プリシア王女の真実...そして、幸せへ
「食事会を台無しにしてしまって、申し訳ありませんでした。」
食事会が終わり、ロイド様が馬車で邸まで送ってくれる。
「謝る事はないよ。父上も母上も、セシディが大好きだと言っていた。もちろん、プリシアもね。」
「ありがとうございます。あんなに泣いたのは、初めてです。」
「スッキリした?」
「はい……。ですが、ひとつ疑問が……。あんなに王妃様を想っている王様が……」
「どうして、愛人を作ったのかって?」
王妃様に一途で、ご側室さえ作ろうとはしない王様が、浮気などするでしょうか?
「……プリシアは、父上の子ではないんだ。」
「え……?」
「父上の弟、ジャクソン公爵がプリシアの本当の父親だ。ジャクソン公爵は、プリシアを引き取らず、施設に入れようとした。見かねた父上が、プリシアを自分の子として引き取ったんだ。そして去年……プリシアは父親に一度も会うことなく、ジャクソン公爵は亡くなった。」
そんな事が……
「プリシア王女はその事を、知っているのですか?」
「ああ。君も知ってる通り、人の感情に敏感な子だからね。すぐにバレてしまったよ。」
「だから、プリシア王女はお母様ではなく、王妃様とお呼びするのですね。」
王妃様に一途な王様。プリシア王女が王様の子ではないと知っているのは、ごく一部の方だけのはず。世間では、王様が王妃様を裏切ったのだと噂されていた。
あんなに小さな体で、王妃様の気持ちを思い、心を痛めているのですね。
邸に帰ってからも、プリシア王女の事を思うと胸が苦しくなった。王妃様はプリシア王女を思い、プリシア王女は王妃様を思ってる。
あんなにも思い合える二人の家族に、心底なりたいと思いました。
「センセイ、お兄さまに私の事聞いたでしょ?」
翌日、家庭教師として城を訪れると……プリシア王女はまた、確信を持って言って来ました。誤魔化しても無駄ですね。私はプリシア王女を、思い切り抱きしめた。
「……この小さな体で、どれほどの辛さを抱えているのですか? プリシア王女を傷つける全てのものから、プリシア王女を守りたい。」
私はプリシア王女に救われた。無表情だった私の顔は、プリシア王女のお陰で表情を持つことが出来たのです。これから先、何があっても……プリシア王女に悲しい思いはさせません。
「今はね、全然つらくないの。大好きなお父さまもお母さまもお兄さまもいて、大好きなお姉さまも出来るのだから。」
「プリシア王女のお姉さま……私に、こんなに可愛い妹が出来るのですね。」
「お姉さまを泣かせたら、お兄さまを許しませんからね!!」
「??」
「……バレてたか。本当に、プリシアには敵わないな。」
ロイド王子が、ひょっこり顔を出す。
「ロイド様!? いつからいらっしゃったのですか!?」
「お兄さまは、センセイが来た時からずっといましたよ。センセイをずっと見てたんです。まるで、ストーカーです!」
「プリシアー! ストーカーはないだろう!? そんな言葉、誰に教わったんだよ。 」
「センセイに会いたいなら、どうどうと会いなさい。センセイに嫌われますよ!」
「ふふっ。ロイド様、プリシア王女には勝てませんよ。」
「全くだ。降参する。だから、早く勉強を終えて、お茶にしよう!」
「ロイド様、お勉強はまだ終わりません。大人しく待っていてください。」
「そんなーーーーーっ!!」
「お兄さまも、お勉強する?」
「それは嫌だ!」
「ロイド様はお兄様なのですから、プリシア王女のお手本になるべきです。この問いを、解いてみてください。」
「…………………………分かりません。」
「お兄さま、ここは、こうするんです。」
「おお! そうか、分かったぞ! プリシアは凄いな! さすが、我が妹!!」
「お兄さまは、もっとお勉強をしてください!」
「……すみません。」
私はロイド様とプリシア王女に出会えて、本当に幸せです。
「センセイ、お兄さまの家庭教師もしてください!」
「私のが年上だぞ!?」
「分かりました。スパルタでいきます!」
「えぇーーーーーっ!!」
「ふふふっ!」
こんなにも楽しく、こんなにも自然に笑える事を感謝します。
END
読んでくださりありがとうございました。




