第60話「想われる幸せ」
結衣と里奈が初めて出会い、ほのぼのとした温かな時間が流れる。
誰かの口から語られる自分の話は、思っていた以上にくすぐったくて、嬉しいもの。
そんなあたたかいひとときを描いたエピソードです。
数日後の休日。午後の柔らかな陽射しがカーテン越しに差し込み、涼也の部屋を優しく包んでいた。穏やかな空気の中、チャイムの音が響く。
「来たな」
ソファから立ち上がった涼也が玄関を開けると、にこやかな笑みを浮かべた大悟が立っていた。
「こんにちは。今日は前もって連絡した通り、里奈を連れてきたよ」
「大悟さん、どうぞ。遠慮なく入ってください」
涼也が声をかけると、大悟は軽く頷いて中に入る。続いて現れたのは、明るい笑顔の里奈だった。やわらかく揺れる髪と、はにかむようなその表情に、結衣も自然と笑顔を返す。
「はじめまして、結衣です。兄から里奈ちゃんのこと、よく聞いてました」
「私も、涼兄から結衣ちゃんのことをたくさん聞いてました。いつも“可愛い”って褒めてて、ちょっと惚気すぎじゃない?って思ってたくらい」
明るくそう言う里奈に、涼也は苦笑しながら視線を逸らす。
「俺、そんなこと言ってたかな……?」
「言ってるよ!」
大悟と里奈が声を揃えてツッコむ。
思わず結衣も笑ってしまう。
その笑顔は、どこか嬉しさに満ちていて、まるで心の奥に灯がともったかのようだった。
「知らないところで、そんなふうに私のこと話してくれてたなんて……すごく嬉しいよ、涼ちゃん」
そう言って、結衣は そっと涼也の手を握った。
その手は、ほんのり温かくて、ほっとする感触だった。
涼也も恥ずかしそうに笑いながら、彼女の手をやさしく握り返した。
「大事に思ってるんだ。これからもよろしくな」
その一言に、結衣の目がふっと潤む。言葉にされると、改めて胸にじんわりと沁みてくる。照れながらも真っ直ぐに想いを伝えてくれる彼が、やっぱり好きだと改めて感じた。
そんな二人の様子を見て、大悟と里奈も自然と微笑みを交わす。
心地よい静けさの中、少しずつ距離が縮まっていく四人。新たな関係の始まりに、部屋の空気がやさしく包まれていた。
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