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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
99/266

ちょっと面倒ですわ

「戻ったか! 剣聖イチよ!」

「おーう。アイネを連れて戻ったぞ!」

 俺達はイチの持っていたアイテムで異世界に来ると、やたら荘厳な場所に出て来た。ここは教会か? ファンタジーとかで見る教会の内装って感じがする。日本ではまず見ないな。

そしてそこで見知らぬ神官っぽいおっさんに出待ちされていた。金髪で碧眼、年齢は40代後半くらいか? 多分。

 っていうか剣聖とかゆうカッコいい称号出て来たな。早速異世界感だしてくるなぁ。

 まあ、それがイチを指しているのはビックリだが。

「それで、そちらは……勇者様と……誰だ?」

 おっさんは俺達の事を訝し気に見る。

 まあ、勇者に見知らぬおまけが四人も付いてたら、そうなるか?

「アイネの兄と、なんか変な連中だ」

「ユウキ、この犬っころ殴っていいかしら」

「駄目に決まってるだろ」

 変な連中と呼称されて、イラっとしているシュエリアだが、正直言って変な奴で間違ってないと思ってしまった俺が居る。

「あたし達と一緒に魔王と戦ってくれるらしい」

「なるほど……ですがそちらの……黒髪の女は魔族では?」

 トモリさんをおっさんが睨む。嫌われてんなぁ魔族……。

 というかイチもそうだったけど、なんでこの世界の人は一目で魔族だってわかるのだろうか。不思議だ。

 とは言え魔族なことしかわからないようだし下手な事を言わなければ大事にはならない……のか? 魔王なんて口が裂けても言えないな。

「アイネの友達らしいから、大丈夫だ」

「勇者様の……そうですか……」

 おっさんはまだ何か思うところがあるようだったが、とりあえずは納得してくれたようだ。

「それで、状況はどうなったんだ?」

「えぇ、イチ殿が異世界に赴いている間に、合計で七人の魔王が現れました……今、大陸全土にある国々の連合戦力で闘っていますが……ほとんどの国家は陥落し、残るは我が国のみ。人類の生存圏は少なく、後がない状態です」

「そんなことに……クソッ! あたしがもっと早くアイネを見つけられれば……!」

 なんか、凄いことになっているっぽい。

 七人の魔王に、残っている国がここだけ、人類はもう崖っぷちのようだ。

「なんか、思ったよりメンドクサイ状態ですわね。帰っていいかしら」

「良いわけないだろ……お前どういう神経してんだ……」

 この状態で見捨てて帰るとか、どういうことだよ。

「……でも七人も魔王と戦ってたら、滅茶苦茶話数使いますわよ? 同じモチーフの話なんて最長で三話くらいしかやらないわたくし達が、七人の魔王とか戦えるわけないでしょう。なんですの? 『異世界救済編』とか始めるんですの?」

「凄くどうでもいい理由で戦えないんだな、俺ら」

 コイツ、今こうしている間にも命を懸けて戦っている人達が居ることを、少しも考えてなさそうな気楽さだな……。

「……なんですのその顔は」

「いや? シュエリアならすぐにでも魔王を全滅させられるんだよな、と思ってな」

「……そんなことして何の得があるんですの? 本来この世界のことは、この世界のみでやるべきですのよ? それを手伝ってやりにきた、それだけですわ。文句言われる筋合いなんてないですわ」

