結局なんの話ですの?
今回ほんのり長めです。
「終わりが見えない人生……いつまで続ける気ですの?」
「いつも頭オカシイけど今日は一段と意味わからんな」
いつも通りの日常、そしていつも通り俺の隣でいつも以上に頭のオカシイ発言をする俺の嫁。
人生をいつまで続けるか問うとは、この俺に。
「イカレてないですわよ。マジこの物語いつまでやる気なんですの」
「おや、思ったよりはマトモだった、どっちにしろヤバイ発言だが」
「何だと思ってたんですの?」
「不老不死に人生の終わりを説こうとしてる馬鹿かと」
「大丈夫ですわよ、わたくし不死でも殺せるから、いつでも終われますわ」
「大丈夫な要素ある? それ」
普通にいつでも殺せる発言されただけだよね、これ。
「にしても長いですわよ、これ、マジで。なんで人気無いのに続けてんですの? 馬鹿なんですの?」
「おまっ……凄まじくヒデェ事言いやがるな……いいんだよ、一般大衆受けがすべてじゃないんだよ……」
「なーんか売れてないアーティストのいいわけって感じですわね」
「お前果てしなく失礼だな……」
コイツはもうちょっと歯に衣着せた方がいいんだろうな……まあ、こういうシュエリアが好きだから、敢えてやめさせようとは思わないんだけど。
「っていうかホントに何度目だ、この手の話、最近多くね? あ、もしかして飽きたか?」
「作者が?」
「ちげぇよ、お前がだよ」
なんでそういうギリギリアウトなとんでもない発言を飛ばしてくるんだろう。色々不安になって来るわ。
「暇なのか?」
「そーですわねぇ……なんかアレですわよね、目新しいことしたいですわね?」
「目新しいことねぇ」
つってもなぁ……目新しいことなんて……そうそう……。
「新展開、とか?」
「結婚したのに今更なんかやるんですの?」
「お前が目新しいことって言ったんだろうが……」
「そうですわね? で、何するんですの?」
「え、そうだな……新キャラ出すとか?」
「それユウキの一存で出来るんですの?」
「探しに行くとか」
「何処に」
何処にって……。
「…………お前の職場」
「あー……まあ、変な奴多いのは事実ですわねぇ」
「変な奴て。せめて異世界人と言ってやれよ」
「まあ少なくとも一番変なわたくしがいう事じゃないですわね」
「ホントにな」
それ自分で言っちゃうのかとか、思ないわけでは無いが、今更ツッコむようなことでもない、こういう奴である、俺の嫁。
「でもアレですわ」
「ん?」
「新キャラ出してもきっと使い捨てですわよ」
「またとんでもないことを言う」
「だってぶっちゃけわたくしとユウキはほぼ毎回一緒だけれど、他の子達ってハーレムメンバーですらレギュラーじゃないでしょう?」
「何の話だ」
「各話の登場人物の登場傾向ですわね」
「……おぅ」
なんというか、マジでとんでもないこと言い出したなぁ……もはや今更驚きはしないが引きはする。相変わらずなんでコイツは神視点を持ってるんだろう。そこだけ気になる。
「実はこの作品、わたくしが後に書き記した自伝ですのよ」
「そうだったのか、というか当然のように俺の思考に返事するな」
「でもなぜかユウキ視点ですわ」
「脚色されてないか心配だな」
「基本地の文の8割がシュエリアを称賛する言葉で埋まってますわ」
「脚色ハンパねぇな」
俺そんなにシュエリアのことばっか考えて…………考えてはいるけど、称賛はしてない。
「頭の中わたくしでいっぱいとか、好き過ぎですわよ?」
なんでちょっと嬉しそうなんだ。コイツの妄想だろうが。
「だからそれ、脚色じゃん」
「好き過ぎるほどではないと?」
「……ソンナコトハナイヨ」
「よし、脳改造してわたくし以外の事考えたら感度3000倍になる体にしてやりますわ」
「何その妙に恐ろしい改造、やめろ」
相変わらず才能の無駄使いが酷いぞ。
「やめてくださいシュエリア様! ……ですわよ?」
「やめてくださいシュエリア様! お願いします!!」
「マジで言うんですのね……そんなに嫌なんですの?」
「普通嫌だろ……」
そんな珍妙かつ恐ろしい改造、絶対されたくないだろ……。
「っていうか、何の話だったか、これ」
「新キャラ出してもどうせ使い出が無いと出番も無いって話ですわ」
「そういうもんか」
