綺麗な爪
※ 期間限定の掲載です(^^;)
私の目の前を綺麗な爪が勢ぞろいしてキーボードの上を飛び跳ねている。
綺麗と言っても…遥か昔のバブリーなワンレンお姉さまのようなキラキラピカピカ光る感じとか…こども園の黄色と水色とピンク色のお遊戯みたいな感じでもない。
この子の爪は…ただただ、カットして…甘皮処理して…形整えてシャイナーで磨きあげているだけだ。
そうか!
きれいと言う文字の方が適切か…
パソコンや複合機の放熱とか半分しかいない人熱れとかだけではない“熱さ”に…
私は無意識にドレープブラウスのハイネックに人差し指をかけ…次に中指、親指を参戦させて…じわじわとそれを弄んでいる。
「今日の在オフィス人員は7名、只今、目標時間を達成いたしました。今からエアコンを入れます」
向こうでこんなアナウンスがして…
『今年の夏は節電に協力しましょう』との掲示ポスターが脇に貼られている、エアコンのパネルスイッチが押されたようだ。
オフィスの空気が動き出して
私の顔の辺りに…
あの子のシャンプーの芳しい香りを届け始めた。
ああ、“育て甲斐”のあるこの子は…
今までの子達とは違う。
そう!
面倒をみてあげた恩や用立ててあげた物を返せとは言わない。
私を飛び越えてもっと高みを目指すとか…別の世界へ行くと言うのなら、それも構わない。
でも
わたしの知らないところで
揶揄の刃を突き立てられるのは…
そう言い残して
寿退社行かれるのは
辛いし
寂しい
だから私は
愛情の注ぎ方を変えた。
猫なで声を出さない“ネコ”となって
背中に情熱のバネを丸め込んで
じっと待ち構えた。
辛抱強く…
そして“チャンス”がこの子の心の茂みの中から顔をのぞかせたら
シュン!と飛び掛かってネコパンチを浴びせ
その首筋を
欲するがままに…
甘い牙で噛み拉いた。
あの“初めての夜”を思い出すだけで
ハイネックに掛けた指が
手が
汗ばんでくる。
何食わぬ顔でその手をカラーステンレスのマグボトルで落ち着かせて…
他の誰にもカイドクできないカノジョ宛てのお誘いメールの文面を目の前に並べる。
ふふ
送信!っと
少ししたら…
目の前の…
キーボードの上のきれいな爪がマウスをクリックして
微かな息遣いが洩れ…
私がよく知っているその長くて柔らかな白い指が
キーボードを乗り越え
こちらに伸びて来る。
私はその指先をピンクのマーブル&スキニーフレンチの爪で撫で、互いの指を絡める。
二人はパソコンの画面とアクリルパーテーションを挟んで向かい合わせだから…
こういった悪戯を
こっそり
楽しんでいる。
「デリケートなセンパイを思う存分愛したいから私はこの爪がいいの」
こう言って甘えて来るこの子の事を
今日はもう待てない。
表向きは
ただ花を摘みに行くように
デスクサイドのキャビネットの引き出しからポーチを出し、席を立つカノジョ…
妖しい月は
空に昼間かかり
二人だけの秘密の場所へ
これから“お互い”を
確かめ合いに行く…
。。。。。
センパイです。
ドレープブラウスがかなり雑になってしまいました(^^;)
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