ロイド王子とプリシア王女
「いつお戻りになられたのですか!?」
「戻ったばかりだ。先程、父上に挨拶をして来た所で、プリシアが勉強をしてる姿が見えたから、終わるまで待っていた。元気だったか?」
ロイド王子は交流の為に、半年間他国へと行っていた。
「元気ではないです……お兄さまがいなくて、すごく寂しかったです。」
オーバーに、泣き真似をするプリシア王女。
「そんな泣き真似をどこで覚えたんだ、全く……。そうは見えなかったがな。それにしても、プリシアが他人の心配をしていたのも驚いたが、氷のセシディと噂されていた子が、笑っていた事にも驚いたな。」
あまりの美しさと、感情を表に出さない侯爵令嬢の噂は、この国だけでなく、他国にも知れ渡る程だった。
「センセイの事を、そんな風に言わないでください! いくらお兄さまでも、許しませんよ!」
ほっぺをぷくーっと膨らませながら怒る、プリシア王女。
「すまない、すまない。プリシアは余程、先生が好きなんだな。どこがそんなに好きなんだ?」
プリシア王女は両腕を胸の前で組み、考えるポーズをすると、
「んー。センセイは、キレイだし、優しいし、頭もいいし。それにね、センセイは私の目を見てお話してくれるんです!」
と、セシディの好きな所を答えた。
「そうか。他人の事を信用出来なかったプリシアが、そこまで言うのなら、素敵な人なんだろうな。」
プリシア王女は、国王ドーグが外で生ませた子だった。プリシア王女の母親は平民で、王女が三歳の時に病でこの世を去り、国王が引き取った。
城の外で生まれ、三歳までとはいえ、城の外で育った平民の子の王女を、周りの貴族達は快く思わなかった。
プリシア王女は幼いながらに、貴族達の好意的でない感情を感じ取り、周りの者を信用出来なくなっていった。
幸い、ローラ王妃はプリシア王女を本当の娘のように可愛がり、腹違いの兄ロイド王子は本当の妹のように思ってくれていた為、王女は真っ直ぐ育つ事が出来ていた。
「お兄さま……センセイね、何かあったみたいなの。いつも笑顔で勉強を教えてくれるセンセイが、すごく悲しい顔をしてた。何があったのか、調べて?」
プリシア王女は、目をうるうるさせながらロイド王子を見つめた。
「……戻ったばかりの兄をこき使うとは、困った妹だな。分かったから、そんな目で見るな。可愛過ぎて困る。」
「お兄さまー! 大好き!!」
プリシア王女は、ロイド王子に勢いよく抱きついた。
妹にデレデレなロイド王子だったが、妹がそれほど心配するセシディの事も気になり始めていた。