「そうですわ。既にリーシェとかいう結婚式に呼ばれてはいたけど、結局出番は無かった悲しい生き物も居るし、エルゥとか六々とかも、ほとんど出番ないものね」
「そういやお前の妹、双子ちゃんも結婚式で絡んできたくらいで、ほぼ見てないな。あんだけ絡んできたのに」
「それに至ってはわたくしが知らないくらいだもの……主要キャラの身内ですらこの扱い。新キャラは無理がありますわ。まあ、例外もいるけれど」
「例外?」
そんなよく出る新キャラ……もとい人物、居ただろうか。
「アシェとかいうポっと出なのにハーレムの一員かつ、なんか妙に出番の多いもはや初回登場の悪役令嬢とかいう設定がどっか行ってそうな奴ですわ」
「ひでぇ言われ様……だが、そういやアシェの事、俺あんま知らないかも。特に悪役のあたり」
正直そこはかとなく口が悪い以外、悪い話を全然聞かない。むしろいつメンの中ではかなりまともな部類だしな。アシェ。
「あー、そーいやそうですわね。ユウキってアシェの過去とか知らないでしょう」
「そういや、お前の過去もよく知らないな」
「……ハッ、過去バナ展開ですの?」
「それはつまり……」
「過去編……ですわね」
「やる……のか……ゴクリ」
過去編……それはそのキャラに対しての掘り下げとして機能し得る反面、ぶっちゃけどうでもいいキャラだと見てる側がダレるとかダレないとかもっぱらの噂のアレ。
ひいては総集編と並び、尺の都合や迂回ルートと目される、アレ。
「でもちょっと気になる……!」
「どっちがですの?」
「アシェの過去が……」
「ここで嫁よりアシェなのがもう、いっそユウキのお気に入りだから出番多いんじゃないんですの? あの子」
「お気に入りはシュエリアなんだけどなぁ」
「何かしら、嫁として『お気に入り』と言われるのはそれはそれで違う気がしますわ」
「どうしろと」
「どうしようもないですわね。ってことで、アシェの話ね……本人に聞いてみるべきですわね、まずは」
「まずは……ってのは?」
「話さなかったらわたくしが話しますわ」
「暴露すると」
「ですわ」
当然のような顔して暴露話とかいう悪行を遂行しようとするなコイツ。
「できれば本人から聞きたいな」
「そーですわね」
なんかシュエリアはどっちでもいいという感じだが、俺からしたらマジでアシェから聞きたい。
それこそシュエリアだと「面白いから」という理由で脚色しかねないし。
ということでアシェを呼んで待つこと数分。
「私の話が聞きたいなんてどうしたのよ」
「いや、ちょっとな――」
「暇なんですわ」
「――シュエリア、お前はもうちょっとオブラートに包むというか、気を使うと言うか、言い方考えような」
「わかりましたわ。面白そうだから話聞きたいですわ」
「うん、どっちにしろお前らしいな。ホント」
「つまりただの暇つぶし、いつも通りってわけね……」
そういって「やれやれ」と首を振りながらも俺の横に着席するアシェ。
最近思うんだが、なんでこう、話をしようってのにコイツ等は横並びとかになりたがるんだろう。話し難くない? これ。
「いつも通りですわ」
「まあ、いいけど。ユウキに私を知ってもらうのは悪い気しないわ」
「あ、好感度上がりそうな話ばっかしてたら下がる話を暴露しますわ」
「アンタそれやったら私も暴露するわよ」
「貶めあおうとか醜いですわよ、アシェ。もう早速好感度ダウン間違いなしですわ」
「アンタがそれ言うの……?」
正直言ってアシェはいつメンではまともな方ってだけで、この二人は基本的に変なので、今更なんか過去にやらかしててもそうそう下がるようなことも無いとは思うが……どうなんだろう。
「とはいえ、何を話そうかしら、何か聞きたいこととかは?」
「ん、そうだな。じゃあなんで悪役令嬢とかいう立ち位置になったのか、とか?」
「ん? あー、それはまあ、親がそうっていうのもあるけど。なんていうか、よくあるって言うか、無いって言うか」
「まあ、アレですわよね、寝取ろうとしたんですわ」
「え、何。何を、誰から」
それは確かに悪いことっぽいけど、それには当然相手が必要だったりするわけで……。
「わたくしから、フィアンセを」
「…………はい?」
シュエリアから、フィアンセ? え?
