0章ギルド結成秘話その7:リンとミユの出会い前編③
時はミユとリンの過去の時代に遡り、リンは深霧の幽谷のウロビトの里を冒険者のサポーターとして訪れていた。そこで、治療、薬学を通して交流を深めていく中で、ウロビトの少女ミユと出会う。ミユは冒険に出たいという声にリンは声をかけようとした時、ウロビトの青年に笑われてしまうのであった。
他のウロビト達も笑ってるものや真剣な眼差しでミユという名前のウロビトを見つめているではないか。
少し年老いたウロビトがぽつりと真剣そうな顔でミユに諭し始めた。
「ミユ...お前はまだ10歳じゃろう。冒険にでるには早すぎる。いくらい方陣師の杖を扱えたところでな。それにウーファンの試練にも合格できていないお前が外に出て行ってよい場所ではない。」
さらに言葉を続ける。
「冒険は常に死と隣合わせじゃ。それでも好奇心や魅力が上回る気持ちはようわかる。お前の両親が冒険家の血を引いているからも納得はいく。だがお前は忘れているかもしれないが5年前、里に起こった悲劇でお前が危険にさらされると思うと心配なんじゃ。」
他のウロビト達も頷いたりしている。
その言葉に対してミユは
「...あの時のことは忘れていないわよ。それにヒトは残酷な人達だけじゃないでしょ。それは最近のエトリアの交流や冒険者達が巫女さまを助けてくれたことで明白なはずよ。...それにあの子だって本当は残酷なヒトだったわけじゃ…。」
最後にポツリと何かを言いかけたようだったが聞き取れなかった。それに5年前に起きたことって何かしら。気にはなったが話が進んでいく。
「ともかくだ。お前の母さんが美人だったようにお前も村でかなり可愛がられてきた。それに里の連中も含めお前にはまだここにいて欲しいんじゃ。直ぐに外に出すには心配なんじゃ。」
「ママは関係ないでしょ。!!それにママの血を引いているからって皆、昔から可愛がりすぎなのよ。私はママの事好きだったけど...いや好きだけど、私とママをなんでもかんでも重ねようとしないでよ。私は私なの!」
ちょっと拗ねた感じの所が可愛いらしかったりした。今どきの子の反抗期みたいなのは早いのかしら。いや私はオッサンか。
心の中でツッコミをいれていると、先ほどの年老いたウロビトが
「すまない。お前を重ねているつまりはないんじゃが、どうもお前の小さかった頃の母親の面影がな。それにしてもまさかお前、両親を探すために旅に出たいという訳か。だとしたら、尚更行かせることはできない。後2年くらい修行を積むまで我慢しちゃくれんかのう。お前を旅出させて直ぐにでも死なせてしまったら、それこそお前の両親に合わせる顔がないんじゃ。」
「っ――――ママとパパを探したいのは小さい頃からそうだったのは知ってるでしょ!!それに早く行かないと会えなくなっちゃうかもしれないじゃない。それに私だって私の仲間達とギルドを結成して冒険してみたいのよ。」
図星を突かれたかのようにミユは歯ぎしりをし、感情を表にだした。
どうやら、お互いヒートアップしているみたいだったし、ミユちゃんの気持ちはわかるけど、ここは第3者の私が止めないと、自体が深刻化してしまいそうだったのでさっき教えてもらった薬草とこの紅茶の知識を使えばいけるはずだ。よし
「まぁまぁ2人とも落ち着いてください。ここは美味しい紅茶があるので、それでも飲んで...」
「「飲んでられるか!!」」
2人の声がハミングしたかのように重なった。ウロビトも怒らせると怖いんだとこの時、知った。
「ですよね...」
私はしょんぼりとしながらもでもそれはそうよねと腑に落ちる部分はあった。ミユちゃんは幼いと見られるのが嫌で自分も自立してやってけるんだという所を証明したくて、冒険心と家族を求めて冒険に出たいという気持ち。一方でお爺さん?はミユちゃんの身を案じてのこと。まるで子供心配する親みたいね。
