ダンジョンの謎
桜は手探りで石碑の文字をなぞりながら、洞窟の奥深くを進んでいった。懐中電灯の光が石碑に反射し、古代の文字が幻想的に浮かび上がる。彼は何度も文字を読み返したが、その意味を完全に理解することはできなかった。
「この地に眠る力を目覚めさせよ……」口の中で呟きながら、考え込んでいた。洞窟の中は静かで、時折聞こえる水滴の音が彼の耳をくすぐった。しかし、その静寂には不思議な気配も混ざっていた。
洞窟の壁面に映る幽玄な光景。その中で突然、石碑の前に立つことに決めた。手をかざし、目を閉じた。この地に眠る力が何であるのか、彼は本能的に知ろうとしていた。その力が何かに触れることで、運命が大きく変わるかもしれないという確信があったからだ。
しかし、手はまだ石碑の表面に触れることができない。何かが足りない、力が不足していると感じた。深呼吸をし、再び意識を集中させた。
その時、洞窟の奥深くから微かな響きが聞こえた。まるで誰かが導いているような感覚が胸をよぎった。周囲を見回し、何かが動いているような気配を感じた。それはまるで、この洞窟が自らの存在を示し、召喚したかのようだった。
「もしかして……この洞窟自体が私を選んでくれたのか?」
桜は思わず口に出してしまった。心は高鳴り、不思議な現象に対する好奇心と恐怖心が入り混じる。しかし、その感情がさらに前に進ませる力になった。
再び石碑の前に立つ。今度こそ、手をかざし石碑の文字に触れようと決意した。すると、その石碑が微かに光を放ち始めた。その光は手から伝わり、体を包み込んでいく。
「これが……この地に眠る力なのか!」
その光の中で、自分の意識が何かと繋がっていることを感じた。その力が何をもたらすのか、まだ知る由もなかったが、確かなことはその力が桜の一部になっているということだった。
洞窟の奥深くで、意識は広がりを見せ始めた。周りの空間がどこまでも広がり、その中で初めてのモンスターを召喚する瞬間を迎えることになるのだった。