 まあ、そう言われたらそうなんだけど。でも俺としてはアイネが世話になった人がいる世界なら何とかしてあげたいし、それは出来るだけ早い方がいいと思う。

 もちろん、俺には出来ることは少ないだろうが……その内の一つに、可能性を感じている俺だったりする。余りにも他力本願な考え方だが。

「やってくれたら、晩飯はしばらくシュエリアが好きな物作ってやってもいいんだけどな」

 これが俺なりの可能性。シュエリアという最強戦力との交渉。と言っても、俺ができるのはシュエリアが好むであろう取引材料の提案くらいで、高度な交渉技術とかは無い。

 しかしシュエリアもシュエリアで、この展開はある程度予想していたのか、嬉しそうにニヤっと笑った。

「何でもするって言いましたわね」

「いや、言ってないよ?」

 何を言い出すんだコイツは。言ってねぇよ。そんな露骨に付け入られそうな発言、恐ろしくてできないわ。特にコイツには。

「チッ……仕方ないですわねぇ。ユウキにこれをあげますわ」

「なんだ?」

 シュエリアが取り出したのは……両手で抱えるサイズのサイコロだった。

 最少が一で、最大が六のデカさ以外は普通のサイコロ。これをどうしろと? まさか強いのか、このサイコロ。

「それを使って、出た数字の分だけ魔王を倒してあげますわよ」

「……マジで言ってんのか」

 コイツ、そんなところまで遊ぶ気なのか……はぁ……まあ、知ってたけどさ、こういう奴なの。

「じゃあ使うけど、良いんだな」

「倒した数につき一週間好きなご飯にしてもらいますわよ」

「はいはい」

 という事で、イチと話し込むアイネとおっさんを横目に、黙ってみているトモリさん、アシェから妙なプレッシャーを感じながら、サイコロを投げた。

 サイコロを投げると、何故か、何処かから某おはようからおやすみまでの番組で流れるあの曲が流れた。まさかと思うがコレやりたさにこのデカさのサイコロなのか? 馬鹿なのか?

 まあ、別にいいけども、コイツに緊張感という物は無いのか? 無いんだろうな。少なくともこの程度では。

「……六だな」

 サイコロは数回転がると、一で止まりそうになったが。何故かそこから急に二回転して六が出た。……おい。

「よし! ……じゃなかった。あーもう、仕方無いですわねー。仕方ないから六体倒しますわー」

「……あぁ、そういう」

 なんか棒読みっぽいシュエリアを見て、俺は思った。

コイツ、このサイコロに仕込みしてただろ。

 よく考えたらこのサイコロ、高い数字が出る程『お互い』にとって得だ。

 そもそもシュエリアに掛かれば魔王なんて物の数じゃないだろうし、倒せば倒すだけ食事が好きにできるんだから、コイツからしたらこの取引はただただボーナスでしかない。

 だから恐らく、最後にサイコロが不自然に転がったのはコイツの仕込みだ。こんな事するくらいならバレないようにいくらでもやれそうなもんだが……まあいいや。気にしても仕方ない。

「んじゃ、やりますわね。ワールドステータス。検索、職業魔王……あぁ、この七人……上から順に六人……デリート……はい、終わり」

 どうやらまた世界を弄る魔法を使ったようだ。鬼畜かコイツ。

 以前はコレは使わないようなことを言っていた気がするんだが……いやまあ、いいけどさ、助かるし。コイツが本気で暴れたら味方にまで被害出そうだし。

「せめて戦ってやれよ……と思わなくもないが、助かったよシュエリア」

「六週間分の夕飯は好きなのを注文しますわよ?」

「おう、それでいいよ」

 いつもは俺かアイネが最低限の栄養バランスを加味しながらも、その日の気分で作ってるからな……別にそこまでこだわりは無いし、いいだろう。

 問題は本当に倒されたのかだが……確認方法とかあるんだろうか?

「それで、そっちは何話してんですの」

「七人の魔王に対する対策だよ」

 どうやらイチとおっさんは真面目に魔王の対策を考えていたようだが、それはこっちでほとんど片付けてしまったんだよな……シュエリアが。

「わたくしが消したから、もう一体しかいないですわよ」

「……は?」

 俺とシュエリアのやり取りを見聞きしてないイチが「何言ってんだこの馬鹿は」って顔をしている。

「何を言っているのですかな、この愚か者は」

 いや、ホントに言ったし。言ったのはおっさんの方だけど。

でもまあ、普通そう思うよな。

 なにせ異世界チート物ですらこのレベルのガチガチのチーターは居ないと思うくらいだ。魔法で世界を弄るとか、外部ツール使ってゲームデータ改造してんのと変わらないし。これが本当の意味でのチートだと思う。いやホントに。

