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再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第1章 芝桜 ── 小さな一歩、密やかな好意
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第2話「つい聴き入っちゃいました」

偶然耳にした歌声に癒された昼休み。思わず感想を投稿した結衣の一言が、物語を動かし始める――。

結衣は、スマホを持つ手をそっと伏せた。

昼休みの最後の数分、なんとなく再生した“あの歌”が、まだ耳の奥に残っている。


いかにもカラオケアプリらしい画面で、字幕が歌詞として流れていた。


画面に映っていたのは、ステージに立つ数匹の動物たち。

どう見ても「いらすとや」で揃えたような、ゆるいタッチのキャラクターたちだった。

けれど、その中央──マイクの前に立つサングラス姿の柴犬だけは、明らかに異彩を放っていた。


ツヤのある毛並み、やけにリアルな陰影、そして胸に「人は人、自分は自分」と書かれたTシャツ。顔は笑っているのに、なぜか“ガチ感”がにじんでいる。


(なにこれ……ふざけてるの?)

再生回数は、たったの「7」。

でも──歌い出した瞬間、結衣の胸の奥がふわっとほどけた。


プロフィールには、こんな一言が添えられていた。


フォローやアイテムありがとうございます❣️

う●こレベルの歌声(あえて伏せ字)なのに、【貴重な時間を割いて聴いて下さった✨心優しい方々✨ありがとうございました(お辞儀)】

※ポケカラでは返信しないことにしてるので、コメント不要です<(_ _)>


「う●こレベルの歌声(あえて伏せ字)なのに」って、自己評価低過ぎ。

いやいや、そんな歌声じゃないし……

それどころか、もっと聴いていたいと思ったのに。


結衣は、軽く息をついた。

あんなふうに誰かの心にふっと入り込める声。

自分には、きっと出せない。


──あれ、これって。


投稿していたの、さっきの人?

「ただの食いしん坊」ってプロフィールに書いてあったあの人。

トンカツの写真がやたら美味しそうで、株の投稿はちょっとクセがあって、でも どこかユーモアがある。

その人のプロフに貼ってあったリンクを、なんとなく押してしまっただけ。


ポケカラは使ったことがない。

アカウントも登録してないし、再生数には反映されてないはず。


でも、一回だけ聴いたこと──伝えたくなった。


結衣は、そっとXの投稿欄を開いた。


「私事ですが…昨日偶然“あーちん感謝”さんのアカウントにたどり着いて、

プロフィールのリンクからポケカラを聴いて、つい癒されてしまいましたw

(未登録なので再生回数には反映されてませんが…)」


「以前からお名前をよくお見かけしていて、

密かに気になっていたので…思い切って涼也さんにリプを送ってみました!

いつも素敵な投稿をありがとうございます。」


結衣は、文字数がオーバーしてしまったため、リプを二つに分けて送信した。

削りたくない思いをそのまま届けたくて、ツリーで繋げることにした。

「……送信っと」


スマホを伏せた後、結衣は軽く背筋を伸ばして席に戻った。

午後の空気が、さっきよりも少し和らいで感じられた。

お忙しい中、読んでいただきありがとうございました!

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