第100話「妹は、ぼくがまもる!」
妹が生まれてから数日。
2歳の律は、小さな手を見つめながら“お兄ちゃん”としての自覚を少しずつ育んでいく。
まだ たどたどしい言葉の中に、まっすぐな優しさが光る。
「ママ、だっこしていい?」
朝の光が差し込むリビングで、律が結衣のそばにやってきた。
ベビーベッドの中では、生まれたばかりの麻衣が、小さな声で眠っている。
「だっこは、まだ難しいかな。でも、近くで見てみる?」
結衣がそう言って麻衣を優しく抱き上げると、律は まんまるな目でじっと見つめた。
「てが、ちっちゃ……」
「うん。りっくんも、こんなふうに小さかったんだよ」
律は少し考えるような顔をして、麻衣の手にそっと指を添えた。
ふわりと握り返されて、彼の顔がぱっと明るくなる。
「ぼく、まもる!」
「え?」
「このこ、ぼくのいもうとでしょ? まもるんだよ。えいってするひとから!」
その言葉に、涼也も笑いながら顔をのぞかせる。
「えいってする人、いるかなぁ?」
「いたら、ぼくがやっつける!」
真剣な表情で小さな拳を握る律。
涼也は、その姿に目を細めて頭を撫でた。
「頼もしいなぁ。ママとパパも安心だね」
「ほんとに……ありがとう、りっくん。麻衣も嬉しいって思ってるよ」
そのとき、麻衣は小さくくしゃみをして、また すやすやと眠りについた。
「ほら、もう寝ちゃった。きっと、りっくんの声が聞こえて安心したんだね」
律は小さな声で「おやすみ」と囁き、そっと妹の頭を撫でた。
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その日の夜。
涼也と結衣は、寝かしつけた子どもたちの寝顔を並んで見つめていた。
「律、しっかりしてきたね」
「うん。あの子なりに、“守る”ってことを考えてるんだと思う。まだ2歳なのにね」
結衣がそう言って微笑むと、涼也も優しく頷いた。
「この子たちと一緒に、俺たちも もっと強くなっていかないとね」
ベビーベッドから聞こえる麻衣の寝息。
隣で眠る律の、小さな寝言――「まもる……よ……」
その声に、結衣と涼也は そっと手を重ねた。
「大丈夫。私たち家族なら、きっと大丈夫」
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