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お願いだから死なないで  作者: 亜琉須 真愚奈
6/13

2年後

本編に入ります。

  2年後。

 皇帝軍が破れ、皇帝と第一王子が処刑されてから、帝国は大きな変貌を遂げた。

 帝国は王国へと名を変え、臣民は国民として扱われるようになった。

 かつての王族は、国民の許しが無くては国王に即位することができなくなった。

 議会も平民会と貴族会という2つの議会が存在し、平民の中から国政に関与する者も増えた。

 

 しかし、まだ2年しかたっていないのも事実であった。

 平民とはいっても一定の教養のある富裕層の平民であって、地方の農民たちの生活はこれまでと変わらないというのも現実であった。

 そこで議会は、17歳から20歳までの子女を王都から西に行ったところにある港湾都市——ルクルーゼに彼らを集め一定の教育を施すような制度をつくった。

 また、地方の農村にも、小さな学校をつくり、一帯の村から子供たちを集め、教育を施すような制度もつくった。

 これによって識字率などの一定の教養を村で学び、希望する者は港湾都市に赴いて、試験を受けて入る。というシステムを設けたのである。

 そのほかにも、税制改革や軍事の問題 etc...数えるだけで大変である。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 


 そのようなことを一手に引き受ける政府の長を務めているマキシウスは、机に上に突っ伏していた。


「つらい、嫌だ。もう、こんなの」


 2年しかたっておらず、当面の間は、王族であるマキシウスとルキウスが政治と軍事の2つを統括することになった。

 これには、一部から批判が殺到したが、10年後に選挙を行うことを条件に渋々承諾させた。

 しかし、王族とは言っても、マキシウスが本格的に政治にかかわったことはあまり無い。

 そのため、経験のある貴族や知識のある思想家たちを政府に加え、彼は彼らがまとめた案件に目を通して、そこから選んで、さらに詳しく政策を組み立てていくというようにしていた。


「陛下。よろしいでしょうか」

「なんだ? マルク男爵」

 

 マルク男爵が訪ねてきた。マキシウスはよれよれと机から体を起こす。

 マキシウスの政府で、彼の補佐役として彼を手伝っている。


「やはり慣れないな。その呼び方は」

「仕方ありません。投票でもあなたは国王としてふさわしいと認められたのですから」


 皇帝一派の処刑後、国王としてマキシウスが正式に即位した。

 貴族の中にはルキウスを推す声も上がっていたが、投票の結果マキシウスに決まったのである。


「ルキウスは?」

「軍総司令でしたら、この後、訪ねてくる予定です」


 マルクは自分の手帳を見て、それを告げる。


「わかった。ところで用事の件はなんだ?」

「はい、各地の区分けに関することなのですが...」

「それなら、サイラスが担当しているのではないか?」

「ええ、サイラス大臣は現在、北の方の視察にいっており、急ぎの相談ができたため、私に託したのです」

「なるほど。それで?」

「はい、役所の設置なのですが、東端のウルド砂漠をどのようにするかだそうです」

「あーーーなるほど」


 ウルド砂漠は、ガルロ荒野からさらに東にいった先にある大陸の内陸部にある巨大な岩石砂漠である。


「あそこからは、天然ガスとか、石炭とかがとれるんだっけ?」

「ええ、それで、ウルド砂漠の東は我らが王国領ですが、その中で、新しく設置する区画の話の中で、中心となる2つの県の中心都市が、領有権を主張しているそうなのです」


 彼の報告に、マキシウスはため息をついた。


「あそこはただでさえ、リザードマンや、ドワーフの住処が近い場所なのに」

「ええ、わかっていない連中です」

「その2つの都市の長を首にして、中央から役人を持っていこう」

 

 マキシウスの言葉にマルクは驚きを隠せなかった。


「よろしいのですか?」

「今は急を要する。あがき続けるなら。降りてもらうしかない」

「・・・・・・わかりました」

「どうした?」

「いえ、随分。変わったなあと」

「変わらなければ、このようなこともできないよ」


 吐き捨てる。マキシウス。大分疲れがたまっているようにマルクには見えた。


「陛下。少しはお休みに...」

「悪いが、あと少しで終わる。休憩はそれからだ」

「わかり、ました」

「うむ、すまないな。下がっていぞ」


 マルクはそれを受けて、「失礼します」といって、執務室を後にする。

 それと入れ替わるように、ルキウスが訪ねてきた。

 この国の新しくなった軍服に、薄水色の髪がよく生えている。

 眼鏡をしているため、鋭い目つきがより際立つように見える。


「兄上」

「ルキウスか」


 マキシウスはカップに入った紅茶を飲み干すと、姿勢を正し、机に肘をついた。


「で、どういう要件だ」

「あの〝男〟についてだ」

「〝彼〟か?」


 ルキウスの言葉にマキシウスの眉がピクリと動く。


「ああ、彼をどうするかで、私の意見を述べたいのだが、よろしいか?」

「ありがとう、私たちも、それには頭を悩ませていたのだよ」


 2年前の戦争でとらえられた元剣闘奴隷の〝彼〟。

 彼の体質が悩みの種となっていたのである。


「無論だ。あいつを処刑するにも、首を切り落とすなら、アダマンタイト級の断頭台が必要だ」

「現在の技術ではその量のアダマンタイトを集めるのに、一帯何年かかるのやら」

「ああ、だからこその提案だ」

「聞こうか」

「ああ、彼を————


 その内容に、マキシウスは驚いてしまった。


 学院に行かせてみてはどうだ?」



続きも頑張ります。

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