シリルと両親
邸に戻ってからも、仮面の男性が頭から離れない。お顔は分かりませんでしたが、とても幸せな時間でした。
セシディが帰宅してから数時間後、シリルが帰宅した。シリルは、帰宅して直ぐにセシディの部屋を訪れ……
バンッ!!と、ノックもせずに勢いよくドアを開けた!
「お姉様! あの仮面の男は誰!? しかも、途中で帰るなんて、マナー違反よ!!」
そんなマナー、いつ出来たのかしら?
「それなら、皆の前で嘘をつくのはマナー違反ではないの?」
「本当の事もあるのだから、マナー違反ではないわ!!」
どんな理屈なのでしょう?
「こんな言い合いをしても、意味はないわ。あれだけ辱めたんだから、もういいでしょう?」
「良くないわ! 言ったはずよ! お姉様の顔が歪むのが見たいと!」
それは、無理よ。私だって、表情を変えられるものなら変えたいわ。私の表情が変わるのは、プリシア王女の前でだけ。その理由は分からないけど、プリシア王女を怖がらせることがなくて良かった。
「お前達は、何を言い争っているんだ!?」
「大声を出すなんてはしたないわ!」
シリルの怒鳴り声を聞いて、両親が何事かとやって来た。
「お父様、お母様! ちょうど良かったわ! お姉様を、この邸から追い出して! お父様もお母様も、お姉様の顔を見るのはウンザリだと言っていたでしょう?」
「それは……だな。」
「シリルったら、いきなり何を言い出すの?」
お父様もお義母様も、私を追い出すはずはないわ。私を追い出してしまったら、お祖父様からの援助がなくなってしまうもの。
お父様はお金の為に、お母様と結婚をした。お母様と結婚していなかったら、ランバート侯爵家はとっくに没落していました。お母様を裏切り、愛人を後妻にしたお父様に援助し続ける理由は、私……お祖父様に、悔しい思いをさせてしまっている事が、すごく辛いです。
お祖父様は、私を引き取りたいと仰ったそうですが、お父様達がお金になる私を手放すはずはなかったようで、断られたと仰っていました。
「お父様もお母様も、どうしたっていうの!? 気色悪いお姉様なんか、追い出してしまえばいいではないですか!!」
「お父様もお義母様も、私の顔を見るのはウンザリのようですので、出て行こうと思います。」
「ダメだ!!!」
「ウンザリだなんて、とんでもないわ! シリルも、お姉様に謝りなさい!」
慌てて止めに入る二人。今まで私は、この邸を自分から出て行くと言ったことはありませんでした。どんなに嫌な目にあったとしても、この邸が唯一、お母様と繋がっていられた場所だったからです。お母様は、この邸で私を産んでくださり、亡くなったから……
「ちょ! どうして止めるの!? お姉様が出て行くと言っているのだから、出て行ってもらいましょうよ!」
「黙れ! シリル!! セシディ、お前がいないと困るんだ! 頼むから、出て行くなどと言わないでくれ!」
そんなにお金が大事ですか。