「居たのか? いいひと」
「居ねぇですわよ?」
「は? え?」
「シュエリアの場合、政略結婚の相手ってだけよ。別にシュエリアが惚れてたとかじゃないわ」
「あ、そう、なのか」
「……ハッ!! もしかして嫉妬したんですの?!」
「い、いや、まあ、その、なんだ…………した」
「ぷっ……可愛いですわね……ぷーくす」
「なんで笑ったこのやろ」
ニヤニヤ笑ってんのが非常にウザい。
「大丈夫ですわよ。わたくし、これでユウキが初恋だから」
そうか……そうなのか。俺が初めて……か。
「これで喜ぶんだから男ってチョロいですわねぇ」
「まさか騙された?」
「んや、ホントですわよ。マジでユウキ以外これっぽっちも興味持ったことすらないですわ」
「それはそれでどうだろう」
流石にそこまで異性に興味ないのはそれはそれでなんか……いやまあ、変なのは今に始まった事じゃないんだろうが。それこそ昔から変だったんだな、コイツ。
「で、話の続きしていいかしら?」
「あ、どうぞ」
「私ほら、これでもシュエリアの母と対立してる立場の母が居るじゃない」
「そうだな」
「だからかしらね、最初にシュエリアと会った時は別に仲良くは無かったって言うか」
「でもお前ら友達になったんだろ?」
「そーね、直ぐに打ち解けたのも間違いじゃないんだけど、その前にあったのよ、問題が」
「それが寝取りか?」
「えぇ。シュエリアが政略結婚するって聞いて、これ邪魔してやったら私の悪徳も増すってもんでしょ?」
「何故悪の道に走りたがるのか」
「母がアレだからしゃーないですわよ。と言っても、アシェって口で悪いこと言う以外は基本的にはいい子ちゃんだから失敗したんだけれど」
失敗したのか……というかそれ先に言っちゃ駄目じゃね?
「もう既にネタバレか」
「大丈夫ですわよ、失敗する過程が笑えるから」
「アンタからしたらそうでしょうね……私的にはぜんっぜん笑えないけど」
「何があった」
というかシュエリアの婚約者を奪おうとして失敗した割にはシュエリアは結婚はしてないんだな……。
「私が婚約者に手を出そうとしたら、シュエリアに絡まれて、それで、その、前に言った、ほら」
「殺り合った奴ですわ」
「そこに繋がるのか」
「面白いですわよ、アシェ。わたくしの婚約者に散々色目使って、でもどう頑張ってもわたくしの方が容姿いいから相手にされず、容姿以外でもアピールを始めるけどことごとくわたくしに負けて、最終的に優れているところを見せるのを諦めてわたくしの悪口でなんとか評価を下げようとしたくらいだから」
「なんだろう……すげぇ可哀そう」
「やめて憐れまないで! 思い出しただけで悲しくなる!!」
「で、言いふらそうとしたのがわたくしが女好きって話でしたわね、確か。ふふっ」
なんかシュエリアの奴笑ってるが……シュエリアが女好き? って、それは無理があるんじゃ……。
「だってシュエリア、男はガン無視して女とだけ話してたじゃない」
「アレは男が口説くの目当てで寄ってくるから、盾になる女子を追い払わなかっただけですわ。それに別にわたくしから女子を集めたんじゃなくて、勝手に寄ってきてただけですもの」
「昔もそう言ってたわね、なんだっけ、アンタに寄って来る女もアンタ目当てで来た男を拾うために寄ってきてたんだっけ?」
「半数以上はそうですわね、残りはわたくしを狙ってたみたいだけれど」
「お前ホントにモテるな」
妹達といい、他の女性にもモテてたとか、どうしてだろう、なんでこんな阿保が。
「否定しませんわよ? 本当にモテすぎてしんどいレベルだもの」
「そうそう……それでなんだっけ、あぁそう、私がシュエリアの噂を流そうとしたらシュエリアに止められたのよ」
「正直アシェが婚約者を取ってくれたらわたくしも楽だし良かったのだけれど、流石に女好きの称号は要らなかったから、やめさせようと思った訳ですわ」
