第4話「初めての返信」
初めて交わした一言に、心がふわりとほどける。ほんの小さなやりとりが、二人を繋げていく――。
「僕も結衣さんと同じこと思いましたw」
「う●こレベルの歌声(あえて伏せ字)って自分で書いてあるけど、どう考えても違うでしょw」
……ちょっと笑ってしまった。
そして、少しだけ、ほっとした。
こんなやりとりができるなんて、思ってもみなかった。
あの歌声が、この人に繋げてくれたみたいで──
今はただ、嬉しい。
勇気を出して送った初めてのリプライ。キセキのような初めての返信。
声が繋いでくれたこの縁を、結衣は そっと大切にしたいと思った。
結衣の頬が、またじんわり熱くなる。
「笑ってくれたんだ……」
あの自己紹介文──
【う●こレベルの歌声(あえて伏せ字)なのに、聴いてくれてありがとう】──に対する、優しいツッコミ。
まさか返事がもらえるなんて思ってなかったのに、
こんなふうに“笑い”で繋がれるなんて。
(うそ……嬉しい……)
フォロワー20万人超えのインフルエンサー。
鋭くて面白くて、遠い存在だと思っていた。
でも今、画面の向こうのその人が、自分と同じことで笑ってくれた。
たった一言のやりとりだけど、
ほんの少し、近づけた気がした。
──そう、これは始まりなのかもしれない。
何も知らない相手。でも、確かに惹かれている。
それだけで今日は、少しだけいい日になる気がする。
お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!