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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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誕生日会をしたいですわ

「ユウキって誕生日いつですの?」

「……え?」

 いつも通りの休日、いつも通り暇をしながらだらぁっと過ごしていたら、隣でシュエリアが変な事を言い出した。

「え? って何ですの」

「いや、そんな話今まで出てこなかっただろ、結構長いこと居るのに。だから急だなぁと思ってな」

「まあ、そうですわね。でもまあ、これもいつもの思い付きですわ」

「ふーん。で、俺の誕生日な。12月3日だよ」

「あら、まだ先ですわねぇ。暇ですわ」

「人の誕生日で暇潰そうとするなよ……」

 こいつそんなことの為に誕生日聞いて来たのか、なんつう奴だ。

「お前は……この世界での誕生日は無いよな」

「以前履歴書にはこの世界に来た日付を書きましたわね?」

「あぁ、そうだな」

 確かにそんなこともしてたな……。正確には誕生日では無いわけだが、まあ誕生日じゃなくても出会った記念日と思えば祝ってもいいと言える日ではあるか。

「アイネはどうですの?」

「んー。アイネは野良だしなぁ……まあ出会った日で言うなら、もうそろだな」

「あら、そうなんですの?」

「あぁ……後11時間後くらいだ」

「それ明日ですわよね……」

 そうなんだよなぁ、明日なんだよな。

 10月10日。アイネには言ってないがTOT〇で覚えている。

「え、何か用意していたりはするんですの?」

「去年と同じでチャオチ〇ールを」

「アンタ女の子舐めてんですの……?」

「え、喜ぶけどなぁ」

「それユウキから貰ってるからですわよ……」

 そう言うもんだろうか? 猫なら割とどの子も好きだと思うんだけどな。

「アイネは猫だけれど、妹でもあるし、今では人ですわ。ちゃんと女子受けするプレゼントにした方がいいですわ」

「入浴剤とか?」

「急にガチっぽくなってますわね……もうちょっと年頃の女子が喜ぶモノの方がいいですわね?」

「……同人誌?」

「趣味外したら終わりですわ」

「じゃあブロマイド?」

「誰の」

「俺の」

「絶対喜ぶけれど違いますわ。具体的に自分のブロマイドを送る絵面が違いますわ」

「うーん? 詰んでね?」

「どんだけポンコツならそれで詰むんですの……」

 と言われてもなぁ……後アイネが喜びそうなのってなんだろう。

「……鮮魚?」

「猫扱いやめろって言ってんですわ」

「一緒にお昼寝券」

「喜ぶでしょうけど! もっと特別感のある適度に大人かつ、社交的すぎない少女向けな物が望ましいですわ。そんなお子様の親孝行じゃあるまいし」

「なんか滅茶苦茶難しくねぇか……?」

 なんか凄くハードル高くてしんどいんだけど……?

「そんなに言うならシュエリアなら何を送るんだよ?」

「少し大人に見える、シンプルでシルエットが美しく見えるコートかしら」

「なんだと、シュエリアの癖によさそうだな」

「一言多いですわ。アイネは子供扱いされるのを嫌がるから大人っぽく、誕生日からしてもこれからの寒い季節に合わせられるし、アイネの服の系統から見ても少ないコート系はまあ被らないわけですわね」

