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冬月シバの事件簿  作者: 麻木香豆
同郷の2人
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第十九話

 あれから4年。私たち家族は都心から離れたいと思い、花凛の小学入学に合わせて岐阜に戻ってきた。


 しかしそれから間も無くして娘の花凛が死んだ。


 交通事故。娘を轢いた相手は交通違反でここは大丈夫だと過信をした40代の主婦で、


「ここはいつも……」


 と普段から違反を犯していたようだ。私はあの4年前の時から気をつけていた。ほんの出来心でしてしまいそうな時にふと、白バイの彼が浮かんできた。娘にも交通ルール守ろう、車に気をつけようね、と教えてきた。


 しかし娘は守っていても、車は違反をした。そして事故を起こした。


 もしあの時のわたしもUターンをしてその先に人がいたら誰かの命を奪っていたもしれない。


 葬儀を終えて旦那とぐったりと座っていた。泣き続けても花凛は帰ってこない。わかってる、そんなこと。


「すいません……花凛ちゃんの葬儀は」

 と男の人の声がした。顔を上げると、大きな男の人……。まだわかった。あのつり目。ヘルメットをあの時被ってた白バイの彼。


「この度はご愁傷様でした……覚えてらっしゃるかわかりませんが……」

「覚えてます……同郷の……白バイの!!!」

「花凛ちゃんに手を合わせたくて」

 旦那は何事か分からず頭を下げた。


「実は今年こっちに戻ってきました。刑事として。そして今回花凛ちゃんの事故を担当することになって、ご家族のお名前を見たら……あなたのお名前が。アズミって珍しいから」

 わたしは泣き崩れた。こんな形で彼と再会するとは……。花凛を抱き抱えてくれた白バイの彼が、とき同じくして故郷に戻り、娘の事故に関わるなんて。さらにたくましく、勇敢な刑事になっていた。



 娘の死以来、彼の紹介でわたしは地元の交通事故で家族を亡くした遺族の会の代表になり、今でも子供から大人、企業の人たちなどに交通安全についての講演を行なっている。


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