表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冬月シバの事件簿  作者: 麻木香豆
花屋の女
38/47

第三十七話

 シバは一番爆弾の近くにいたのだが家具や立ち位置などいろんな偶然や軌跡が重なり死には至らず生き残った。半年以上治療がかかったが。


「てかまさ子さんのほうは体調どうなんだ?」

「母さんに聞いたら過労で切迫早産、絶対安静……」

 そう、まさ子はシバとの子供を妊娠していたのだ。そして今日お見舞いに来れなかったのも数週間前に異変に気づいた彼女は病院に行きそのまま入院になってしまったからだ。


「お見舞いに行った時に彼女は献身的にお前の世話をしてたなぁ。無理が祟ったな。事故前に彼女は妊娠して……あやうく未婚の母になりかけてたもんなまさ子さん」

「妊娠してることは知らなくてさ。てか退院してすぐもう俺父親ですとか実感がない。それにちょっと今の時間は検査で夕方からしか面会できない」

 2人はまだ結婚をしていない。シバが入院しているうちにまさ子のお腹の中で子供がすくすくと育っていったのである。


「まぁそろそろけじめ付けてさ、なぁ」

「……も、もちろんつけますよ」

 シバは目が泳ぎながらもさっき看護師の女性を抱いたことを思い出す。


「じゃあ夕方の面会前に行くか、あそこ」

「あそこ……? 退院記念に風俗っすか?」

「こんなに心配しとった俺があほだったわ。風俗じゃねぇわ。まさ子ちゃんの次にお前を心配していたあいつのところだよ」




 着いたのはバーだった。心配していたと言う相手はバーカウンターで仕込みをしていたリヒトのことだった。


「いらっしゃい……あっ……シバ!!!!」

 リヒトほすぐさまシバに抱きつこうとしたが大怪我をしたこともあって気持ちをどうやってぶつければいいのかともどかしそうにし、ボロボロと泣き出した。


「お前が入院した時すぐさまかけつけたんだぞ。病院でワンワン泣いてまさ子ちゃんもびっくりしてたけどな」

 そういえば、と朦朧とする意識の中で誰かが泣いている声が聞こえたがまさ子もだが李仁だったのかとシバは思い返す。

 目の前でボロボロなく李仁にシバは両手広げ

「ありがとう、リヒト。俺の胸で泣け」

 と言うとすぐさまリヒトはシバの胸に抱きつき、そのあと涙ぐちゃぐちゃのままキスをする。


「おいおい、いちゃつくのは2人きりの時にしろよ……オーナーも見てるぞ」

 奥のカウンターで髭男のオーナーが見て苦笑いしてる。

 だがそれを無視してシバもリヒトにキスをする。ねっとりねっとりと。


「久しぶりにお前の作った酒が飲みたい」

「こんな大怪我して大丈夫なの? それに奥さんのところは?」

「……大丈夫だ、少しくらいなら」

「わかったわ、今から準備する。おつまみも作るから瀧本さんも一緒に」

 リヒトは涙を拭ってカウンターに入る。


「退院お祝いの祝杯ってやつか。まぁ顔出すだけだったが……まだ時間はいいのか? まさ子ちゃんの」

「大丈夫っすよ。あと2時間くらいある」


 お酒とつまみを嗜み、事件のことや酒が進むにつれて入院中の看護師とのアバンチュールなことやら話していくうちにリヒトは嫉妬の目でシバを見ている。


「そろそろいくか」

 あっという間に1時間すぎていた。瀧本は椅子から降りるが

「俺はちょっとまだ残ってるっす」

「早くまさ子ちゃんのところに行ってやりなよ」

「はい、はい」

 お酒も二杯目のシバ。酒もタバコも控えるようにとか言われつつもリヒトはジトッとシバを見ている。瀧本は察してお金を払い去っていった。


「シバ……」

「ん?」

「開店まで少し時間あるんだ」

「おう、それで?」

「もう、しらばっくれて」

 リヒトが笑うとシバも笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