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序章1話 悪役令嬢始動

 私、エリーゼ・テラティアは転生者だ。


 それまではぼんやりしていた意識が急に鮮明になったのを覚えている。あれは3歳の時にこの紅蓮のような髪を初めて縦巻きロールにした日だ。鏡に写った自分の姿を捉えた瞬間、電気が走ったように膨大な情報が頭の中に溢れ出した。


 強烈なめまいが身体を襲い、足元がおぼつかなくなって、床に倒れ込む。近くにいたメイドが何かを言いながら近づいてくるが上手く聞き取ることが出来なかった。


「わたくし……は……、()は……悪役……令嬢?」


 そう呟いてから次に見たのは夕暮れに染まる部屋と泣きながら駆け寄って来た先程のメイドだった。どうやら半日ほど意識を失ったらしい。


「エリーゼお嬢様、どこか痛いところはありませんか!? どこか変わったところはありませんか!? お腹も空かれてますよね? 何か食べられますか?」


「……一度に聞きすぎよ、タニア。身体は特に問題ないから、温かいものを持ってきてちょうだい」

「はい! 命に代えましても!」


 まだまだどこか幼さも残る少女が膝下まであるメイド服を揺らしながら勢いよく部屋を飛び出していった。


「……スープ一杯に重すぎるわね」


 タニアは今年で12歳。メイド長の娘で私の専属メイドとして、今年から仕えてくれている。彼女を歳の離れた姉のように思っている自分は果たして誰か?


 前世の記憶が蘇った今も私はエリーゼであると自身を認識している。だから、前世と関わりの無いお父様やお母様の事も好意的に思っている。かと言って、3歳児の思考そのものかと言われると、それはノーだ。


 よし、都合よく考えるとしよう。エリーゼは他人の人生経験28年分を得た。故に思考は達観してるが本質は変わらない。つまりここにいるのは精神年齢31歳のエリーゼってことよ!

 もう起きたことを悩んでも仕方ないのは間違いない。というか、切り替えなくてはいけない理由がある。


 前世の記憶が最初に教えてくれたのは自分が前世で何度もプレイした乙女ゲームである聖域の(メイデンオブ)乙女(サンクチュアリ)に登場した悪役令嬢……エリーゼ・テラティアであると言う情報だった。


 ラズマリア・オリハルクスという辺境伯家の少女がヒロインでかつてオルヴィエート王国を救った聖女様のみが使うことを許された神聖なる光魔法の力に目覚めたため王立学院に通うことになる。物語の舞台もこの学院の1年生、入学時点で15歳から始まる。

 深窓の令嬢という言葉が相応しい容姿の彼女は、見た目通りの争いを嫌う優しい性格ながらも聖女の責務を全うするために努力を重ねていく。そして、瘴気に侵された村や町を救う為に奔走し、攻略対象達と共に成長していく。

 ゲームだと一周目で攻略可能なキャラクターは4人おり、全員が聖女の仲間に加わって、戦闘に参加する。


 辛く苦しい場面でも絶対に折れずに、周囲を勇気づける主人公(ヒロイン)の姿に心を奪われた攻略対象は王都が襲撃される最終局面の大きな瘴気の源を浄化するシーンではその身を挺して戦い勝利する。


 そして、エンディングを迎え、攻略対象と幸せな日々を送ったとされていた。

 そのエンディングの中でスチルすらなくチョロっと死ぬのが私ことエリーゼ・テラティアである。

 

 王子ルートでは卒業パーティにて婚約破棄を言い渡され、聖女を害した罪で斬首。


 騎士ルートではヒロインを殺そうと目論むも返り討ちにあい、心臓を貫かれる刺殺。


 魔術師ルートでは魔術で焼却されて、塵一つ残らなかったため一応の行方不明扱い。


 射手ルートでは突然の落雷に撃たれ感電死。


 全てのルートで必ずついでのように死ぬ運命にある。ゲームをしてた時は読み流していたけど、自分がその立場になると理不尽極まりない死因ばかりだ。そもそも、なんで悪役令嬢が全てのルートに登場するのよ。(エリーゼ)になんの恨みがあるんだと、製作スタッフを問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。

 

 ゲーム通りならあと15年後にその絶望の未来がやってくる。回避するために何をすればいいかわからないが、時間はあるのだから破滅を回避してみせるわ!

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