第5話「癒されたのは、こっちの方かも」
心に響く言葉に、また一歩踏み出した結衣。そっと送った返信が、二人の距離を縮めていく――。
結衣は、スマホの画面を見つめたまま、心のどこかがふわっとあたたかくなっていた。
──涼也さんからの返信。
「正直あの歌、何回か聴いちゃいました」
「あれ、もしかして僕の方が癒されてたのかもですw」
(……なんで、こっちが照れてるの……)
聴いたのは、私の方なのに。
声に癒されたのは、間違いなく、私の方なのに。
でも、なんだろう──この、じんわり嬉しい気持ちは。
スマホの画面には、涼也さんの投稿。
料理写真に混じって、さりげなく載せられた日常の一言や、たまにあるちょっとしたボヤき。
どこか自然で、親しみがあって、いつの間にか目が止まってしまう。
──なんでこの人、こんなふうに言葉を選べるんだろう。
素直に伝えてくれた言葉。
変に飾ったり、距離を置いたりしないやりとり。
たった一言のリプライが、こんなにも心に残るなんて。
(もう一回、読み返しちゃおうかな……)
画面をスクロールしながら、結衣の頬がまたぽっと熱くなる。
「癒されてたのかも」──その「かも」が、やさしい。
断言しないからこそ、まっすぐに伝わってくるものがある。
(私も、言ってみようかな……)
ほんの少しだけ、勇気を出して、返信を書いてみる。
「そんなふうに言っていただけて嬉しいです。
でも……やっぱり、あの声に癒されてたのは、私の方でした。」
送信した後、結衣は そっと深呼吸をした。
画面の向こうの誰かと、少しずつ言葉を交わせること。
それがこんなにも嬉しいなんて──思ってもみなかった。
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