「シュエリアやるなぁ」

「当然ですわ。というか、ユウキがセンス死んでるから余計にそう見えるだけですわ」

「ぐっ…………」

 クソ、いつか贈り物で「純金がいい」って話してた頃とは違うということか……。マジでどうしよう。

「アイネに欲しい物でも聞くか」

「無しでは無いですわね。まあ、要求に応えられなかったら期待させて落とすことになるけれど」

「…………」

 …………どうしたら。

「トモリさん達にも聞くか」

「そうですわねぇ、仲間内で被るのもなんだし、良いと思いますわよ?」

 ってことでトモリさん、アシェを部屋から呼び出し、義姉さんはシュエリアが転移で連れてきた。

「アイちゃんの誕プレねー。もちろんお姉ちゃんは用意済みだよ」

「へぇ、何にしたんですの?」

「ゆう君をモデルにしたリアルダッチダディ」

「ストーカーは止めたけど変態は止めてなかったわけか」

「違うよ! アレはアイちゃん用でお姉ちゃん用じゃないもん!」

「そういう問題じゃねぇよ」

「お姉ちゃん用はずっと前にゆう君が出て行く前に作ったもん!!」

「結局自分用があるんじゃねぇか!!」

 この人ホントに駄目人間だな。徐々に解消できると良いんだが……。

「はぁ。義姉さんはいいや……トモリさんは、何かありますか?」

「そう~ですねぇ~」

 トモリさんは「う~ん~?」と唸ると、何か妙案を思いついたのか、拍手し始めた。突如拍手し出す絵面が中々にシュールだ。

「木彫りの~ゆっ君~を~上げます~」

「喜びそうですけど、何故に木彫り」

「定~番で~すから~?」

「それ土産の定番ですわよ……」

「しかも要らない奴ね」

 まあ、アイネの事だから俺の形してたら喜びそうだけど。

「というかそれ、シオンのと被ってますわよね?」

「…………あら~。では~日本刀~を~」

「急に物騒な物贈るなぁ」

 って言うか真剣って贈って良いんだろうか。模造刀だろうか?

「本物は駄目ですよ?」

「模造~刀~ですよ~平時は~」

「平時は?」

「魔力を~通すと~真剣に~?」

「却下で」

「あらぁ……」

 流石にそれは駄目だろ……法の穴を魔法で付こうとするの止めて欲しい……。

「では~木刀で~」

「急にグレードダウンしますわね」

「定番~かと~?」

「だからそれ要らない奴よね」

「あらぁ……」

 うん、どうやらトモリさんのセンスは俺並みに終わっているようだな。

「まあでも、そこまで要らないって言うなら、アシェならきっと良い物を提案するに違いないですわね?」

「ん? 私? 私はそうね、薬でも贈ろうかしら」

「薬……? それどうなんだ、プレゼントとして」

「大丈夫よ、欲しそうな薬にするから」

「というと?」

 俺が問うと、胸を張ってドヤ顔するアシェ。何を企んでやがるのか……。

「豊胸薬とか高身長薬、美肌薬に他には……あー、不老不死とか欲しがるのかしら?」

「すげぇ、凄すぎてなんかもうアシェすげぇ」

 まあでも、凄いけど、誕プレとしてそれってどうなのだろうと言う気がしないでもないんだが……悪くも無い、のか?

