第57話「新たな出会い」
これまで結衣と涼也の関係を見守ってきた大悟。
でも、彼にもようやく――心が動き始める瞬間が訪れます。
戸惑いながらも、少しずつ動き出す大悟の物語。
どうぞ、彼の一歩を見届けてください。
大悟は、結衣と涼也の関係を見守りながらも、少し複雑な気持ちを抱えていた。
「恋愛に興味がないわけじゃない。
ただ、結衣が結婚するまでは誰とも付き合わないって決めてたんだ。
結衣が幸せになったから、そろそろ自分の番かな…
でも、何から始めればいいんだ?」
そう思いながら、カフェでコーヒーを飲んでいたとき──
ふと、向かいの席の女の子と目が合う。
「めちゃくちゃ可愛い…。でも、話しかける勇気なんてないな…
どうせ彼氏か旦那いるだろうし…」
視線をそらしたものの、内心では まだ動揺が残っていた。
──
視線をそらしてから数分。
気づけば あの子の姿は、もう席には なかった。
席を立ったのか……誰かを待ってたのかもしれないな。
そう思った直後、店の入り口から聞き慣れた声が─
「あ! 大悟さん!」
声の方を振り返ると、涼也が女の子と一緒に楽しそうに歩いてきていた。
「紹介します。俺のいとこの里奈です」
目の前の女の子は──さっき目が合った、あの子だった。
「お名前聞いてピンときました! あなたが大悟さんなんですね! 涼兄の“自慢のお兄ちゃん”って聞いてたので」
「は、はじめまして…!」
里奈は、にこっと笑って言う。
「実は…さっき目が合ったときからカッコイイなって思ってました。まさか涼兄の大切な人だったなんて」
「えっ…ホントに?」
大悟は驚きつつ、すぐに思い出す。
「えっ…勘違いじゃなかったんだ…。めちゃくちゃ可愛いと思って見とれちゃいました…あ、言っちゃった…」
「え…嬉しい。ありがとうございます」
照れたように微笑む里奈に、大悟は ますます動揺した。
「いや、本当にタイプで…心の声、漏れまくってたな…」
そんなやりとりを、涼也は少し離れた場所でニヤニヤしながら見ていた。
──
3人でカフェを出て、しばらく歩いた先の人通りの少ない場所で、里奈がふと立ち止まる。
「大悟さんって…独身ですよね? その…彼女もいませんよね?」
「えっ!? う、うん…(なんで聞いた!?)」
「よかった。じゃあ、チャンスあるかも」
「えっ!?」
「私…大悟さんのこと好きかもしれません」
大悟は目を丸くした。
「えっ、えぇ!? 俺と? まだ会って間もないのに?」
「はい。私、見る目あるんで、間違いないはず!」
「……すごいな。俺、ちょっとついていけてないかも…」
「お返事は、また今度聞かせてください。でも、とりあえず──」
彼女は、まっすぐな目で言う。
「私とデートしてください」
「…えっ、デート? 俺と?」
「私が相手じゃ…嫌ですか?」
子犬みたいにうるんだ瞳で見つめられ、大悟は思わず本音をこぼす。
「嫌なわけ…むしろ、喜んで行きたいくらいだけど…あ…また言っちゃった…」
「じゃあ、決まりですね」
そう言って、里奈はスマホを差し出す。
「LINE、交換してください」
「え…うん……(え、えぇ……まじか…)」
──
「これで連絡とれますね。デートの日程、また相談しましょう」
「うん、了解…(本当に現実なんだよな…)」
──
その様子を、少し離れたところで涼也が優しく見守っていた。
「大悟さん、ついに運命の人に出会ったんですね」
顔を真っ赤にした大悟は、照れ隠しにツッコむ。
「うっせえ」
──
頭の中では、里奈の言葉が何度もリフレインしていた。
「デート…俺、どうすればいいんだ?」
新しい一歩が、静かに、でも確かに、大悟の心に刻まれていた。
第27話「缶コーヒーと占いと」で、大悟が『占いなんて信じない』と言っていたことがありました。
あの言葉が、今日の出会いで少しずつ変わっていくかもしれません。
人の心って、やっぱりおもしろいですね。
お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!