「愚か者って……そこまで言うのなら、確認したらいいですわよ。できないんですの? 魔王の所在の確認とか、探知」

 シュエリアの言葉におっさんが返答する。

「戦線の後方に居る高位神官なら、悪しき魔王の存在を探知できているはずだが……」

「ならソイツに探させるといいですわ。もう既に一体の魔王しか残っていないから」

 そう言ってシュエリアはドヤった。本当にコイツ居るとバランス崩壊が酷いと思うけど、おかげで助かってるし、良いことにしておこう。

「……とりあえず、皆さんで後方部隊と合流しましょうか」

 おっさんの言葉に皆同意し、後方部隊の陣地まで移動することになった。

 俺達の居た場所は本当に教会だったようで、王都の城近くにあるモノだった。そこから王都の外壁に向かい、外に出るまで十分程。さらにそこから十五分ほどで野営地に着いた。

距離的にはさほど遠くなかったわけだが、ここが後方部隊の配置場所と考えると本当に人類は追い詰められているようだ。

「レミオ様! 魔王が!!」

陣地にあったテントの中でも、特に大きい物に通されると、10人程の人が詰めていて、その中の一人、金髪の青年が声を掛けて来た。

 というか誰だ、レミオ。ロメンか、レミオロ〇ンなのか。

「レミオロ〇ンですの?」

 どうやらシュエリアも俺と同じことを考えていたらしい。

なんか恥ずかしいな。

「誰だ貴様は!」

 シュエリアの下らない(俺も考えたが)発言に、青年が突っかかる。

「よせ、アレックス。彼女たちは勇者様の仲間だ」

「そ、そうでしたか、申し訳ありません、レミオ様」

 どうやらレミオ様とやらは俺達を出迎えたおっさんらしい。様ってことは、偉い人なんだろうか。

 ここにいる人たちも、皆いい服、いい鎧を着ている人達ばかりだし、偉い人の集まりかな?

「それで。魔王がどうした」

「それが……信じられないことに、各戦線に現れていた七体の内、六体が急に消滅したと神官達から報告が上がりまして……」

「本当だったのか……」

 おっさ……レミオ……さんの反応に、アレックスが少し不思議そうにする。

「本当だった、とは?」

「いや…………」

 レミオさんは言い淀むと、チラっとシュエリアの方を見た。

 シュエリアはと言えば、言った通りだろうと言わんばかりに満足気なドヤ顔で胸を張ってる。きっと称賛されたいんだろうなぁ……自信家な上に自分大好きだから……。

「勇者様…………が倒したのだ」

「おぉ! 勇者様が!!」

「え、ちょっ!」

 思いもよらぬ発言に、シュエリアが慌てる。

 ちなみにレミオさんの発言は、途中やたら小さい声だったから聞こえにくかったが「勇者様の仲間が」となっていた。意図的に仲間の部分は小さくされていたけど。まあ、嘘は言ってない。本当のことも言ってないから、完全に騙してるけど。

 しかしそんなことにも気づかないアレックスはアイネに詰め寄った。

「流石勇者様です! 魔王なんて敵ではないのですね!」

「にゃっ?! えぇ……っと~……な、仲間のおかげですよっ!」

 アイネも、シュエリアの手柄だとハッキリ言いにくかったようで、勇者っぽい言い方で誤魔化している。

 これが勇者が魔王を一騎打ちで打ち取った後とかだと、謙遜とか、仲間想いとか、色々受け取りようがあるが、本当に仲間の(シュエリアの)おかげなので、何かこう、これじゃない感が凄いある。

