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序章8話 ラズマリア参上!

 さらに時間は進み15歳の春……というか今日から6日前ですね。この日はいつもより早くベッドを出てまず軽い運動をします。朝食を食べた後、家族や使用人の皆さんにお別れをしてから王都へと向かうため馬車に乗りました。ちなみに、お父様はお嫁に行く訳でも無いのに何故か号泣しておりました。


 ですが行かない訳には参りません。魔法を使える者は全て学院の魔法科に通わなくてはなりませんが、光魔法も例外ではありません。学費も免除されていますし、幾らかの給与も支払われるとなるともはや公務員に近い存在であり、お国の為にも気を引き締めねばなりません。

 決して、友達百人できるかなぁとか、部活は何にしようかなとかは考えていません。……少ししか。

 

 し、仕方ないんですよ!?

 わたくしの周りにいらっしゃる同世代の方は使用人の皆さんだけで、殺人的過密スケジュールのお稽古によりお茶会も参加出来なかったんですから、それくらいのささやかな夢を持っても許されるはずです!


 それと、お恥ずかしい話ですがわたくしは旅に出た経験も一度も無かったものですから、知らない街を巡るというのはもう心が踊って止まないのですよ!


 学業に必要なものや着替えなどの生活用品の他には多少の食料と水以外何も持っておらず、馬車を引く馬の休憩と飼葉も必要でしたので途中いくつかの街に立ち寄りました。


 ステリアで食べたパスタは絶品でしたし、ペルジャは街並みがとても素敵で何処もかしこも面白い物に満ち溢れていますね。領地は大好きですが、様々なものが見られる旅もやはりいいものです。


 今回同行してくださったのが、御者を兼ねた護衛のキースとロベルトに学生寮にてお世話をしてくださるメイドさんのリタというのもポイント高いですね。彼らでなくては流石にわたくしも御者の真似事や酒場で一緒に食事なんかはさせてもらえなかったでしょうからね。

 今朝なんかは寝坊もしてしまいました。昨晩はしゃぎ過ぎたようで、今は反省しています。おかげで出発が数時間遅くなってしまいました。


 さて、大変満喫しておりました旅もいよいよ終盤に差し掛かり最後の峠を越える事になりました。街で買ったお菓子をリタと摘みながら外を眺めていると、キースが慌てた声を上げたのです。


「お嬢、盗賊が出たみたいですよ! 先を進んでたどっかの貴族の馬車が襲われてますぜ!」


 外に飛び出してキースが指差す先に目を向けると、汚い格好の男達と槍や盾を持った護衛が鍔迫り合いをしていました。圧倒的に数が多いのは盗賊の方で、意匠の施された馬車を守る者達を翻弄し、その隙に盗賊の頭が護衛の裏に入り込むという鮮やかな流れです。


「どうしますか、お嬢様?」


 ロベルトが問いかけますが、助けるのは確定事項です。


「わたくしが出ますわ」

 

「お待ちください。自分達が何とかいたします。一応、護衛として来てるのに、お嬢様の手を煩わせたとあれば名折れです」

「お二人の実力を疑ってはいませんが、これはわたくしでないと間に合いません」


 ここはうねる山道の中でも丁度見通しの良い尾根です。見えこそしましたが決して近くはありません。その点わたくしは高速飛行可能なスーパー令嬢ですから、瞬く間に接近できます。


「馬車はこのまま走らせてせください。皆さんが向こうに着くまでに片付けて置きますから」

「了解致しました。ご武運を」


 リタが特に心配した様子はなく、馬車の上に戻っていきます。

 

 再び走り出した馬車を見送りながら魔法を発動すると、全身から力が湧き上がると共に光で作られた翼が背中から広がります。身体能力の向上と空中機動が可能になるこの魔法ですが、鳥のように羽ばたいて飛ぶ訳ではありません。強いて言うなら前世のアニメに出てきたスーパーロボットがスラスターで動くようなイメージなので、たぶん翼は飾りですね。

 

 魔法でするするっと上昇すれば馬車の扉が破られたのが見え、わたくしは全力で加速します。風を切り裂きながら空を翔け、敵勢力の上空で静止してから名乗りを上げます。


「オリハルクス家が長女ラズマリア!」


 相手が盗賊とはいえ無言で襲い掛かるのはわたくしの流儀に反します。

 しかし、ここで困った事になりました。相手も名乗りを返してくださると思っていたのに、みんなしてこっちを見て無言ではありませんか!?

 き、気まずいですよ。実は名乗りにも礼儀作法とかがあったんでしょうか?

 先生からは非戦闘時のマナーしか教えて頂いてなかったのが悔やまれます。


 やむを得ません……開戦です!


 こうして、わたくしはエリさんのピンチに馳せ参じたのです。

 次回から三人称になります。

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