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冬月シバの事件簿  作者: 麻木香豆
花屋の女
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第二十四話

 晴れて退院をするシバ。迎えに来たのは妻のまさ子や共働きしている両親でなく、彼の上司の瀧本が迎えに来た。


「お勤めご苦労さん、久しぶりのシャバの空気はどうだ」

「出所じゃねえよ……こっちは被害者だ」

「あーそうだった。まぁ他の奴らよりも遅い春だったな」

「だからっ……」


 瀧本は笑いながらシバの荷物を車の中に入れていると病院の玄関に琳と看護師長、数人の女性スタッフが見送りに来ていた。

 シバは先ほど受付で挨拶をしたはずだったのにと思いつつ、夜にもう会えないと言っていた琳が私服姿でシバを見ている。他の女性スタッフもだ。


「お前、あそこの女と全部寝たのか」


 瀧本はシバの女癖の悪さを知っている。


「病院のベッドはさ、スプリング効かなくて腰が痛くてね」

「もっと入院しとけ」

「それはもう勘弁。騎乗位は飽きた」

「乗っかってもらってたのか」

「俺はバックが好みでね、しばらく体が動かなかったから……」

「勝手にしろ、行くぞ」


 シバは名残惜しそうにしている女たちの顔を見ながら車に乗り込んだ。


茜部あかなべも先週から復帰した。もう違う現場に向かってる」

「わぁ、ブラック企業」

「……冗談言えるのも今のうちだぞ。おまえの署内での立場は最悪だ」

「まじブラック企業、こんな目にあってなんで俺が批判されなかんの」


 シバの部下である茜部も事件に巻き込まれたがその次に退院できたのはシバということである。


「被疑者である岩沢も草壁も死んだし、死人に口なし、事件の真相は迷宮入り決定だな」

「えっ、麻美ちゃ……草壁麻美も。助からなかったか」

「聞いとらんのか、岩沢は即死だったが彼が守って命は助かっていたんだがな、大火傷は負ってたが生きてはいた。その後、拘置場で首吊って死んだ……」


 シバは青ざめた。全く持って知らず、生きているかと思っていたようだ。


「夫と義父母から受けたいじめの記録的なSNSは残っていたから情状酌量の余地はあったんたがなー。やはり本当に愛していた男が死ぬと……ちなみにその事故の時にお腹の子供は死んでいるからそのショックもあるだろう」

「麻美ちゃん……」

 シバは車外の景色を見た。


「なんで死んじまうんだよ、俺が助けてやるって言ったろ」

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