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再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第8章 ヒマワリ ── あなたを見つめてる
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第43話「結衣の強さ」

未来を共に歩むための覚悟。決意が、確かなカタチとなる。

「X見たよ。……涼ちゃん、何も悪くないのに」


スマホを握りしめたまま、結衣は悔しそうに小さく唇を噛んだ。


最近、涼也の名前が少しずつSNSで知られるようになってきた。料理研究家としてのコラボや活動が注目される一方で、それに対する“アンチ”の存在もちらほら見かけるようになっていた。


《なんか女々しくて無理》《また彼女の影響じゃないの?》《中身スカスカの量産型》


(……は?)


結衣の胸の中に、ふつふつと怒りが湧き上がっていく。


(涼ちゃんは、誰よりも一生懸命で、優しくて、不器用なくらい真っ直ぐな人なのに。どうして、こんな言い方されなきゃいけないの……?)


涼也は、何も言わずに黙っている。でも、それが余計に苦しかった。


そして、結衣は無意識にスマホの裏アカウントを開いた。


アカウント名は、《同じこと思ったw》。


──彼女だとはバレない。でも、彼にだけは きっと伝わる名前。


怒りとともに、スマホを握る手が ほんの少し震えた。


(……許せない)


その指が止まることなく、画面に言葉を打ち込んでいく。


『そんなクソリプを送るあなたの方が、よっぽど女々しいですよ』


送信を押した瞬間、画面が少しだけスッキリして見えた。


***


夜。スマホが鳴った。


「……結衣ちゃん?」


電話越しに少し照れたような、でも嬉しそうな声が聞こえた。


「バレた?」


「ふふ……“同じこと思ったw”って、絶対結衣ちゃんでしょ。俺にしか分からない名前で笑っちゃった」


「うん……ごめんね、裏垢で勝手に。なんかもう悔しくて……気づいたら送ってた」


「すごく嬉しかった」


結衣は、少しだけ照れてスマホを握り直す。


「理不尽なこと言われてる涼ちゃん見たら、黙ってられなかったの。……涼ちゃんのこと、大好きだから」


「……ありがとう。結衣ちゃんがそうやって怒ってくれるの、ほんとに救われるよ」


電話越しでも伝わってくる、涼也の穏やかな笑み。


「結衣ちゃんって、見た目は か弱そうなのに……ほんとは、すごく強いよね」


「え……そ、そうかな?」


「うん。俺、そんな結衣ちゃんが、めちゃくちゃ好きだよ」


結衣は、耳まで熱くなりながらも、小さく「ありがとう」と答えた。


そして、心の中でそっとつぶやく。


(私は、涼ちゃんを守りたい。どんなときでも)


***


不器用な二人の恋は、SNSの雑音にさえ負けない強さを、少しずつ育てていた。

お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!

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