夜の
外が少し明るくなってきたようだ。
そろそろ休むとしよう。
昔からの昼夜逆転生活も、僕にはちっとも苦にならない。
昼間の明るい時間に人と会う方が苦手だ。
みんなの目が気になるし、恐怖を感じる事すらある。
もちろん親しい人間など一人もいない。
誰とも会わずに生活ができたら…
僕はいつもそれを願っている。
一週間ほど前に部屋を探していて、偶然ここを見つけたのはとてもラッキーだった。
ほとんど陽の当たらない薄暗いこの部屋が、僕はとても気に入っている。
湿気で朽ちかけている古い木造で少しカビ臭いこの部屋はとても居心地がいい。
ここに来てからの一週間、僕は一度も外に出ていない。
このまま穏やかにずっと暗闇の中で生活ができるなら、それが僕にとっては一番の幸せだ。
僕は両親の顔を知らない。
今まで誰からも両親の話しを聞かされた事はなかったし、そもそも僕自信が両親の存在に興味を持つことなくここまで成長してきた。
でも…
きっと両親は殺されたんだと、小さい頃からなんとなくそんな気がしていて、今ではそれが確信に変わっている。
そう、僕の両親は殺された。
目が覚めると部屋は真っ暗だった。
洗わずに放置した食器が初夏の蒸し暑さで臭いを放っている。
僕はしばらくうつ伏せのままじっとしていたが、空腹を感じてテーブルの方に顔を向けた。
そしてのろのろとテーブルに向かって歩いていると、突然 ガー!というすごい音がして目の前が真っ白になった。
その強烈に明るい光に、僕の視界は一瞬で奪われてしまった。
動揺した僕が動き出すより早く、今度はシュー!っという大きな音とともに冷たい霧が僕の全身を包み込んだ。
パニックになった僕はすぐにそこから離れようとしたが、歩こうにも上手く前に進む事ができない。
呼吸をするのも困難だ。
声を出そうにも僕には声帯がない。
「かあちゃん! やったよ!」
「あははは お手柄だね 太郎ちゃん」
「うわっ 気持ち悪い! こいつひっくり返ってもまだ動いてる!」
「ほら太郎ちゃん、ちょっとどいてごらん」
スパン!!
仰向けになって苦しむ僕に、丸めた新聞紙が力一杯振り下ろされた。
お母さん…
これで僕もお母さんに会えるのかな…
でも僕は許さない…
こいつらを…
絶対に…
汚い人間を…