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第七話

 これはまたまたシバが帆奈とバディをまだ組んでいた時の話である。時系列はどうでも良い。(とシバは言う)


 そんな二人にもう1人、背が高く、体格が良いだけでそそっかしい茜部あかなべが部下についたばかりの時のこと。

 シバの中では剣道が互角に相手として戦えた宮野という男を部下に迎え入れたかったが、ここ最近姿を見ない。

 噂だと特殊任務の部隊に駆り出されたとのことだ。直属の上司でないと詳細はわからないそうだが家族にも伝えられないそうだ。

 がっかりしつつもシバに従順な茜部は育て甲斐があるか、と割り切った。


「捜査お疲れ様っす」


 茜部は最後には「っす」をつける。とりあえずけいごではあるがその語尾だけは否めないシバ。おう、と答える。


 先日電車内で痴漢事件があり、某ネットの掲示板の書き込みで特定されていたサラリーマンらしき男が現れるのを待っていたところに彼がやってきたのだ。


 ここ数日同じ時間帯に痴漢が何件も起きている。同じ奴の犯行であろう。シバをはじめ管轄内の刑事たちは犯人にうまく逃げられ悔しい思いをしている。

 しかも一度帆奈が取り逃してしまったのでこの班で必ず捕まえてやる、と彼らは執念を燃やしていた。


「差し入れ持ってきました。朝ごはんまだかと思いまして」

「気がきくぅー、茜部」

「あざっす」

 帆奈に褒められて顔を赤くする茜部。帆奈はふふっと笑って2人楽しそうに選んでいる。


 シバはお腹すいているから早く食べたいけど、先輩としていいところ見せたいもので、先に2人に選ばせた。


「はい、冬月。どうぞ」

 と帆奈から戻ってきた袋の中にはしぐれと明太子のおにぎりだけ。2人の手にはシバの好きなツナマヨが。しかもあっという間に目の前で食べられてしまった。

 シバは先に選ばせたもののさすがに帆奈は自分の好みくらい把握しているものだと思っていたが。


「あっ、あの男! あの男よ、痴漢男。追うわよ!」


 帆奈が声を上げた。目線の先に人影が。2人は一気に走る。


「え、俺食べてねぇ」


 おにぎりをその場で投げ捨て走り出した。シバは2人にツナマヨを食べられた恨みも相まり、全速力で追いつき痴漢男を取り押さえた。


 痴漢した男は泣き喚いてる。小柄で痩せ型。かなり足が速いのはただ小さいから動きが機敏なだけということか。

 彼は冤罪だっ、家族がいる、会社にも家族にも言わないでくれと。誰もがそういうだろう。喚いて周りの人たちもジロジロみている。

 名刺を見ると大手企業会社役員と。携帯の待ち受けは彼の妻と子供だ。

 シバはツナマヨのおにぎりを片手に駅構内の事務所で泣き喚く男に事情聴取をする。こんな刑事なんているわけないのだが。


 ピロロロロロッ


 帆奈の携帯が鳴る。男はずっと泣き喚いている。とても話にならない。帆奈は何かを話したあと、上司からだとシバに携帯を渡す。


『冬月、こないだの痴漢被害出した女子高校生、オヤジ狩の首謀者だったと』


 えっ?! とついシバは声を上げる。


「あんな可愛くてか弱そうなあの子が? しかも援助交際もしてたって」


 嘘だろ……とシバは思い返す。純潔そうな顔だった、と。シバは少しタイプだったと嘆く。帆奈はじろっとシバを見る。またかと。


「先輩、この男……鞄の中にこんなのが……」


 茜部が男の鞄の奥から赤いレース下着を取り出した。男は慌てる。


「それは妻の……」


 シバは笑った。


「こんな大きな奥様がそんな小さな下着着るか?」


 と、男の待受に移った大きな体をした妻を見せつけると男はさらに泣き喚き、床に這いずり回った。


 痴漢は親父狩りのメンバーである女子高校生による偽証言で痴漢は冤罪だったが、この男は下着泥棒であった。


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