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ユグドラシル~初日に世界を終わらせた男~  作者: 猪突
淵源を知る時
10/16

ゲームスタート、そして世界の終わり

「大分かかりそうだな…………………」


大蛇戦で逃げ回ったせいで森の奥地まで足を踏み入れてしまった。エリア名「神隠しの樹林」という名の通り、入り組んだ地形に四方を見渡しても区別がつかないほどの樹木。さっき通ったのでは、と疑うほど迷宮じみた森。あまり長いすべきエリアではないな。


「それにしても綺麗だよなぁ……………………」


上空を悠々と漂うオーロラに目を奪われ、上を向いたまま進む。だからだろう、その常軌を逸した異変に瞬時に気付けなかったのは。


神隠しの樹林。訪れた人間が神の気紛れによって失踪することから名付けられた忌み名。ただ、もしそれすらも我々の目を欺く神の悪戯だとしたら…………………本当は神”が”隠すのではなく、神”を”隠す森だとしたら。


それは突然だった。何の変哲もない二本の樹の間を通り抜けた時、視界に捉え続けていたオーロラが歪む。ワンティア方向へと一直線に続いていたはずのオーロラは突如、滝のように大地へと向かって揺らめく。そして俺はようやく気が付く、目の前に広がるその奇怪な光景に。


「なんだここ……………」


目の前に悠然と鎮座する一本の大樹。樹冠の先が見えないほどに高く、大蛇の棲み家とは比にならない。そして見紛う訳もなく、さっきまでこんな大樹はなかった筈だ。あれば当然気付くはずだし、何より空間自体の雰囲気もまるで違う。まるで別次元に飛ばされたような………………

俺は一度振り返り、自分が通ってきた道のりを確かめる。そして折り返しの一歩目を踏み出したその時だった。


「うわっ……………どうなってんだこれ」


俺は見えない膜を”通り抜けた”感覚に襲われる。しかも俺がその”見えない膜”に触れた瞬間、そこの空間に綻びが生まれるのをこの目で確認した。そして再び振り返るとそこに大樹の姿は無かった。


「もしかしてこれって…………………」


俺はある憶測を胸に再び奇々怪々な空間へと足を踏み入れた。


やっぱりそうか………………………


空間の綻びに入ると再び目の前に大樹が現れる。俺の憶測は確信へと変わった。これは所謂「隠しエリア」というものではなかろうか。そして歪んだオーロラがこの樹へと繋がっているのを見るに、この隠しエリアの解放条件は恐らく”オーロラの発現”…………………………………てのは考えすぎか。


まあ、何はともあれせっかく隠しエリアに来たんだ、隅々まで散策し尽くしてやろうではないか。まずはあの一際存在感を放つ大樹から。


俺は中心に佇む大樹へと歩みを進める。幹には中心に大きく亀裂が入っており、ぽっかりと穴が開いている。枝木は無数の葉を纏い、七色にたなびいていた。そして樹のサイズ感に似合わない小振りの実が六つ。赤、青、黄色、緑、白、黒と色鮮やかに樹冠を飾り付ける。


ザザッ


その時、幹の裂け目から木々の擦れるような音が漏れる。姿は見えないが確かにそこには何かが隠れている。


見えた瞬間にムーブスロットルによる最短距離での接近、近接ならエッジソルトからのアサシンスピア。正直今のボロい短剣にフラッシュアークの摩擦軽減を使ったところで焼け石に水だ。間合いを保ってくるようなら短剣投擲からのインファイト。


頭の中で一通りシミュレーションを済ませ、その時を待つ。相手は隠しエリアのモンスター、今までの常識は通用しないと考えた方がいい。ただスキルを駆使できれば勝機はある。


「フゥゥ…………………………………」


肺に溜まった空気を全て吐き切る。体を完全に脱力させ、意識を研ぎ澄ます。鼓動で測るリズムは一寸の狂いもなく俺にその時を告げる。


…………………………………今!


超加速の発動と共に大地を強く踏み切る。

敵は人型……………精霊といったところ。

武器無し。

向こうからの接近なし。

……………………………遠距離濃厚!

分析を完了したまさにその瞬間、精霊らしきモンスターが両腕を俺へと伸ばし、何か言葉を紡ぎ始めた。


「ちょっとまt」


「易々と詠唱させるかよっ!」


俺の投擲は間一髪のところで回避される。しかし俺のシミュレーションに狂いはない。懐に入り込んだ俺は奴の顎目掛けて渾身のアッパーを捻じ込む。投擲を弾いた直後の隙を狙い打った俺の拳は奴に直撃し、高々と宙に舞い上がる。


「畳みかけるぜ!」


鈍い音と共に地面に叩きつけられた精霊に馬乗りになって繰り返し拳を振るう。


「わ……わたs」


「吐け!レア素材吐け!」


これでもまだ油断はできない。隠しエリアのモンスターである以上こんなあっさり倒せるはずがない。考えられる可能性としては特定の条件下での特殊攻撃。トリガーは凡そ、体力値の低下、または時間経過、特定部位の破壊etc…………………


此処で漸く奴の顔からポリゴンが流失し始める。拳が効いている証だが、倒し切るにはあと一押し足りない。


「は…はなs」


「ディガークロー!」


此処でダメ押しの追加補正。このスキルは武器や攻撃方法の指定がないため拳でも同一部位への攻撃補正が乗るはず。俺は無我夢中で奴の顔目掛けて拳を左右に振り続ける。


………………………………………………


……………………………………


………………………


……………



「お……終わったのか」


もう何度目かも分からなくなった拳を振り上げた時、奴がポリゴンとなって爆散した。あまりに手応えの無い一方的な戦いだったが、恐らく俺が強くなったのだろう。大蛇戦を経てレベルもスキルも獲得したことで最初の樹林程度のモンスターには手こずらなくなったと言っていい。


「さてさて、君はどんな素材をドロップしてくれるのかな。」


地べたに這い蹲って嘗め回すようにあたりを見渡す。だがそれらしき素材は見当たらない。


「何だよ、確定ドロップじゃねえのかよ……………………………って何だこれ」


戦利品が無いことに落胆するのも束の間、頭上より見知らぬ告知が表示される。




『称号を獲得しました』




称号ってなんだ……………………ってかこれが報酬ってことか?

俺はステータス画面を開いて確認する。


称号:時代の略奪者

全知全能を司る世界樹の残滓。遍く時に脈々と受け継がれし断片は全ての開闢と終焉を語る。時に風化しようとも紡がれる限り摩耗することはない。いつの世も時代を背負う者にのみ世界は答える。例えそれが奪い取った時代であろうとも。

「時代の略奪者の称号を持つプレイヤーに対する全NPCの好感度が0になります。」

「時代の略奪者の称号を持つプレイヤーは特定の能力値しか上昇しません。ただし特定の能力値はランダムで選出されます。」

「能力値に『権能けんのう値』が追加されます。ただしこの数値は上記の影響を受けません。」





STATUS 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

プレイヤーネーム:サカタク 

レベル:10

職業:なし

属性:なし

称号:時代の略奪者



基本値

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

HP(体力):100


SP(スタミナ):140


MP(魔力):10




能力値

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

STR(筋力):0


AGI(俊敏):0


CRI(会心):0


DEF(防御):0


RES(抵抗):0


LUC(運気):150


AUT(権能):0


















えっと………………………………オレ何かしちゃいました?


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