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再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第1章 芝桜 ── 小さな一歩、密やかな好意
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第6話「直接お礼が言いたくて」

結衣は、涼也とついに対面するチャンスが訪れる。二人の関係に、どんな変化が起きるのか…?

「SNSで見たんだけど、この人、今うちの会社とコラボしてるんだよね?」


ランチタイムの休憩室でスマホを覗き込みながら、結衣は隣の席の同僚に声をかけた。


「ああ、広報の子が言ってたかも。なになに、ファン?」


「……うん、ちょっとだけ」

ほんの少しだけ、のつもりだったのに。


気がつけば、毎日のように彼の投稿をチェックするようになっていた。

彼――涼也が作る料理、言葉の選び方、たまに見せる笑いのセンス。

どれも心地よくて、目が離せなくなっていた。


「広報の子に話してあげるよ、会いたいって」


「えっ、いいの!? いや、でも……私なんかが……」


「何それ、全然いいって。会っておいでよ」


その背中を押すような言葉に、結衣は思わず笑ってしまった。



展示スペースの一角で、結衣は少し緊張しながら待っていた。

試食用に並べられた小さなカップと、整えられたテーブル。

その向こうに立つ男性が、ふとこちらに気づいたように目を上げた。


「こんにちは……。あの、私……少し前にXでコメントさせてもらってて……」


その瞬間、涼也の表情がパッと明るくなった。


「えっ、もしかして、“癒された”って言ってくれた方ですか?」


「……はいっ」


少し恥ずかしそうにうなずく結衣に、涼也は穏やかに笑って言った。


「あのとき、あの歌を教えてくれたじゃないですか。

“癒された”って言葉がすごく印象に残ってて……それ、僕にも伝わった気がして、嬉しかったんです。

自分が歌ってるわけじゃないのに、不思議ですよね。でも、なんか…あったかくて」


その言葉に、結衣の胸がじんわりと温かくなった。


(……本当に、この人に出会えてよかった)



その日の帰り道、結衣はスマホを開いた。

涼也のアカウントを表示すると、ふと目に留まったのは――フォロー欄にある、自分の名前。


(……えっ)


思わず息をのむ。


《フォローされました:涼也》


通知欄に、たしかに表示されていた。


(……なんで、私だってわかったんだろう)


思い返せば、あのとき彼の目がふっとやわらかくなった気がした。


「癒されたって言ってくれた方ですか?」


まるで当然のようにそう言ってくれたあの笑顔。


名乗らなくても気づいてもらえるなんて──運命?


ひとりごとのように、ぽつりとつぶやいた。


今は――

憧れていた人のフォロー欄に、自分の名前がある。

それだけで今日はきっと、いい夢が見られそう。

お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!

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