序章2 ②
すいません! 終わると思ったのに。
少し時間を巻き戻す。
皇帝たちが、剣闘奴隷を先頭に出すことを決定した3日後、闘技場では、その話をどこから聞きつけたのか。剣闘奴隷たちは嬉しそうにその話をしていた。
「これで手柄を挙げれば、俺たちは解放されるんだような?」
「ああ、これで俺らも自由だ」
普段の暗く、重い雰囲気の牢屋は、そのときは明るい声が響いていた。
「・・・・・・」
そんな彼らをよそに、〝彼〟は1人ベッドで横になっていた。
すると、向かい側の牢屋にいる男が声をかけてきた。
「おい、お前は嬉しくないのかよ?」
「・・・・・・・・」
「親や村の連中に顔向けがやっとできるんだぜ?」
「・・・・・・・・」
「けっ無視かよ。そりゃ、あんたは何回も勝ってるし、傷は回復するしな。こっちのほうが合ってるのかもな?」
「・・・・やは」
「ん?」
「俺に親はいない」
「⁉」
「故郷もない」
「そ、そうかすまなかったな」
男はそれっきり話しかけてこなかった。
ベッドに横になりながら、〝彼〟は話している彼らがうらやましかった。
(親か。いったいどんな人なんだろうか)
親という存在自体知らない彼にとって、そもそも親の意味が解らなかったのだ。
「お前たち!!」
突然大声がした。見ると、豪華な甲冑を纏った男と、彼よりは豪華ではないが、しっかりと甲冑を着込んだ者たちが見えた。その中にはこの闘技場の管理人もいた。
「ふん。奴隷どもが。俺が来るところがこんな見すぼらしい者共のところに来なければならんとはな」
中央の赤毛の男が顔をしかめる。
「第1王子殿下である。全員首を垂れよ」
管理人の男が言うと、奴隷たちは各々のやり方で頭を下げた。
「礼儀がなっていない、な!」
そういうと、王子は近くで膝間づいている奴隷の顔面を蹴り上げた。
「申し訳ありません。しつけがなっていませんでした」
「よい。早く済ませろ」
「御意」
管理人は再び彼らの方に顔を向けると。
「皇帝陛下の慈悲により、この戦闘での勝利すれば、貴様らを解放してやる」
「おお!」と奴隷たちが顔を挙げて嬉しそうに声を挙げた。
「1か月後。陛下は王子殿下を総大将に、再び反乱軍を討つために軍を動かされる。貴様らはそこで戦うのだ!」
管理人の言葉に奴隷たちの多くが強く手を握り締めた。
「自由のために戦え。以上」
そう言うと、王子と管理人たちは去っていった。
「おっしゃーーーーーー」
「本当だったんだ!」
「やるぞ、やってやる」
彼らが去った後、奴隷たちはさらに沸き立った。
中には涙を流すものまでいた。
自由になる日は近い。そのためにも勝とう。そう思いながらだ————1人を除いて。
一方で、
「首輪の魔術は残しておけ」
「もちろんでございます」
「馬鹿どもめ。誰が自由なんぞを与えてやるか」
「当然でございます」
「奴隷は、最後まで奴隷なのだ」
彼らの気持ちをよそに、王子たちはにやりと笑った。
修正します。後2話で本編です。すいませんm(__)m