幸せな家族
今日は、王様と王妃様、プリシア王女とロイド様と私の五人で食事をする事になっています。
王妃様とは何度もお会いしていますが、王様はお忙しく、婚約のお許しを頂いた時に一度だけお会いした事がある程度で……ちゃんとお話するのは、これが初めてです。
「緊張しているのか?」
「緊張しますよ……」
「センセイも、そんな顔をするんですね。」
そんな顔って、どんな顔!? そう思ったけど、今は聞く余裕もありません。
三人が既に席に着いていると、国王と王妃が後からやって来た。セシディが立ち上がろうとすると……
「そのままで良い。」
国王にそう言われ、そのまま腰を下ろした。
「セシディは緊張しているようですね。あなたが怖いのかしら?」
国王の方を見ながら、王妃が冗談めかして言うと、
「そんな事はございません!」
セシディはすぐさま答えた。
「セシディ、本当の事を言っていいのですよ。国王のお顔……怖いでしょう?」
「母上! セシディを、からかうのはおやめ下さい!」
「ふふふっ。ごめんなさいね。セシディの緊張をほぐそうと思ったのだけれど、セシディのナイト様に怒られてしまったわ。」
「王妃よ、息子や未来の娘をからかうのはやめなさい。セシディが困っているではないか。」
「センセイ、お父さまは怖くありませんよ。王妃さまの尻に敷かれてますから。」
「プリシア……またお前は、そんな事をどこで覚えるんだ。」
「プリシア、お母様と呼ぶようにいつも言っているでしょう?」
「はーい。おかあさま。」
「セシディは、嫌いなものはあるのか? 私はどうも、きゅうりが苦手でな。料理長に入れるなと言っているのに、いつも入っているんだ。」
「父上は好き嫌いが多過ぎます。健康の為にお食べ下さい。」
「………………………………」
「セシディ!? どうしたんだ!?」
「嫌いなものがあったのか!?」
「嫌いなら、無理して食べなくてもいいのよ?」
「センセイ……どうしたの!?」
セシディの瞳から、涙が溢れ出していた。
「……申し訳ありません。家族がこんなにも温かいものなのだと、初めて知りました。こんな素敵な方達と、家族になれる事が嬉しくて……」
お祖父様との食事は楽しいけれど、二人きりだったから。
「そうか……苦労したのだな。」
「セシディ、私の事は、本当の母だと思ってね。私もあなたを、本当の娘だと思っているわ。」
ロイドは席を立ち、セシディを抱きしめ……
「君はもう、ひとりじゃない。」
そう言いながら、頭を優しく撫でた。