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再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第7章 ハナミズキ ── 永続する愛の証
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第41話「君の隣にいる誰か」

遠距離になってから、ふとした瞬間に生まれる小さな不安。

知らない名前、楽しそうな声、そして電話越しの笑い声に、揺れる涼也の気持ち――。

言葉にならないモヤモヤが、彼の心を静かに包みます。

「ごめん、今ランチに向かってて……あ、鈴木さん、こっちの階段の方が早いですよー!」

スマホの向こうから聞こえてくる結衣の明るい声。

それに応じるように、男性の低い笑い声が混じった。


(……鈴木って誰だよ)


スマホを握る涼也の胸に、モヤモヤとした黒い感情がじわじわ広がっていく。


***


結衣ちゃんが転勤してから しばらく経つ。

遠距離の生活にも、なんとなく慣れてきた……はずだった。


けれど今日、ふとした会話の中で、彼女がよく一緒にいる同僚――鈴木という男性の存在を口にしたとき。

そのときの結衣ちゃんの声が、あまりにも楽しげだったから。

涼也の心には、不安という名の小さなトゲが刺さった。


「また……一緒にいるの?」


その問いに、電話の向こうの結衣は一瞬、沈黙した。


「うん、仕事の合間にランチしてただけ。部署が同じで、一緒に動くことも多いから」


「……そっか」


どうしても、すぐに納得する気持ちになれなかった。

自分でもわかってる。信じなきゃいけないのに。

でも、胸の奥に芽生えた小さな嫉妬が、簡単には消えてくれなかった。


***


週末。

涼也は思い切って結衣の街を訪れた。


少し気まずい空気を抱えたまま、待ち合わせ場所で結衣ちゃんと合流する。

けれど、結衣ちゃんは変わらない笑顔で「涼ちゃん!」と手を振ってくれて、その姿に思わず胸がぎゅっとなる。


カフェで向かい合いながらも涼也の表情は、どこか曇っていた。


「……ごめん。俺さ、今日駅で偶然見かけたんだ。結衣ちゃんが男の人と話してるの」


「え……」


「電話のときも一緒にいたし、なんか……ずっと隣にいるみたいで」


涼也は目を伏せながら、ぽつりと続けた。


「正直、ちょっと……嫉妬した」


その言葉に、結衣の目が優しく細められる。


「……その、鈴木さんって人、どんな人なの?」


涼也は目を伏せたまま、ゆっくり続けた。


「信じなきゃって思うんだけど、声がすごく楽しそうだったから……勝手に不安になってさ」

お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!

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