「そうですか……いや、そうですね。勇者様とお仲間の方々との絆の勝利ということですね!!」

「うぇえっ? ……あー……はいっ!」

 どうやらアイネはああいうテンションで押されるのに弱いようだ。

 そしてそれを見ていたシュエリアは、最初こそ納得してないようだったが、途中から面白くなってきたのか、へらへら笑っていた。

「それで、残り一体の魔王はどこに?」

「戦線の中央、その奥に陣取っているようです」

「その他の戦力は」

「広域に広がる魔物の軍勢が五百万程、それを五魔将が百万ずつ率い、その奥に四天王も確認されています。対するこちらは連合軍、八十万の兵力です」

「魔王を倒したとはいえ、圧倒的劣勢か……」

 話を聞いて、こんなギリギリ過ぎる展開になんとか間に合うなんて奇跡だなとか、ふと思ってしまった。

 正直、義姉さんに話を聞いて、直ぐにシュエリアに頼まなかったら、こちらに来た頃には全滅していた可能性も考えられる。

 いつも振り回されてはいるが、こういう時だけはシュエリアの力には感謝だ。

 などと思っていると、そのシュエリアが俺の肩を叩いて、小さな声で語り掛けて来た。

「ねぇ、帰っていいかしら?」

「どうしてそうなった……」

 シュエリアには魔王を倒してもらったし、あまり文句ばっかりも言えないが、それにしてもどうしてそうなってしまったのか。

「四天王とか五魔将とか数出してその分見せ場増やして、話数も増やす気満々ですわ。帰っていいですわよね?」

「なら倒してくれてもいいんだぞ?」

「……倒したら何してくれるんですの?」

 ここでも交換条件か……うーん。

「ちょっと待って貰えないか、アイネとかに相談したい」

「……? ……いいですわよ」

 シュエリアに許可をもらうと、まだ対策について話し合っていたアイネ達に声を掛けた。

「なあ、敵の幹部とか、兵力……どの程度減れば、今の戦力でも戦いになると思う? これからシュエリアに適当に間引いてもらおうかと思うんだけど」

「間引く? 何を言っているんだ、貴様ッ――」

「むっ! 兄さまにそういう態度、止めてくださいっ!」

 俺の言い方が気に障ったのだろう、アレックスが俺に掴みかかろうとしたが、アイネがそれを阻止した。

「レミオさん、どう思いますかっ」

「むぅ……それは分らんな。将軍はどう思う」

 アイネが俺の代わりに聞いてくれたが、レミオさんも分からないと言う。と言うか本当にこの人何している人なんだろう。来ている服的には神官? っぽい気がしないでもないが。

 今話を振られた将軍さんはガッツリ重装って感じで如何にも武人って感じだが……。

「敵の軍勢が半分でも少なければ、何とか持ちこたえられるでしょうな。勝つならば……こちらの数を下回らないようなら、厳しいでしょうな。相手の幹部は一体でもこちらの軍勢を滅ぼせる程強いですから。前に出てこられたらそこでおしまいだ」

 将軍(?)らしき人の言葉を信じるなら、それこそ全部シュエリアにやってもらおうってことになりそうなんだけど……。

「トモリさん、アシェさんっ。相手の幹部をお願いできませんかっ」

 そうなんだよな、こっちには手伝う気がほとんどないシュエリアと違って、それなりに手伝ってくれそうなアシェと、アイネの為なら頑張ってくれそうなトモリさんが居る。

 二人に相手をしてもらえる敵が多ければ多いほど、シュエリアに頼むことも減り、交渉もしやすくなる。

「つよさ~は~どのくら~い~でしょうか~?」

「四天王だと私が魔法を使わないで戦うと、互角くらいですっ」

「なるほ~ど~」

 それはどのくらい強いのだろうか……アイネは普通に身体能力も高いけど、魔法はかなりヤバいのが使えるらしいから……それを縛って互角なら、大したこと無い……のか?

 どちらにしても俺如きじゃ兵一体にすら勝てないだろうけどさ。

「それ~なら~行けます~ね~」

「アシェさんはどうですかっ?」

「ん? あー、シュエリアより弱いんでしょ? なら余裕ね」

 アシェの方の強さ、勝てる基準はシュエリア基準のようだ。今の発言、シュエリア以外になら負けないと言っているようなもんだ。運動音痴の癖に強いとか……。

「なら、五魔将、四天王は残っていても、任せられますかっ?」

「いいわよ」

「はい~」

 ふむ、なら後はやたらと多い数をどうにかできればいいのかな。

 俺がシュエリアに、敵戦力の削減をどう頼もうか考えていると、将軍が口を開いた。

「勇者殿、その方達は信用できるのですかな? 魔族も混じっているようですが?」

 やっぱりそこは気になるんだなぁ……とは言え、トモリさんを置いてくる訳にもいかなかったしなぁ……アイネの為に来てくれている訳だし。

「トモリさんは私の親友ですっ! トモリさんを信じられなかったら兄さましか信じられませんっ!」

 うん、そう言ってくれるのは嬉しいけど。そこはほら「誰も信じられない」くらい言って、トモリさんへの信頼を強調してもいいんだぞ? とか思ってしまう。

「そうですか……であれば、問題は無いですかな」

 そう言ってあっさり引き下がる将軍。さっきから思ってるんだけど、皆アイネに対する信頼度高すぎねぇ?