「でしょう? ま、そこはアイネが欲しい薬でも聞いて即興で作るわよ、リストでも用意しとこうかしら」

「ていうかホント命の重みを感じないですわね、アシェと居ると。ポンポン不老不死の秘薬とか作るし」

「アンタに言われたくないわよ。薬無くてもできる癖に」

「できるけれど、しないですわよ。なんとなく、倫理的に」

「シュエリアに倫理ってあったのね」

「倫理が何かも知らなそうな育ちしてよく言いますわね」

「あん?」

「あぁ?」

「待て待て待て」

 コイツ等なんでこう、妙な事で言い合いするかなぁ。

 どうせ最終的にシュエリアが勝つのが分かってるだけに不毛だ。

「で、そういうシュエリアは何贈るのよ?」

「コートですわ、大人に見えるお洒落な物を」

「シュエリアの癖にやるわね」

「ユウキも言ってたけど、マジでわたくしはなんだと思われてんですの……」

 アシェにも同じような事を言われてショックを受けているシュエリアだが、どう思われているかなんてコイツのTシャツ見たら一目瞭然なんだけど。

「で、ゆう君は何贈るの?」

「え、今のままならチャオチ〇ール」

「「「「それは無い(です)」」」」

「シュエリア以外からも駄目出しされるとは」

「普通に考えて論外よ?」

「マジか」

 うーん、シュエリア以外にも言われると言う事は本当に駄目っぽいな。

 だとしたら…………あ。

「ノミ除け効果のある首輪とか?」

「ゆう君鬼畜なの?」

「えっ? 駄目か?」

「最低~です~」

「えぇ……」

 これも駄目か、アクセ感覚で行けるかと思ったんだけどな。

「まず猫扱い止めなさいよ」

「シュエリアにも言われたわそれ」

「じゃあなんで首輪とか言い出したのよ」

「シュエリアに言われたから」

「気持ちは痛いほどわかるわ。でも駄目よ」

「何でかしら、今わたくし軽んじられた気がしますわ?」

「大丈夫だよシュエちゃん、今に始まった事じゃないよ!」

「それ大丈夫じゃねぇですわよ?」

 そう言ってシュエリアは不機嫌そうにしながらも俺に寄りかかって来る。

 最近分かったんだが、コイツはほどほどに機嫌悪くなると俺に甘える習性があるようだ。そしてとても機嫌が悪いと暴力に走る。主に俺に。

「で、俺は何を贈ればいいと思う?」

「プレゼントは俺とかやったら必中するわね。キモいけど」

「おい、サラッと俺を傷つけていくの止めろ、やっても無いことでキモいとか言われるのはシンプルにツライ」

「じゃあゆう君のオリジナルラブソングとかどうかな! 大抵嫌がられるけど!」

「なら提案するなよ。阿保か」

「なら世界の半分をあげたらどうですの?」

「俺は竜王か」

「では~明日~お買い物デ~ト~をして~欲しい物の~リサ~チを~兼ねては~?」

「おい、魔王が一番マトモな提案したぞ。お前らどうなってるんだ」

 それにしても誕生日にデートして、そのまま欲しい物をプレゼントか。なんて普通によさげな提案だろうか。これが淫魔かつ魔王の発言なんだから驚きだ。

「採用~です~?」

「そうですね。やっぱりトモリさんは頼りになります」

「あらぁ~」

「わ、わたくしだってボケなければ頼り甲斐の達人ですわよ?」

「なんだそれは。発言から馬鹿さがにじみ出ていて頼り甲斐皆無なんだが」

 っていうかなんか必死な顔してるけど、そんなこと言い出すくらいならボケんなよ……。

「じゃあ頼りになるシュエリアに真面目に質問しようかな。アイネの誕プレについて」

「え? ……わたくしに聞くとか正気ですの?」

「お前は何がしたいんだ」

 相変わらず一貫性がないというか、わけわからん。ノリで生き過ぎだろコイツ。

「はぁ。まあでもトモリさんからいいアドバイス貰えたし、これでアイネの誕生日は成功しそうな気がしてきたよ」

「本格的にパーティするのは夜にするとして、ユウキはそれまでアイネを楽しませておくんですわよ?」

「はいよ、お前はパーティの飾り担当な」

「え? あぁ……そうですわね」

「お前何もしないつもりだっただろ」

「そんなこと……ありますわ」

「素直だな……でもお前暇なんだろ、ならやってれば暇つぶしになるだろ」

「人の誕生日を暇つぶしとか言うのは良くないですわ」

「お前が言うのかそれ?」

 おかしいな、最初コイツはそういうつもりで話を始めていた気がしたんだが?

「さて、ところでユウキ」

「ん?」

「暇ですわね」

「……お前……」

 誕生日の予定が決まったら、それはそれで暇になってしまったというのか。

「明日まで何して過ごすか考えないといけませんわね?」

「アシェで遊んでろ」

「何も無いよりマシですわね」

「何? 今なんか凄く酷い扱いを受けた気がするんだけど……」

 俺とシュエリアのやり取りを見て、アシェが暗い顔をしているが、多分この後シュエリアに遊ばれてもっと酷いことになるんだろうな……。

 とりあえず行き過ぎたら止めるとして、それまでは明日の予定を詰めたいし、シュエリアの相手はアシェに任せよう。アイネの誕生日を成功させるために……。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は来週金曜日18:00です。

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