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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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変わるモノですわ

申し訳ありません。

更新ミスがありまして気づいてから手動更新したため更新が遅れました。


「ユウキ、実は今日、わたくしはいつもと違うのだけれど、わかるかしら?」

「そりゃわかるよ、昨日より1日歳を取っただろ?」

「殴りますわよ?」

 そう言いながら隣に座ったまま俺の足を踏むシュエリア。コイツ、なんて卑怯な。

「いってぇ……殴ると言って上半身に意識を集中させて足を――ぐはっ?!」

「足を踏んだから殴らない……と見せかけて殴りますわ」

「卑劣過ぎる……」

 結果的に足を踏まれてその上殴られた。一般人相手にクソ強キャラがコンボ決めるとか殺す気か。

「ユウキ、思考に返事して悪いとは思うけれど、不死は一般人じゃないですわ」

「そういえばそうだな、死なないんだった」

 でもそういう問題でもない気がする。死ななくても痛いものは痛いし。

「で、何が変わったかわかるかしら? 次に間違えたらち〇こ切り取ってケツの穴に差しますわ」

「猟奇的過ぎる! もしかして俺大事な回答権一回無駄にした?!」

「わかったらさっさと答えやがれですわ」

「え……えぇ……?」

 今までと違うところ……違うところ……。

「昨日とTシャツが――」

 俺が回答しようとすると、もう既に間違っているのか、シュエリアが無言でナイフを取り出した。

「――違うのは当然として……えぇっと……」

 やっべぇ……全然わかんねぇ。でも何か……何か違うんだよな? 観察すればわかることなんだろうか……?

 髪はいつも通りに見えるし、特にアクセサリーとかも見当たらない……身長が伸びた? いや、そういう事じゃない気がする……。

 わ、わからん……そして俺を見るシュエリアの眼がとてつもなく恐ろしいモノになっている気がす…………ん?

「カラコン?」

「チッ――正解ですわ」

「なんで正解なのに舌打ちされたの俺」

 でもまあ、とりあえず正解したからスプラッタは避けられたんだけど。

 にしてもカラコンか……シュエリアの眼はいつもは鮮やかな蒼だけど、今日は空色っぽい。せめて赤とかになってればわかりやすかったのに……。

「ユウキはホント、アレですわね、女心を理解する気が無いですわよねぇ」

「そんなことは無いぞ、お前が何か変化に気づいて欲しいのは理解してたさ。してたけど、なんつうの? ボケた方が面白いし、シュエリアが喜ぶかなぁと思っただけだって」

「ふうん。じゃあもし、わたくし以外が同じようにどこ関わっても、その時はちゃんと気づいてあげられるんですの?」

「そりゃあ……よく知ってる人ならな?」

「そう……まあ、そういうと思って、用意はしてあるのだけれど」

 そう言ってシュエリアが手を叩くと、部屋の奥からアイネ、トモリさん、アシェ、義姉さんの4人が出て来た。

 なんか面倒事の予感が凄くする。

「さて、という事で、このいつものメンバーの、いつもと違うところを当ててもらいますわね?」

「ぐっ……そうきたか……」

 なるほど、ここまでシュエリアの掌の上という訳だな。

「ではまずアイネから行ってもらおうかしら?」

「兄さまには余裕ですよっ! いっつも一緒に居ますからねっ!!」

「お、おう。もちろんさ……」

 そう言って向かい側のソファに座るアイネをじっくり観察するが……え? さっぱりわからないんだけど?

「わかりましたかっ?」

「んー? うーん、アイネ、こっち来てもらっていいかな」

「膝の上ですかっ!」

「お、おう」

 とりあえずもっと近くで観察すれば何かわかる……かもしれない。

 という訳で、膝の上に乗ったアイネを観察開始したのだが、うん、やっぱりわからん。

「撫で心地も同じだし、毛並みもいつも通り……目鼻口も……はっ! まさか下着が――」

「違いますっ!!」

「……違うのか」

 だとしたらなんだ、本当になんだ。女子の変化ってこうも分かりにくい物か……。なんかむしろ敢えてわかりにくい変化にしている気がしないでもないけど。

 とりあえず落ち着こう……深呼吸だ……何か落ち着いて探せばきっとだな……。

「すぅー……はぁー……すぅー……ん? アイネからスッキリとした花のような甘い香りが……?」

「正解ですっ!!」

「お? おぉ」

 どうやらアイネの変化は香り……だったようだ。しかしこれ、完全にまぐれ当たりである。というか視覚でわかる変化じゃないよね。これアリなのか?

