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再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第9章 カスミソウ ── 幸せの余白、未来へ
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第54話「オルゴールの音色」

全ての積み重ねが、今カタチになる。始まるのは、新たな日々。

結衣と涼也は、静かな丘の上に佇むオルゴール館に到着した。

アンティーク調の建物に一歩足を踏み入れると、柔らかな木の香りと微かに響く音色が二人を包み込んだ。


「ここ、すごく素敵……! 落ち着くね」

結衣は目を輝かせ、小さなオルゴールにそっと耳を寄せる。


「うん。俺も好きな場所なんだ。オルゴールの音色って、心にしみるよね」


展示コーナーを歩きながら、自然と二人は手を繋いでいた。

ふと、結衣が看板を見つけて足を止める。


「ねえ、私たちもオルゴール作れるんだって。すごくない?」

「ほんとだ。一緒に作るなんて楽しそうだね。どんなメロディーにしようか?」


結衣は少し考えて──ふと、ポケカラで初めて聴いたあの歌を思い出す。

「あの曲、覚えてる? ポケカラで聴いた、最初の歌」


涼也は目を細めて頷いた。

「もちろん。あれが結衣ちゃんと初めて繋がったきっかけだったよね」


「うん……たまたま開いたリンクで、再生回数は たった7回だったのに、すごく心に残って」


「覚えててくれて嬉しいよ。あれ、俺にとっても特別な曲なんだ」


結衣は照れくさそうに顔を赤らめ、涼也の手をぎゅっと握り直す。

「私ね、あの曲をオルゴールにして、ずっと思い出に残したいなって思ったの。涼ちゃんと一緒に」


涼也は優しく微笑んだ。

「じゃあ、決まりだね」


二人は制作体験コーナーへ向かい、木の温もりを感じる台座を選んだ。

ネジを巻き、小さな音の粒を少しずつ重ねていく。


作業に戸惑う結衣の手に、そっと涼也の手が添えられた。

音色が形になっていくたびに、二人の思い出も一つずつ重なっていく。


「……できた」


結衣がそっとネジを巻くと、オルゴールから静かにメロディーが流れ出した。

あの日、スマホ越しに聴いたあの声と重なるように。


「再生回数、今度は“二人で何回でも”だね」

結衣が微笑むと、涼也は ふっと笑いながら彼女の肩に寄り添った。


「うん。一生分、聴こう」

「素敵な思い出が、また一つ増えたね」


結衣は涼也を見上げながら、そっと言った。

「うん。これからも、ずっと一緒に思い出を作っていこうね」


二人は手を繋いでオルゴール館を後にした。

その夜、小さな音色が二人の心を優しく響かせ続けた。

お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!

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