「で、なぜ殺り合う事に」
「悪事がバレたからには、引き下がれなくて……その、追い詰められてたから、手が出ちゃって……」
「でまあ、後は知っての通り、わたくしがアシェをボッコボコにしたわけですわ」
「わ、私だって結構いい線行ったでしょ!?」
「あー、なんだっけ、シュエリアのマナ生成するバリア破ったんだっけ?」
前にそんなのを見せてもらった時に、話も聞いた気がする。
「そうそう、それよ。っていうかその話は知ってるのね。コイツって汚いのよ。自分には他者のスキル、魔法等、一切の能力的干渉が出来ないスキルとか各種完全耐性獲得してんだから……だから、本体には何もできないから、シュエリアのバリアを消すくらいしかできないのよ」
「シュエリアにバリア見せてもらった時に聞いたけど……ズルイなそれ」
「でしょう? インチキよね、アレ。むしろ私、凄くない?」
「まあ、凄いよな、話聞いた時もアシェってすげぇ奴なんだなぁって思ったし」
「でっしょう?! ほら! ユウキもこう言ってるわよ!」
テンション上がってシュエリアにドヤ顔をかましてるアシェだが、やられてるんだよな……可哀そうに。
「確かにアレは驚きましたわね……まあでも、その後アシェの視界潰して、後はずぅっと一方的に魔法で転がしたんだけれど」
「そういやアシェは視界内の物を不等価交換錬成できるんだっけか」
「ですわー。だから視界潰して、後は好き放題って感じですわね」
「……今思い出しても笑えない苦痛だったわ……初手で私がバリア破ってから直ぐに視界は奪われ、耳の奥が破裂するような爆発音と激痛に襲われて、生かさず殺さず三日三晩いたぶられたあの恐怖……」
「シュエリア、お前なんでそこまでしたんだよ……」
「こう聞くとアシェが一方的にやられてるっぽいけど、これでアシェ、思いっきり抵抗していましたわよ?」
「三日目はほとんど抵抗しなかったでしょ?!」
「むしろそこまではしてたのか……」
すげぇ根性だな……視界奪われて能力行使できないで、もうほぼ拷問状態なのに。
その状態で二日は粘ったのか……。
「アシェは視界内の物を無制限に錬成できるけれど、かといって視界が無ければ何もできないわけでもないですわ」
「そうなのか」
「一応私も最低限の魔法は使えるのよ、それこそ錬成陣を書くとかくらいはね」
「だから目が見えなくても耳で、そうでなくても魔力の流れとか、匂いとか……何かしらかでわたくしの位置を探っては錬成陣を使った不等価交換の錬成で反撃しまくってましたわよ、この子」
「じゃあ案外、そこまで一方的な戦いでもなかったのか」
「まあそんなことも無いのだけれど」
「無いのかよ……」
そこはアシェの名誉のために、良い感じを演出してあげて欲しかった。
「だってバリア張り直したら視界内錬成できないアシェにはバリアを破る方法が無いですわ。バリアに錬成陣なんて書けないし。そんな状態なら何やったって無意味ですわよ」
「つまり必死に抵抗したけど、一方的な絵面は変わらなかったわけか」
「だから、シュエリアは怒らせると怖いのよ……コイツ、相手が自分に対して反抗する気力が無くなっても続けるし」
「それはアシェに対してだけですわよ」
そう言ってドヤ顔で勝ち誇った様子のシュエリアだが、なんでコイツはアシェに対してやたらと攻撃的なのだろう。
「なんでアシェにそこまで風当たり強いんだ?」
「……さっきも言ったし、前にも言ったけれど、わたくし驚いたんですわよ、バリア破られたの」
「ん……? それで?」
「あの時思ったんですわ『あぁ、ここでコイツの心を折って、将来的な反逆の芽を摘まないと危険だ』って。わたくしにそう思わせるだけでも結構な事ですわよ?」
「つまり私が敵対すると嫌だから、過剰に攻撃してきたわけ?」
「ですわねぇ。まあ結果的には無意味だったわけだけれど。今じゃ同じ男を好きで、同様に愛される仲だものねぇ」