「シュエリアさんに香水を貸してもらったんですっ!」

「ふむ。オイ、シュエリア。お前絶対分かりにくいようにしてるだろ」

「はぁ? そんなことないですわぁ? 言いがかりは止めて欲しいですわねぇ? 別にぃ? ユウキがアイネの変化に気づいてあげれなくて泣かせたらボロクソ言ってやろうとか思ってないですわぁ?」

「うっわ、腹立つなぁこのクソエルフ」

 これだけ思いきりイヤらしい笑みを浮かべておいて、明らかに嘘ついてるって言うか、白々しいって言うか。ほぼ自白に近い発言をよくできるな。

このヤロー完全に俺がアイネの変化に気づけなくて困るところ見たさにやりやがっただろ……。

「はぁ。次はトモリですわね」

「なんで溜息……ま、いいけどさ」

 この分だとトモリさんも分かりにくい変化なんだろうなぁ……と。そう思いつつトモリさんに目を向けるが……うん、え?

「トモリさんがYシャツだと……」

「正解~です~」

「しかもそれが正解だと?!」

 なんつう事だろう、この人隠す気ねぇ。いや、隠す必要ないけどさ。いやマジか。

「ユウキ、空気読んで欲しいですわ。KY過ぎますわよ」

「この場合空気読んでないのはトモリさんでは……?」

 いくらなんでもこれは……わかりやすすぎるし。自分で言っといてなんだけど、変化というにはこれは……どうなんだ。

「イメチェン~です~」

「そ、そうですか。良いですね。でもサイズ大きくないですか?」

「胸は~キツイ~ですよ~?」

「えっと……はい。そうなのかもしれないんですけど……」

「まあ~ゆっ君~のです~からね~」

「何故俺のを着てるんですか……」

 カミングアウトしたトモリさんがなんか嬉しそうだし……え、何。なんで俺のシャツ着て嬉しそう……はっ、彼シャツってやつか!!

「トモリさん、それ脱いだらそのまま返してくださいね」

「? はい~」

「駄目ですわよトモリ、この変態にそのまま渡したら。一回浄化の炎で焼いた後に新しいの作りますわ」

「オイ待て、なんで変態扱いなんだ。というか燃やすな」

「ユウキはトモリが来た服を入手したいだけでしょう? キモイですわ」

「違うわ。てかキモくないし。別に直に着てるわけでもないだろうしいいだろ」

「裸~Yシャツ~ですが~?」

「トモリさん、それ洗わずに返してくださいね」

「オイ変態、殺しますわよ」

「いいだろ?! トモリさんだってハーレムの一員なんだから!」

「ならわたくしの服やるからそれでいいですわよね?」

「年上サキュバスのトモリさんだから良いんだろうが!!」

「え…………凄く清々しいクズですわね」

 なんかシュエリアからゴミと言うか、汚物を見るような、むしろ視界に入ったことを嫌悪するような眼を向けられて……あ、目を逸らされた。

「ま、まあ冗談はこのくらいにして……次は? アシェか?」

「ん、そーね、いいけど、冗談なの? なんかトモリ嬉しそうだったけど」

「え、じゃあ貰っとこう。あ、返してもらうって意味な」

「別にそこ気にしてないけど……余計にキモイわ」

 シュエリア程ではないにしろ、ちょっと嫌そうな顔を向けて来るアシェだが……そんなアシェにも変化があるらしい、さて何処だろう。

「あ、わかった」

「え、本当? わかりにくいかと思ったんだけど――」

「胸にパッドが入って――へぶっ?!」

「先に言っとくわね、殴るわ」

「も……もう殴ってる……」

 言い切る前に思いっきり顔パンされた……。

という事は、どうやら違ったようだ……今日はいつもより胸が大きく見えると思ったんだけど……。

「そ、そうだ、立ってもらえるか?」

「ん? 良いけど……」

「なるほど、いつもより身長が高い、つまり上げ底――ぐっ?!」

 言い切る前に、今度は鳩尾を蹴られた。

「事後報告だけど、蹴ったわ」

「……知ってる……」

 蹴られた時にわかったけど、どうやらヒールだったようで、つまり上げ底でもなかったようだ……となると……なんだろう。

「わかんね」

「シュエリア、この馬鹿締めあげてもいい? 失礼な発言かますだけかまして諦めやがったんだけど」

「締めても悲鳴しか出ないですわよ?」

「十分よ」

「なら好きに――」

「待った待った! えぇっと、アレだ! そこ、爪! ネイルアート!」

「……一応聞くけど、わかっててボケてたの?」

「え、合ってんの?」

 なんとなく気を逸らす為にそれっぽいことを言っただけだったのだが当たっていたらいい。

「…………シュエリア、コイツ絞め殺してもいいかしら」

「悲鳴も出ないですわよ?」

「問題ないわ」

「問題あるわ!!」

 どうやらまぐれ当たりだったことを怒っているようだ。とは言えそこまで怒らなくてもよくない……?

