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冬月シバの事件簿  作者: 麻木香豆
花屋の女
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第三十三話

 連日家に帰れなかったシバだが有能な情報が手に入り、また李仁には褒美をと考えると自分の一部がモゾモゾするがそんな場合ではない。


 他の捜査員からも早速情報が入り、裏を掴むことができた。


 大量の爆薬が一年以上かけて紛失していたという垂れ込みが他にもあったのだ。

 爆薬の紛失は罰則がある。少量ならと誤魔化していた管理者が改ざんをしていたのを知った他の同僚が警察に匿名でメールを送ってきたという。


 李仁のツテで垂れ込んだ男とは違うものであろう。


「菅生も体張って口止めしたのに他の人間に垂れ込みされるってやはり神様は見てるんでしょうかね」

 茜部がそういうと

「なんかなー、悪いことしたら必ず裁かれる……可哀想やけどそういうもんだわ世の中。てかそうじゃないと俺らも捕まえられんぞ」

「ですよね……あ、あそこっすね」


 すぐにシバたち捜査員が現場に到着。菅生が身も隠さず正直に申し出た。元恋人の男に頼まれてやったことだと。


 シバは菅生を見るととても美しく、聡明な真面目な女性だと感じだが、彼女のお腹は大きかった。


「彼……鈴菜の子供を妊娠しています。……彼におどされて……規定の量を手に入れなかったら……」

 彼女はシバに倒れ込み震えて気絶した。彼女の股から出血が。チラッと見えた内腿にあざが見える。もしかしてとシバは彼女の服をまくった。服で見えない部分がアザだらけであった。シバたちは一気に血の気が引いた。


 後日わかったことだが彼女は病院に運ばれたものの子供は死産だったようだ。その子供は爆薬を頼んだ男のか、垂れ込んだ口封じ男のかどちらかわからない。


「垂れ込んだ男も性暴力と脅しで事情聴取したいが爆破事件とは関係ない……」

 シバは拳をぎゅっと握る。

「なんなんだよ、日本男児はモラハラと性暴力だらけだな」

 とシバは声を荒げると

「ですね……」

 と茜部は顔を引き攣らせる。

「俺は下半身だらしないけどさ、ちゃんと避妊はするし。ましてや暴力はしない。暴言も吐かない。優しくしている。一緒にするなよ」

「は、はい……それよりも他の捜査本部から連絡があってその菅生の元恋人である鈴菜龍太郎24歳はフォレスティアグループ研究員で昔ながらの研究マニア、特に爆薬に詳しい。学生時代も爆発テロに関する論文を書いていた……爆破事故の映像を見る悪趣味……」


「なるほど、……また情報が入ってきたぞ。鈴菜の自宅から押収されたパソコンはあまり履歴がなかったらしい、メインはスマホ。だからこそ履歴は少なくてよく見ていたサイトの特定は早かったらしい」

「まぁスマホの方もあとすこしで履歴も解析されますよね」

「なに、サイバー班特定早いな。例の闇サイトで鈴菜と思われるアクセスがあっただと……」

 シバは助手席で逐一入ってくる情報に目をやる。


「鈴菜はその闇サイトで爆破事故を複数回起こしたいがその中であなたの殺したい相手を巻き込みますが誰かいませんかという書き込みを……って結構書き込みがあるな」


 シバはスクロールすると数百となる人々の書き込みがあった。思い思いの殺して欲しい人の名前、住所や電話番号、写真も貼り付けられていた。


「あほだな、こいつら……これ見て巻き込んで殺されたらどう思うんだろうか」

「ラッキーなんじゃないですかね。無差別爆破事件に巻き込まれた、自分は手をかけていない。闇サイトだからバレることはないと思ったんでしょうね」

「でも今の時点で闇サイトも俺ら警察にバレてるからもし実際ここに書かれた人が死んだらそいつのIPアドレス晒して特定してやるぞ」

「……でも今のところ誰も死んでない、怪我人とかでいたら」

「怪我人とそこに書かれた人たちと照会はまだか? 頑張れ、サイバー班!!」

「シバさん、サイバー班とのつながり密っすね……」


 茜部がそういうとシバがニヤッと笑った。

「ああ、サイバー班の才女の千賀咲ちゃんと仲良しでな!」

「千賀咲は僕の同僚で確か今度署長の息子と結婚……え、まさか彼女にも手を出した?」


 茜部はまたかー、と苦笑いした。シバも笑う。そこにまた連絡が来た。


「はい、冬月。……はい……鈴菜は逃走中というのは伝わってますが……はい……書き込みで鈴菜の書き込みとマッチングした対象が人がいると……その名前は……」

 シバはその名前を聞いて絶句した。


「先輩どうしたっすか」

「花屋に行け、花屋!」

「えっ、逆方向……あのこの間のモラハラ被害の?」

「麻美さんが行方不明……捜索届けは出ているが数日前から捜索願いを出した家族との連絡も取れないらしい。てか……鈴菜の書き込みにマッチングしたの日ってクソ!!! 警察署で彼女と会ったあの日じゃねえか!!! 行け、花屋に!!」

「は、はい……」


 車は花屋に向かった。

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