優しく指を絡めた。
「約束。楽しみにしてる」
結衣は頬を赤らめつつも、嬉しそうに頷きながら歩き続けた。心の中で、その約束がどんどん大きくなっていくのを感じていた。
涼ちゃんと見る、夏の花火。
手をつなぐだけで胸が高鳴った、あの夜よりも
もっと大きな景色を、一緒に見られる気がした。
約束って、こんなに嬉しいんだ。
それが“涼ちゃんとの”約束なら、なおさら――
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