第27話「缶コーヒーと占いと」
信じる・信じないは、人それぞれ。
だけど、不意に誰かの言葉や行動が、心のどこかを揺らすこともある。
今日の会話は、そんなきっかけの一つかもしれません。
とある休日の午後。
人気の少ない公園のベンチに、大悟と涼也が並んで腰を下ろす。
缶コーヒーを2本、手に持った大悟が、無造作に一本を差し出した。
「ほらよ、缶コーヒー。飲むだろ?」
「あ、あざっす…って、さすが大悟さん。自分、基本あんまり缶コーヒー飲まないんすけど、たまにこういうのもアリですね」
「俺は朝これがないと始まんない。ま、ルーティンってやつ?」
「それで言うなら、自分は料理かもっすね。キッチンに立つと落ち着くんすよ」
「だよな。…正直、一回食べてみてぇんだよな、涼也の手料理」
「え、マジっすか。そんな言ってもらえるなら、いつでも作りますけど」
少し意地悪そうに笑って、大悟が言う。
「いや、でも結衣に止められそうだな。“ダメ!涼ちゃんの手料理は、私がひとりじめするんだから!”…とか言いそうじゃね?笑」
ちょっと照れながら、涼也がぽつりと漏らす。
「…かわいい。言われたいっす、それ」
「いや、反応おかしいだろ。笑」
しばらく笑い合った後、ふと話題が変わる。
「そういや、今日の朝テレビでやってたわ。星座占い」
「あ、自分も結衣ちゃんと見てましたよ。結構いい結果だったんで、ちょっと信じたくなりました」
「へぇ〜、またそうやって仲良しアピールしてんのか?相変わらずラブラブだな。俺は そもそも、そういうの信じねぇタイプだからな」
「そうなんすか?」
「ああ。人間の運命が誕生日で決まるとか、なんか信じきれなくてさ。…ま、言い切っちまうと可愛げないけどな」
その言葉は、
ある人との出会いで──ゆっくりと変わっていくことになる。
木漏れ日の下、二人は缶コーヒーをひとくち。
似ていないようで、なぜか気の合う二人。
その静けさも、なんとなく心地よかった。
お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!