第47話「一緒に探そう」
関係が新たなカタチへと進化するとき。
二人は、その未来を自分たちの手で選べるか――。
窓から差し込む春の光に包まれながら、結衣は静かにソファに座っていた。
退職してから数週間。心と体は少しずつ落ち着いてきた。
でも、ふとした瞬間に、胸の奥から波のように不安が押し寄せてくる。
「これから、私…どうしようかな…」
好きなことは ある。でも、それを仕事にできるかは わからない。
何かしなきゃ、と思うたびに、空回りしてしまう。
そのとき、玄関のチャイムが鳴った。
扉を開けると、涼也が穏やかな笑顔で立っていた。
「お邪魔します」
「うん、どうぞ」
二人で並んで座り、何気ない話をしながら過ごす時間。
けれど結衣の表情は、どこか曇っていた。
「ねぇ、涼ちゃん…私、最近すごく迷ってるんだ」
「うん?」
「少しずつ元気には なってきたけど…何をすればいいのか、わかんないの。
何かしたい、って気持ちは あるのに、足が前に進まなくて…」
涼也は結衣の手をそっと握った。
その手の温かさに、結衣の目が揺れる。
「無理に答えを出さなくていいよ。ゆっくりでいい。
結衣ちゃんが立ち止まること、怖がらなくていいんだ」
「でも…私がこんなに迷ってばかりじゃ、涼ちゃんに申し訳なくて…」
「申し訳なくなんかないよ。むしろ、そんな結衣ちゃんの隣にいたいって、心から思ってる」
涼也はポケットに手を入れ、小さな箱を取り出した。
その瞬間、結衣の息が止まる。
「結衣ちゃん」
真剣なまなざしで、まっすぐに彼女を見つめて続ける。
「答えなんて、焦って出すものじゃないよ。
ゆっくりでいい。
結衣ちゃんがどんな選択をしても、俺は、変わらずそばにいるから」
箱の中には、シンプルだけど温かみのあるリング。
涼也の気持ちが、そのまま形になったようだった。
「俺と結婚してください」
涙があふれるのを止められなかった。
「…嬉しい。涼ちゃんがそう言ってくれて…本当に、ありがとう。
私なんかでいいの?って思ったけど、そんな不安な気持ち以上に、涼ちゃんに出会ってから初めて結婚したいって思えたから。
こちらこそ、よろしくお願いします」
二人の未来は、まだ真っ白なキャンバス。
でも、もう一人じゃない。
一緒に描いていけると、そう思えたから。
お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!