「でもそこまで思ったのに殺しはしなかったんだな……」
「それも言ったけれど、アシェが婚約者貰ってくれたら助かるからですわ。活かす方がメリットがあると思っただけですわね」
「まあ、結局、私とシュエリアの戦いを知って、婚約者がビビっちゃって、話は無かったことになったんだけどね」
「ヘタレですわよねぇ」
「ホントに。まあ私もシュエリアから掠め取ったら捨てる気だったから、どーでもいいけど」
「わっる」
アシェをフルボッコにしたシュエリアもシュエリアだが……男を奪って満足したら捨てる気だったアシェもアシェだな……。
「そうなんですわ、アシェはわるーい女ですわよ」
「それは昔の話でしょ。今はそんなのしないわよ」
「悪いことしないんですの?」
「しないわよ、ユウキに嫌われたらどうすんのよ」
「丸くなりましたわねぇ」
「アンタにだけは言われたくないわ……」
なんかこうして聞いてみると、やっぱり俺はこの二人のこと、知らないことの方が多いんだなと思う。
そして多分、知らない方がいいことも多いな。この感じだと。
「大丈夫ですわよ、ユウキ」
「ん? 何が」
「これから先、わたくしとユウキはずっと一緒なのだから、過ごす年月が増えれば、それだけ知っていることの方が多くなりますわ。ほんの百年を知らないだけ、問題ないですわ」
「なんかいいこと風に言ってるけど、思考に返事するの止めろ?」
「駄目ですの?」
「駄目だよ」
まったく……でも、そうだな……そうなんだよな。
「これから先ずっと一緒なんだもんなぁ」
「ですわ」
「あ、そういえばさっきの話――」
俺とシュエリアが思いに耽っていると、ふいにアシェが何かを思い出したようだ。
「あの時聞いたシュエリアの好みの男性って今考えるとまんまユウキよね」
「へ?」
「ちょっ?! アシェ何言ってやが――」
「えー、だって、なんだかんだ言いつつも優しくて面倒見良くて、一緒に遊んでくれて自分のありのままを好きになってくれてー……」
「ちょっ!! そ、そそそっそっんなこと言ってねぇですわ!」
「良いじゃない照れなくても、アンタが案外乙女脳なのは今に始まった事じゃない、周知の事実なんだし――」
「やっぱりあの時殺っとくべきでしたわ!!」
そう言ってシュエリアは魔法を発動しようとしたのかやたら大量の魔法陣が部屋の中に現れた。
「わわっ?! 待って! わかったもう言わないから!!」
「もうほとんど言い終わった後に言うんじゃねぇですわ!!」
「ちょまっ、あれ?! 錬金術使えない?!! ユウキ!! ヘルプヘルプ!!!!」
「えぇ……いやあ……ははは……」
なんだろう、アシェを見ているとエルゥを思い出すな。
シュエリアに勝てないのに煽ったりするからだろうか。まあどっちにしても、仲いいからやるんだろうけど……。
「とりあえずシュエリアの好みの男性の話を聞かせてくれたら助けるぞ」
「それ取引としておかしくない?! 私がこうなってる原因よねそれ!!」
「言ったらわかってますわよねぇ!!」
「じゃあ言わないから許してよ!」
「デコピン一発で手を打ちますわ!」
「アンタのデコピン力加減一つで星一つ消せんでしょ?!」
「はー、楽しいなー。コイツ等」
ていうか星一つ滅ぶデコピンってなんだ、それはどこのおでこ弾いたらそうなるんだ。
とまあ、そんなことはどうでもいいのだが……。
正直、シュエリアの好みについてはちょっと聞きたかったなと思いつつも。
「夕飯の支度でもするかぁ」
「え?! 助けてくれないの?!!!」
「見捨てられてやがりますわ。ざまぁですわ!」
と、いう感じで。後ろでギャーギャー騒いでいる二人を残して、俺は部屋を後にしたのだった。
ご読了ありがとうございます。
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