「でもまさか、まぐれも入っているとは言え、ここまで当てるとは思わなかったですわ?」

「実力で正解したのはアイネの時だけな気がするけどな……」

 とは言え、ここまで来たら全問正解と行きたいところだが……。

「最後は義姉さんかぁ」

「なんで露骨に嫌そうなのゆう君……」

「いや、観察するのが辛い」

「お姉ちゃんそんなにルックス悪い?!」

「というか、義姉さんをあんまりジロジロ見ると喜びそうで嫌」

「大丈夫! 視られて感じる趣味は無いから!」

「……そ、そうか」

 それは良かったんだが……そういう事言うのも止めて欲しい……いや、俺が人の事言えない気もするが。

「で、どこが変わったか……んー。太った」

「確かに最近ゆう君と仲良しだから幸せ太りしたかも!」

「……髪型変わった?」

「昨日と結び目の位置が1ミリくらいなら違うかも!」

「…………服変わった?」

「毎日着替えてるからね!!」

「……なあ、これ正解いくつあんの?」

「ゆう君に言われたら全部正解にしたくなっちゃうよね!」

「あっ、ズルいですっ! 私も兄さまを全肯定したいですっ!!」

「この姉妹ホントに阿保ですわね。シオンはわたくしが一カ所手を加えただけですわよ」

「そ、そうか……」

 シュエリアがやったってことはわかりにくいようにしてそうだなぁ……。

「下着付けてないとか」

「付けてるよ! ゆう君が好きな黒――見る?!」

「遠慮しとく」

「じゃあなんで言ったの!! そういう振りじゃないの?!」

「義姉さん、つい最近言ってたグイグイ行かない宣言は何処に言ったんだ……」

「……あっ。うん、よし。違うよゆう君、そういうセクハラ発言は駄目」

「急にまともなせいで違和感あるが……そうか」

 わかりにくいって考えると視覚的な変化ではない……のか? しかしアイネと同じように香りの変化とは思えないし……視覚、嗅覚……触覚?

「義姉さん、ちょっとこっち来てもらっていいかな」

「ん? いーよ?」

「ふむ」

 俺の右隣に座った義姉さんの腕を触ってみるが……何か変ってことは無い。というか触りなれてないから感触違ってもわからないな、これ。

「なんで急に触り始めたの……? セクハラ?」

「なんだろう、義姉さんに言われるとすげぇ釈然としねぇ。違うから。肌触り変わったりしたかなって思っただけ」

「そっかー、でも違うよー」

 という事は後は何だろう……聴覚……?

「義姉さん、俺の名前呼んでみて」

「遊生?」

「……声か」

「正解!!」

 なるほど……確かに微妙に違うけど。これ、シュエリアが弄ったって、どうやって……。

「魔法でシオンの声帯を書き換えただけですわ。ってことで戻しますわね」

「お、おう」

 なんつう下らないことに魔法を使うんだコイツ……これもいつもの事だけどさ。

「とりあえず、ここまでやってみて思ったのだけれど……ユウキはもっとちゃんと周りの人、特に大切な相手はしっかり見た方が良いですわよ?」

「うっ……すまん」

「ちなみにわたくしは魔法でユウキの状態を細かに確認しているからしっかり変化に気づいてますわ」

「え、何それ怖い」

 それ病んでるストーカーさんみたいなんだけど。

「誰がシオン見たいですって?」

「人の思考に返事するなよ!」

「え、待って、もしかしてお姉ちゃんストーカー扱いされてる? 今はそういう事してないよ!?」

「はいはい、落ちつきなさい? ちなみに私はユウキの筋肉の変化ならわかるわ」

「それはそれで怖いって」

「私は兄さまの匂いなら絶対嗅ぎ分けられますっ!」

「それは……可愛いな」

「出ましたわね妹バカ。トモリはどうですの?」

「健康~状態~くらいなら~?」

 なんかトモリさんの言っている健康状態が約一部のことを言っている気がするのは勘繰り過ぎだろうか……。

「ま、こういう訳だから、ユウキも何かしら、気にかけておいた方が良いですわよ」

「そ、そうだな……まずは容姿くらいは変化に気づけるように頑張るよ」

「そう、じゃあ毎日変えますわね」

「それは止めてくれ……」

 そんなことされたらストレスで死んでしまいそうだ……。

 間違える度にバイオレンスされてたら身が持たないし。死なないけど。

「はー……楽しかったですわね……そして暇ですわ」

「オイ」

 また暇になってしまったのか……。

 という事で、今日は変化を見抜くのに頭を使ったので、その後は頭を使わずに済むように適当なアニメを見たり駄弁りながら過ごしたのだが……。

 これ以降、たまにだが、シュエリアが変化を付けては俺を試して暇を潰すようになってしまったのだった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は来週金曜日18:00です。

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