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第四十五話

「本当にやめるんか、シバ」

 シバはあれから上岡に結局人事部に連れて行かれ書類を貰い、各部署に顔を出した後ちょうど現場から上がってきた瀧本と茜部と出くわした。警察の1番の問題児シバの退職はすぐさま伝わっていたらしい。


「はい。瀧本さんにはお世話になりましたし、茜部も俺の忠実なしもべだった」

「シバさん……」

 茜部は涙ぐんでいた。そんな彼の左手薬指には指輪が光っていた。シバはそれを見て指輪も買わなくてはいけないのか、と。


「でも結婚して赤ん坊もできるのに辞めちまうのか」

「まぁ、そうですけども。まさ子ちゃんの会社の手伝いでもして……あ、俺の子供の世話優先だなぁしばらく。まさ子ちゃんはすぐにでも仕事に戻りたいそうだ」

「……」

 瀧本はシバのことをじろっとみた。


「辞めるのは簡単だが戻りたいですといっても知らんぞ……」

 シバはそうっすね、と渋い顔をする。


「お前もまさ子ちゃんもこのタイミングで結婚か、て感じがするよ」

「……」

「まぁいいけどな。お似合いではあるし、家族は大事にしろよ」

 瀧本は茜部を連れて署の中に入って行った。



 シバは警察署を出る。ポケットを探ってタバコを出そうとしたが今からまさ子の元に行くんだったとやめようとしたが、一本だけでもとようやくタバコを出して咥えてジッパーを取り出して火をつけた。


「瀧本さんのたまにぐさってくる言葉、めっちゃ重いなぁ。今日のは特に……」


 と呟いたその後。


 スマホの着信音。シバの母からだ。

「はい、今から向かうって」

『まさ子ちゃん、陣痛来たわ。1時間以内にきなさい!』

「1時間?! や、余裕だけど、もう生まれるのか?」

『あんたもすぐ父親だよ! 自覚持て!』

 シバは咥えたタバコを吐き出してすりつぶした。


「わかった! 今から向かう!」


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