第28話「行き先は、まだ未定。」
初めての旅行計画。
二人の未来に広がる、あたたかな期待と少しのドキドキ。
そんな瞬間が、結衣の心をふんわりと包み込み、少しずつ近づいていく。
「旅行、どこ行きたいとかある?」
涼ちゃんからのメッセージを見て、結衣の心は ふわっと温かくなった。
付き合い始めてから初詣、そして日常は ゆっくりと過ぎていく。
そんな中、二人で立てる“初めての旅行計画”が、小さなドキドキになっていた。
──3月に旅行。
まだ少し先だけど、こうして未来の予定を立てるのが嬉しくてたまらない。
結衣は少し考えてから返信する。
〈実は、行き先に悩んでる…どこか涼ちゃんが行きたい所とかある?〉
すぐに通知が返ってきた。
〈結衣ちゃんが行きたい所に行きたい!〉
〈涼ちゃんが行きたい所も一緒に行こうね。次会えるときに、いろいろ候補考えよ〉
すると、またすぐに返事が届いた。
〈うん!でも……お泊まりは無しでいい?〉
その言葉に、少しだけ胸の奥がチクリとした。
本当は、もっと一緒にいたいと思っていた。
けれど、画面越しに伝わってくる涼ちゃんの“結衣ちゃんを大事にしたい”という気持ちが、きゅっと胸を温かくする。
〈うん、もちろん!涼ちゃんがそう言ってくれるの、嬉しいよ〉
〈ありがとう。次は泊まりでもいいって自信持てたら、そのときは俺から言うから〉
〈楽しみにしてるね〉
返信を送った後、結衣は ふとスマホを見つめながら、心の中で小さくため息をついた。
本当は、もっと近づきたい気持ちがある。
けれど、こうして少しずつ歩幅を合わせてくれる彼の優しさが心地よかった。
「……よし」
少し早いけれど、準備を進めなきゃ。
旅行の日だけじゃなくて、バレンタインも、いろんな“初めて”を重ねていけるように。
【*二人で計画を立てて、二人で思い出を作っていく。
そんな当たり前が、どうしようもなく幸せだと思った。*】
お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!