 何やったんだ……アイネ……。

「ということで兄さまっシュエリアさんには五百万の敵兵をお願いしたいですっ」

「ん、了解……ってことで、魔族を五百万程、倒して欲しいんだけど」

 俺が語りかけると、いつの間にか取り出していた漫画を読みながら何かをチューチュー飲んでいるシュエリアが居た。椅子まで出してやがる。こ、コイツ……。

「雑魚狩りねぇ……で、何してくれるんですの? ユウキは」

「……シュエリアのいう事、何でも聞くよ」

「今なんでもって――」

 と、そこまで言ってシュエリアが驚いた顔で固まって、その後表情が二転三転、最終的にまた驚いたような顔で口を開いた。

「え? ねえ?? 本当に今、何でもって、言ったんですの?」

「言ったよ」

「ま……マジですの?」

「おう」

「…………」

 シュエリアは俺の顔をジッと見つめると、しばらく考え込んだ後、こくんと頷いて、言った。

「じゃあ、それは後でお願いするとして。いいですわよ、その覚悟に免じて、力を貸してあげますわ。ただし、これ関連の頼まれごとはここまでですわよ? これ以上差し出せる物もないでしょう」

「あぁ」

 流石に、何でも聞くと言った以上、これより上で差し出せる物っていうのも思いつかない。

「んじゃ、外、出ますわよ」

 そう言ってシュエリアは天幕を出た。

「とりあえず、適当に倒しますわね」

「適当にか?」

「えぇ、適当に、キッチリと500万倒しますわ。言われた通りにね」

 それだと実際の数が500万より多かった場合いくらかは残るのか……まあ、それでも十分過ぎるだろう。流石にこれ以上展開が変わって敵が増えると言う事は……無いと思いたい。

「じゃ、行ってきますわね~」

 そう言うと、シュエリアは魔法で飛び上がった。

 なんだ? あの世界を編集する能力で消すんじゃないのか?

 飛び上がったシュエリアは見えなくなるくらい高く飛んで、そして、しばらくして降りて来た。

「飛んで、何してたんだ?」

「ん、目視で魔王と四天王をマークして、その辺に攻撃が及ばないように戦場を燃やして来ただけですわ」

「……なんで燃やしたんだ?」

「見映え?」

「……聞いた俺が馬鹿だった」

 本来なら消せばいいんじゃないかと思ったんだが、なるほど、見栄えか。

「同じ技ばかりでも飽きるし、消すにしても対象を括るのもメンドクサイし。何より、たまには映える技もいいもんですわよ?」

「さいですか」

「さいですわ」

 まあ、結果は同じだから、良いんだけど……ん、いやまてよ?

「なあ、マークしたのは魔王と四天王だけなのか?」

「ですわよ」

「五魔将は」

「……まあ、おまけで焼けているかもしれないですわね。そのくらいは気にしなくていいでいしょう?」

 これはシュエリアなりのサービスなのか、何なのか。単に早く帰りたかったとか、面倒だった可能性もあるけど。

 兎に角、五魔将まで倒してくれた……かもしれない。

「それじゃ、後はわたくしは適当に見てますわ。あ、でも。四天王の一体はわたくしが貰いますわよ? 最初に言っていたように、適当に遊ぶから」

「お前もう十分魔族を倒してるけどな……」

 とは言え、そこは俺のお願いとは別枠なんだろう。多分。

 それでもって、この後俺達は五魔将が消滅したのを確認、こちらの兵力は残りの魔族の殲滅と非常時の予備戦力、防衛戦力に。

 そしてシュエリア、トモリさん、アシェの三人は四天王の内三人、残り一人をイチと、他の仲間で。魔王はアイネが相手をすることになった。

 最後に俺はシュエリアに「どうせ不死だし、アイネの傍で応援でもしてあげたら喜びますわよ、多分」とか言われて、アイネにも「兄さまが居てくれたら百人力ですっ」なんて言われたので……まあ、死なないし、シュエリアが居るから最終的には何とかなるかな……とかいうノリでアイネに付いていく事になった。なんもできないけど。

 …………俺も大分シュエリアに毒されていると、本当に思った。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は来週金曜日18:00です。

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