0章ギルド結成秘話その6:リンとミユの出会い前編②
ミユを探し求めてヒーローとリンは街中を駆け巡っていた。ヒーローの脚の速さにリンは体力の限界がきてしまいその場に倒れ込んでしまう。そこでリンは自分の不甲斐なさ故にミユを助けられないと嘆きミユとのい出会いを思い出すのであった。
(3年前:深霧の幽谷でのミユとの出会い)
遥か太古の時代、かつてヒトは世界樹を創りだした。その大樹は汚れた大地を浄化する為に作られた人間の英知の賜物である。その世界樹を守るべくヒトはウロビト、イクサビトを世界樹を守る使命を与えた。
ウロビト、イクサビト、ヒトは手を取り合う事で世界樹を守っていた。長らく平和の時代が続いていた。しかし、世界樹に異変が起き、世界樹が突如姿を消し、巨人が姿を現した。巨人は多くの生命に死を与え、大地の恩恵をも奪ってしまった。
巨人が歩く大地はやせ細り、人々は「世界樹の呪い」と呼ばれる病に侵された。それは身体中からツタや木々に覆われ死ぬという恐ろしいものだった。
ヒトは巨人から冠を取るべく、北の大地へと足を運び、イクサビトは病に侵されながらも巨人の心臓を、ウロビトは知恵を出し合い巨人の心を取り出すことに成功した。巨人は3つの象徴を無くすことにより、大地の平和が戻った。
巨人を再び目覚めさせまいと、ヒトは冠をウロビトは心をイクサビトは心臓を持ち帰ったとされている。
それから数千年の間、北に逃げたヒトは新たに帝国を、南に下ったヒトはタルシスがそれぞれ形成されていった。名君と名高い辺境伯が治める最果ての街として知られるタルシスは代々その冠を辺境伯が家宝としていたが時が流れるにつれてその重要性は忘れ去られていった。
そのタルシスが位置する風馳ノ草原は、青々とした草原と穏やかな風が吹く冒険者の始まりの場所には相応しい立地をした場所である。
風馳ノ草原に位置する迷宮を踏破した証を持つ冒険者しか先に航路を進めることが出来ない場所が丹紅の石林である。そこは赤い絶壁が立ちはだかり、湿潤で赤い大地には草木が生えている。
その大地を進んだ先に深霧ノ幽谷が見える。この迷宮は霧が濃く、進んだ道から突然知らない場所に移動していることがあり、地図が書けるものにとってもこの不思議な現象に戸惑いを隠せない。
蛍の明かりに導かれし者だけが辿り着く事のできる場所となっている。気球からその里を除く事はできず、巧妙な高層木造建築物が隠されている。この場所は「ウロビトの里」である。
イクサビトの伝承ではヒトは戦友とされているが、ウロビトの里に伝わる「聖樹の護り」において、ヒトは逃げた存在となり、友好は絶たれたとされている。
そんな中、5人組の冒険者がウロビトの里を訪れウロビトとの交流が始まった。始めはウロビト族も困惑していたが巫女がホロウクイーンに攫われた事件をきっかけに巫女を探し出し、一緒に協力することで無事に巫女を取り戻すことが叶った。
こうしてヒトとのわだかまりも解消されタルシスとの交流が始まり、ウロビト、ヒトはお互いの街や里を訪れるまでに至った。
交流が当たり前の様に行われるようになった頃、一人の冒険者がウロビトの里に赴いた。眼鏡を纏い紫色の髪をしたポニテ―ルの女子であるリンであった。相変わらず鞄にはネクタルやアムリタ、図鑑、ノートといった簡易的な生物学者あるいは研究者とも捉えられる装備を身にまとっていた。
何故彼女は深霧の幽谷に来たのだろうか。
「初めまして、冒険者アシスタントのリンと申します。本日は皆さんの治療と薬草の知識、タルシスへのご案内をしにお伺いにきたリンと申します。」
リンはそう言ってぺこりと会釈をし、早速自分のやるべき事の作業に取り掛かる準備を始めた。
ウロビトの治療、が終わったら、第2迷宮兼ウロビトの里に伝わる薬草の技術を習得していこうかしら。
ウロビトについては、以前ミズガルズ図書館に立ち寄った際に文献の記録が残っていたのものと実際にタルシスでウロビトについての情報や伝聞、訪れてきたウロビトについて知ることができたから、そんなに驚きはなかったわね。
未知の人物に会えるのはワクワクするし、友好関係を築けるなら、築きたいと思ってたから、幸いにウロビトは友好的な種族そうだから、私は親近感を抱きやすいのよね。
実際に今日の会話や得れるものにドキドキやワクワクを隠せないし、私もウロビトの仲の良い友達でもできたら、嬉しいんだけどね。でも今日は仕事で来てるし、場はわきまえないといけないわね。
リンはまず始めに怪我人の治療に取り掛かることにした。
幸い治療も怪我人は少なく、第3迷宮の話や第1迷宮の話を聞かせてくれる冒険者の話はどれも新鮮なものばかりで、心がワクワクするようなものだった。
第一線の冒険者としての活動はできていなかかったが、こうしてアシスタントとして各地の迷宮に赴いてはサポートするこの仕事がリンは好きだった。
薬草の知識はこれまでに知らない知識もあり、勉強になるものばかりだった。ノートにぎっしりと字が埋まるくらいの内容の濃い収穫となった。
最後にエトリアに行きたがっている冒険者達を気球に乗せるべき仕事をする為、名簿を確認した。
新冒険者志望のウロビト達はやれタルシスはどんな街だ。外の世界には本当にヒト族が多くいるなのだとか俺こそ一線で活躍冒険者になるんだと言っている者など様々である。
そんな彼らと名簿の確認をしながら、やり取りをしている時、一人のウロビトらしき少女が声をかけてきた。見た目は8~10歳といった所だろうか。髪は白くロングツインテールで花の装飾などで髪をとめ 目の下にはウロビトに共通であろうこの迷宮で取れるものなのかウロビト族特有のピンクのアイラインが化粧されていた。
私はその姿に可愛らしさも感じ年代も近い事から、初対面ではあったが少し親近感を感じた。
「私も連れて行ってくれないかしら。迷宮の外の世界をヒトの生活を見てみたいわ。」
迷宮の外への憧れに目を輝かせているようだった。
私もサポーターという身だけど、冒険の楽しさを伝えたかったし、仲良くなりたかったので、声をかけようと手を伸ばした瞬間
「ぎゃははははは、ミユ冗談で言っているのか」
一人のウロビトの青年が嘲笑っていた。