どっちの気持ちをわかるな。
「まぁこうなると2人を止める事難しいからさ。」
突然、若いウロビトのフキノが声をかえてきた。すると、もう一人の若いウロビのトウが
「まぁあの2人小さい頃から一緒だからな。爺さんの話にもあったように両親が2人ともこの里出身の冒険者でさ。父親が他種族に憧れて冒険にでちまって、当時あいつの母ちゃん、父親に惚れてたらしくてさ。」
トウ
「そんである時、父親が帰ってきた時、一緒に冒険に連れて行ってほしかったらしくてさ。詰め寄ったんだと。父親は最初断ったららしいんだけど。母親が方陣師の技量と熱意に負けちまって、一緒に冒険にでたんだよ。父親は方陣師としての才能がなかったというより、方陣師の訓練を嫌がって剣術とか独学して、旅にでたからある意味、ミスティックはほしかったのかもな。後美人だしな」
今度はフキノが続ける。
「それで旅の途中で子を設けて、そんでこの里に来てミユを産んだが2人とも冒険者に染まっちまってて産んで1~2年したら冒険にでちまったんだよ。あの時、ミユ結構泣いてたよな。」
「そうそうあの泣き顔は可愛かったよな。」
「そんな過去があったんですね。ミユちゃんの両親も中々凄い人なんですね。」
私は2人の会話を聞いて、感嘆いや脱帽してしまった。短い要略された話ではあった。きっとミユちゃんの両親の話は、森が生い茂るように、深く知っていくほど迷宮入りしそうだった。
「そりゃそうさ。あの2人の話なんてほぼ伝説さ。なんだってヒトとウロビトが縁を切ってる時に行動にでちまうんだからよ。同期のウーファンよりもすげぇと俺は思ってるぜ。」
フキノが言うとトウが
「馬鹿、ウーファンに聞かれてたらどうするんだよ。」
「大丈夫だって、ウーファンは今森の2~3階の見回りに行ってるんだろ。それにしてもミユの奴もかわいそうだよな。爺さんに色々言われちまって。俺はミユを別に冒険者として外にだしてやってもいいとは思ってるんだけどな。」
すろと、Bが
「いやいやお前、爺さんの気持ち考えてみろって。両親が爺さんにミユを任せてから。ずっとミユの面倒を見てきたんだぞ。そりゃミユを守りたいって気持ちわかるぞ俺には。」
「じゃあ、お前ミユをこのまずっと里においておくつもりかよ。爺さん絶対に2年後もこの里にいろって言うぜ。それはお前にもわかるだろ。ミユが冒険者になるって言うなら、俺は同じ冒険者としてアイツにはこの里から巣立って欲しいと思ってる。」
「んだと、爺さんの気持ちも考えて俺は言ってるんだ。」
「爺さん、爺さんうるさいぞお前は!」
「やるのか」
「上等だこら。」
「なんで2人が喧嘩してるんですか」
そう言いだすと2人は腕相撲をしながらの口喧嘩や腹筋勝負などし始めたではないか。
「気にしないで、ミユと爺さんがこうなると里の一部の皆はこうなるから。」
そう言いながら、二人はくだらない勝負を繰り広げる。
「ええええええ」
私は訳がわからなくなっていた。ミユちゃんの話になると里のウロビト達はこうも熱くなってしまうのだろうか。本人は嫌がっていたけど、これも両親による影響なんだろうか?
すると、周囲のウロビトまでも俺達も混ぜろばかりのかんじで言い争い、あるいは方陣師の杖での殴り合いしまいには術まで発動している者までいる。
勘弁してほしい。ただの助っ人にきたのにまさかこんな事態になるなんて思うわけないじゃない。
「うるさい!お前達私が留守にしている間、このザマはいったいなんだ。」
この里を統括しているかのような女性の声が聞こえてくるのであった。