表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第9章 カスミソウ ── 幸せの余白、未来へ
53/108

第53話「“好き”が止まらない」

信じる気持ちが二人を導く。改めて向き合う、心と心。

実家での挨拶を終えた帰り道。夜風が心地よく吹く中、結衣がぽつりとつぶやいた。


「なんか、ちょっと緊張しすぎて肩凝ったかも」


すぐに涼也が気遣う。


「肩揉もうか? 頑張ってくれたお礼だよ」


「ふふ、じゃあ遠慮なく。ご褒美だと思って受け取っとくね」


そう笑う結衣に、涼也も嬉しそうに返す。


「ほんとに? じゃあ今度ちゃんとやるね、俺の全力マッサージ」


「ありがとう。楽しみにしてるね」


歩きながら、涼也は改めて結衣のことを褒めた。


「それより、すごく自然だったよ? 家族とも ちゃんと打ち解けてたし、うちの母なんて めちゃくちゃ嬉しそうだった」


「そうだったら嬉しいな……ほんと、涼ちゃんの家族ってあったかいね」


結衣は、少しだけ本音を漏らす。


「私もね、“お姑さん”って聞くと、ちょっと怖いイメージしかなかったから、正直不安だった。でも、涼ちゃんのお母さん、すごく優しかった」


涼也は笑いながら答える。


「結衣ちゃんがよく優しいって言ってくれるけど、俺が優しいとしたら それは多分、母さん譲りだな」


「納得〜。でも、私にだけ特別に優しいなら、それが一番うれしいな」


ふと立ち止まり、涼也は結衣をじっと見つめた。


「……そっか。じゃあ、これからも結衣ちゃんにだけは特別に優しくする」


頬をほんのり赤く染めながらも、結衣は照れ隠しのように笑ってみせた。その笑顔は、どこか くすぐったくて、でも確かに嬉しそうで。


「ちゃんと覚えててよ? 今の、絶対だからね」


立ち止まった涼也は、少し照れたように、それでも真剣な目で見つめて言った。


「結衣ちゃんが俺の前でずっと笑ってくれてたら、それが一番幸せだよ」


「気づいたら、ずっと笑顔でいられるんだよね。……涼ちゃんがいると」


結衣がそっと微笑むと、涼也もふっと笑みをこぼした。


「俺も結衣ちゃんといると、気づいたら笑ってる」


少し照れたように言葉を続ける。


「無意識に笑顔でいられる関係って……よく考えたら、すごいことだよね」


二人の間に流れる沈黙は、心地よくて あたたかかった。言葉がなくても、通じ合える何かがそこにあった。


「……結衣ちゃんが笑っていられるなら、それだけで十分。俺の前では、これからもずっと、心から笑っててほしいな」


「……涼ちゃんって、発言までイケメン過ぎるよ。もっともっと好きになっちゃうじゃん」


結衣の言葉に、涼也は優しく微笑む。


「じゃあ、もっと好きになってもらえるように、これからもいっぱい甘やかすね。俺のことだけ、見てて?」


「……私も、涼ちゃんのことだけ見てるよ。よそ見は禁止だからね?」


「うん、了解。これからも、いっぱい振り回して?」


「えっ……振り回してるつもりはないんだけど?」


「ナチュラルに小悪魔なんだよね、結衣ちゃんって」


「……なんかそれ、ほめてる? 悪口?」


「ううん。結衣ちゃんになら、振り回されたいって思えるから。不安もワガママも、涙も、全部ぶつけていいんだよ」


「……もう、イケメン過ぎ。ずるいよ、涼ちゃん」


そうして二人は、そっと手を繋ぎ直し、ぬくもりを確かめ合うように夜の道を歩き続けた。

街灯に照らされた影が、ぴたりと寄り添って伸びていく。

お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