第26話「正反対、なのにしっくり」
テレビから流れてきた占い番組をきっかけに、二人の“似ているようで違うところ”がちょっとずつ浮かび上がってきます。
占いなんて信じ過ぎなくていいけど…でも、ちょっとだけ信じてみたくなる夜。
※ 作中に占いや性格診断の描写がありますが、占いや診断は物語を楽しむための要素です。特定の性格や考え方を決めつけるものではありませんので、どうぞ気軽にお読みください。
休日の朝、涼也の部屋。
BGM代わりにつけていたテレビから、占い番組が流れてきた。
「次は〜、牡牛座!」
「おっ、結衣ちゃん!」
涼也が声をかけると、結衣も画面に目を向けた。
「恋愛運◎!『五感を満たすものが幸運を呼ぶ』だって」
「なんか、すっごく結衣ちゃんっぽいね」
「っぽいかな?でも、たしかに食べるの大好きだし…旅行先も、ほぼゴハンで決めてるかも」
「やっぱり牡牛座だわ」
二人で笑い合う。
「次、蠍座!」
「おっ、俺だ」
画面に表示された言葉に、涼也が目を止める。
『恋愛運◎ 本心を分かち合うことで距離が縮まる』
「……これも、ちょっと当たってるかも」
「涼ちゃんって、言葉の裏とか、そういうのちゃんと見てるよね」
「うん。表面より、中身が気になるっていうか」
結衣が ふと、自分のスマホを手に取った。
「ねぇ、これ見て」
相性占いのページを開いて、涼也に見せる。
「『牡牛座と蠍座は“正反対だけど深く繋がれる関係”』って書いてある!」
「ほんとだ。あ、“離れられない相性”って書いてある」
「うわー、やっぱり嬉しいね。ちょっと照れるけど」
「でもさ、一途なとこは おそろいでしょ?」
「うん。それは絶対に同じ」
涼也は、結衣をまっすぐ見つめながら言った。
「ほら、ここにも“牡牛座は じっくり考えるタイプ”ってあるよ」
「それは大当たり。私、すごく迷うもん」
「俺も決めるまでは時間かかるけど、決めたら迷わないタイプかも。…たぶん、それが蠍座なんだな」
「似てるところもあるし、違うところもあって、ちょうどいいんだよね」
「うん。似てると安心するし、違うと新鮮で楽しい」
涼也もスマホを手に取り、何かを調べながら少しニヤリと笑った。
「…占いアプリで調べてみたけどさ、やっぱ牡牛座と蠍座の相性、抜群だって」
結衣が少し驚いて涼也を見つめると、彼はさらにニヤニヤと笑みを深めた。
「結婚も、◎って書いてあるよ」
「え、マジで?」
「うん、マジで。前に見たアプリでも、同じように書いてあったし」
結衣は目を大きく見開いて、涼也を見つめた。
「じゃあ、信じてみようかな」
涼也は、少しだけ真面目な顔で結衣の手を握った。
「俺は、ずっと信じてるけどね」
お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!