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冬月シバの事件簿  作者: 麻木香豆
清算

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第四十一話

「にしてもリヒトといい、百合香ちゃんといい……なんなんだよ。って俺もかぁ。でも俺から別れを切り出すわけじゃないからまぁいいかー」

 と脳天気、それがシバらしいというかなんというか。

 受付に座る陣場鳴海がシバを見るなり営業スマイルならぬ受付スマイル。


「あら、今日は刑事さん? それとも女狂いの柴犬さん?」

「女狂いは余計だ、公務員の裏フィクサー……ナルちゃん」

 そうシバが言うが、鳴海はピクリとも表情を変えない。接客スマイル全開。

 後ろから来た老女に接してにこやかに案内し、また戻ってきた。


「最近はどうだ、やってんのか?」

「……さぁ」

「さぁって、えっ……」


 シバは鳴海がサッと左手を隠した。一瞬だが宝石の輝きを左の薬指で輝いていたのだが。鳴海は気まずそうな顔をし、笑顔を浮かべながらも目線をずらした。


「結婚か?」

「……ええ、それがなにか」

「おまえもか。色んな男と女を引き合わせてとうとう」

「……私はあなたに抱かれた女の一人。いつも他の女の人を抱かれてる横でいつ私だけを愛してくれるのか泣きながら他の男に抱かれ……待っていたけどもう待てなかった」


 シバはにこやかな鳴海の笑顔の奥から何か悍ましいものを感じ取った。


 鳴海とは複数人の公務員の男女との交友会、いわゆる乱交パーティーで出会ったのだが、シバ自身が他の女性を抱いているときにものすごく視線を感じたのは鳴海の目線であった。


 もちろん彼女とも関係を持った。市役所の受付嬢とは思えない夜の香りが漂うセクシーさは他の女の人にはなかった。そんな彼女が連れてくる女性達の魅力さもまさしくそうであって、とても刺激的なものであった。


 集まるのは公務員同士ともあって役所の人間だけでなくて教師、警察官、消防隊員、など多岐にわたっていた。


「……そ、そうか……パーティでいい男でも見つかったか?」

「違うわ、パーティには関係ない」

「だ、誰だよ」

「あなたには関係ないわ」

 鳴海の笑顔が消えた。一瞬。だがすぐ戻った。


「それよりも本日はどのようなご用件でこちらに?」

 シバはそうだった、と。


「いや、俺もなぁ。実は結婚することになってなぁ」

 すると鳴海が目を見開き


「あらぁ、おめでとうございますぅ」

 と声を上げる。シバはひるむ。

「でしたらあちらの住民課で詳しくお手続きをお聞きくださいー、おめでとうございますぅ」

 鳴海の声がフロアに響く。シバはシーっと指を当てる。すると彼女は涙を浮かべている。


「……おめでとう、シバ。私はもう年齢的にもうアウトだったの。だから親に無理やりお見合いさせられて地元の和菓子店の坊ちゃんと……バツイチの方で娘もいる人だけど優しい人。仕事も来月で辞めるの。パーティももうできない、私は来月から和菓子屋の女主人。面白いでしょ、裏の乱交パーティをしていた私が……老舗和菓子屋の女主人……ほほほ」


 鳴海のは涙とは裏腹に笑っている。シバも笑ってありがと、と去ろうとする。よかったことか周りには老齢の警備員しかいない。

「でもあなたを忘れない……また会いたいわ。和菓子屋のパンフレットよ」

「あ、ああ」

 とパンフレットを手に取ってシバは住民課に行くことにした。


 鳴海は涙拭き取り、次に来た主婦ににこやかに対応した。



「……あの鳴海まで結婚か。たしかに40だったよな。結婚はするつもりはないとか言ってたのになんでこうも……次から次へと」

 和菓子屋のパンフレットを見ると確かにこの地域では有名なところであった。警察署の方でもよく置いてある菓子である。


 ドン!


「いたっ」

「いってぇ……」

 ついパンフレットを見ていて前をしっかり見ていなかったシバは誰かとぶつかった。


「すまん、俺の前方不注意だ。怪我はないか」

「……君こそ怪我はないか」

 ぶつかった相手はどうやらメガネを落としたらしく拾っている。メガネを拾って立ち上がるとシバよりも小柄な男であった。


「でっか」

「お前の方がチビやろ」

「るせぇ、これからはしっかり前見ろよな」

 とメガネをかけた男はシバをしっかりと見た。


 シバはその男を見る。くりっとした眼、クセのかかった髪の毛。服は地味めだが自分よりも年下で少し少年のような顔立ち。


「……ああ、すまんな」

 男は去っていった。


「ああ、住民課いかきゃな」

 シバは住民課に行き、婚姻届をもらいに行ったのであった。

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