第101話「これからも、家族で」
麻衣が生まれてから5年。
律は7歳、麻衣も5歳になり、しっかりとした口調や表情に子どもらしい成長がにじむ。
今日は久しぶりに、家族4人でピクニック。日常の中にある幸せを、誰よりも感じていたのは――。
春の陽射しが心地よい休日の朝。
結衣たちは、大きなレジャーシートとお弁当を持って、公園の芝生広場にやってきた。
どこで覚えたのか、「いごっそう」と「はちきん」を、2人は何度も飽きずに繰り返していた。
意味なんて多分わかっていないくせに、律と麻衣は得意げに言い合っては笑っている。
ピンクの帽子を被った麻衣は、結衣のそばでピョンピョンとはねる。
律がリュックから おもちゃを取り出しながら言う。
「今日はシャボン玉、100個以上飛ばすって決めたんだ!」
「それ、数えるの大変そう」と涼也が笑いながらも、ちゃんと準備を手伝っている。
桜の木の下にシートを広げると、子どもたちは「わー!」と歓声を上げて走り出した。
律が木の幹に登ろうとし、麻衣が「おにい、危ないよー」と叫ぶ。
「大丈夫だって! ちゃんと気をつける!」
そんなやりとりに結衣は、ふふっと微笑む。
「いつの間にか、ほんとにお兄ちゃんらしくなったね」
「ほんとだ。あんなに小さかったのになぁ」と涼也が感慨深そうに言う。
シートの上に座ってアイスを食べながら、4人の笑い声が響く。
麻衣が結衣の膝に寄りかかって、甘えた声で「ママ、ずっといっしょがいいなぁ」と呟いた。
「もちろん。一緒にいようね。ずっと」
涼也もその横に腰を下ろし、子どもたちの頭をなでながら言った。
「この時間、大事にしよう。いつか大きくなっても、またこうして集まれるように」
律が「僕、大人になってもピクニックする!」と言い、麻衣は「じゃあ私、お弁当つくるー!」と叫ぶ。
結衣は笑って、家族4人を見渡した。
「こんな普通の日が、一番幸せなんだよね」
「うん。これからも、ずっと一緒に」
春の風に桜の花びらが舞う中、家族の笑い声が広がっていた。
未来に向かって歩いていく、その一歩一歩を、愛しさが包み込んでいた。
──5年前、病室で出会ったあの日の想いが、今も胸に響いている。「あなたに会えて、幸せです」と。
それは、今も変わらない。
お忙しい中、今日も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!